- 死亡保険金に対する相続税を心配する必要はほとんどない
- 死亡保険金には「500万円 × 法定相続人」の非課税限度額がある
- 相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人数」の基礎控除がある
- 配偶者については1億6,000万円までは実質非課税
- 債務(マイナスの財産)は相続財産から差し引くことができる
- 相続対策で生命保険を利用すると、「受け取りがスムーズ、名指しでお金を残せる、利回りがいい」というメリットがある
公開日:2018年12月20日
生命保険で受け取る死亡保険金で相続税対策ができるのはご存じですか?
もちろん死亡保険金には税金がかかりますが、ほとんど心配しなくていい金額です。
今回は生命保険で相続税対策を行い、受け取る保険金にかかる税金の心配が必要なくなる話をご紹介します。
死亡保険金を受け取った時に心配なのは相続税ですが、死亡保険金は残された家族の生活を支える資金になるため税制上の優遇があり、所得税や贈与税などのように高額な税率ではありません。ここでは、死亡保険金を受け取った時にかかる実際の相続税をみていきます。
死亡保険金で受け取るお金にも税金がかかりますが、死亡保険金に対する相続税を心配する必要はほとんどありません。
そのことを2015年以降に相続があった場合を例にみていきます。(2014年12月31日以前の相続は計算式が異なります。)
夫、妻、子1、子2の4人家族で、保険契約者兼被保険者である夫が亡くなり、夫の保有財産が1,000万円、死亡保険金が4,000万円だった場合、相続税を支払う必要はありません。
また、民法で定められた相続人のことを法定相続人といいますが、法定相続人が3名の場合、死亡保険金1500万以上でかつ死亡保険金を含めた相続財産が6,300万円を超えなければ税務署への申告義務は発生しません。(他にも法定相続人が何人なのか、誰が相続するのかで課税対象の金額は変わってきます。)
下表は相続税額早見表です。
配偶者と子が2人の家庭は1億円相続しても315万円の相続税です。相続人が配偶者や子ではなく孫や他人の場合はこのようにいきませんが、家族のために死亡保障を用意する場合は死亡保険金の相続税や通常の相続税は心配しなくていいことがわかります。
遺産の総額 | 配偶者と子1人 | 配偶者と子2人 |
---|---|---|
4,000万円 | 0 | 0 |
5,000万円 | 40 | 10 |
6,000万円 | 90 | 60 |
7,000万円 | 160 | 113 |
8,000万円 | 235 | 175 |
9,000万円 | 310 | 240 |
1億 | 385 | 315 |
2億 | 1670 | 1350 |
3億 | 3460 | 2860 |
注1. 遺産を相続人が法定相続分により相続した場合の相続税額(1万円未満を四捨五入)。
注2. 遺産の総額は、基礎控除を差し引く前の課税価格の合計額。
注3. 相続税額の計算上、配偶者の税額軽減のみ適用し、未成年者控除などの税額控除は考慮していない。
死亡保険金には非課税限度額があり、非課税限度額は以下の式で計算します。
500万円 × 法定相続人= 非課税限度額
前項の例の家族の場合は、
500万円 × 3人(妻、子1、子2)=1,500万円
が、死亡保険金から非課税枠として差し引かれます。
ですから、4,000万円の死亡保険金で法定相続人が3人いる場合に実際課税される金額は、2,500万円です。(以下計算式)
死亡保険金4,000万円-非課税分1,500万円(500万円 × 3人)=2,500万円
各相続人にかかる課税金額は以下の式で計算します。
この式をもとに課税される生命保険の金額を算出すると、妻の課税される生命保険の金額は1250万円、子の課税金額はそれぞれ700万円ですが、後述する相続税の非課税枠内におさまるので相続税を支払う必要はありません。
生命保険は税制上の優遇が受けられる商品ですが、生命保険を相続対策に役立てるためには相続税に関する知識も知っておく必要があります。以下に相続税で控除される項目をご紹介します。
前項で紹介しましたが、死亡保険金には非課税限度額があり、法定相続人の人数分の金額が死亡保険金から差し引かれた金額が課税対象金額となります。
非課税限度額は以下の式で計算します。
500万円 × 法定相続人= 非課税限度額
生命保険非課税限度額は、法定相続人である「子」が相続を放棄した場合は非課税限度額を計算するうえで法定相続人に含んでいいとされていますが、法定相続人である「配偶者」が相続を放棄した場合は法定相続人の人数には含みません。
また、相続を放棄した相続人が死亡保険金を受け取る際には相続人とみなされず、非課税金額の適応を受けられません。
相続税には基礎控除があり、以下の式で計算します。
3,000万円+600万円×法定相続人数
夫が死亡した場合、妻と子1、子2がいる場合、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が課税対象相続財産から控除されます。(2014年12月31日までに相続があった場合の基礎控除額は5,000万円+1,000万円×法定相続人数で計算します。)
配偶者の相続税額から、以下の式で計算した額が控除されます。
相続税の総額 ✕(①②のいずれか少ない額 / 課税価格の合計額)
①課税価格の合計額 ✕ 法定相続分と1億6,000万円のどちらか多い額
②配偶者が実際に取得した課税価格
この配偶者控除があるので、配偶者については1億6,000万円までは実質非課税であり、1億6,000万円を超えた場合も法定相続分の範囲内におさまれば非課税です。
相続では、プラスの財産の他に、借金などのマイナスの財産も一緒に相続します。債務控除では、被相続人が死亡した時に確実にあったとされる債務(マイナスの財産)は相続財産から差し引くことができます。
差し引くことができるのは、死亡した被相続人の借金や未払い利息、医療費未払い分、税金の未納分、葬式費用などです。
生命保険を相続対策として利用すると、前項で死亡保険金を受け取った時のように税制優遇される場合が多くあります。以下に相続対策としての生命保険のメリットをご紹介します。
被相続人が死亡した場合、生命保険の場合は、保険会社に申請すると一週間ほどで死亡保険金が支払われます。受取人指定をしてあるのでスムーズに短期間で保険金を受け取れます。
一方で、銀行に預金していた場合、被相続人の銀行口座はいったん凍結されます。そして、相続手続きが済んだら口座のお金を動かせます。相続手続きには相続人ごとに必要書類を用意するので手続きには時間がかかります。
相続する場合には、遺言書や遺産分割協議が必要ですが、生命保険で受取人を指定すると特定の人にお金を残せます。
また、受取人を指定してある死亡保険金は、相続人が最低限の遺産を確保するために設けられた「遺留分」の対象には含まれません。死亡保険金で受け取ったお金は受取人固有の相続財産になり、もっと遺産が欲しい他の相続人からの遺留分請求の対象にならないため、相続人同士のトラブルを避けることができます。
貯蓄性の高い保険商品で死亡保障を用意し、被保険者が死亡するまで解約しない場合、銀行の利回りよりもいい利息で資産運用できます。
資金に余裕があり、解約しないことが前提なら、貯蓄性の高い生命保険の商品を選択するのもいいかもしれません。
これまで「死亡保険を受け取った時の相続税」「相続税で控除される項目」「相続対策としての生命保険」をみてきました。
生命保険で受け取る死亡保険金の相続税はあまり心配しなくていいことがわかりました。そして、生命保険だと誰にいくら残すのかを最初に決めるので、遺産相続争いは起こりにくく、相続税の心配もほとんどないメリットがありましたね。
残された家族の生活を守るために、生命保険で相続対策をとられてはいかがですか?