- 財産分与の請求期限は離婚後2年。
- 当事者だけの話し合いによる財産分与はいつでもできるが、贈与税に注意。
- すぐに名義変更できないときも離婚時に取り決めをして公正証書にしておく。
公開日:2019年11月16日
専業主婦の女性は、自分名義の不動産がなく、預貯金もあまりないということが多いのではないでしょうか?もし離婚することになったら、夫の財産を分けてもらうことができます。ただし、分けてもらえる期間は限定されていますので、注意しておきましょう。
本記事では、財産分与の時効について説明し、請求期間が過ぎてしまった場合の対処法についてもご紹介します。
目次
離婚するときの財産分与について、概要をおさらいしておきましょう。
財産分与とは、結婚している間に夫婦2人で築いた財産を、離婚するときに夫、妻それぞれの財産に分けることです。
結婚している間には夫婦で協力してお金を稼ぎます。サラリーマンの夫の給料も、妻が支えているからこそ得られるものなのです。こうしたことから、結婚している間に稼いだお金は2人のものとして扱われます。
離婚すると他人になるわけですから、1つになっている財布を2つに分ける必要があります。
その他詳細については以下の記事に詳しく説明していますので参考にしてください。
離婚するときには、夫も妻も平等に2分の1ずつになるように財産を分けるのが原則です。
分け方の割合について、詳しくは以下の記事をご参照ください。
婚姻している間にどちらかの親が亡くなり、親の預貯金や不動産を相続していることがあります。親から相続したものは、分ける必要はありません。
家やお金を必ず半分ずつに分けないといけないわけではありません。例えば、夫が預金を持っているとき、妻は半分を請求できますが、請求するかどうかは任意で放棄することもできます。
請求しないまま時効になれば、放棄したのと同じことになります。
また、離婚協議書を作って放棄することもできます。離婚協議書には通常、以下のような内容を入れます。
上記のような条項が入っていれば、それ以降は何も請求できません。
財産は変動するので、いつの時点を基準にするのかを知っておかなければなりません。
財産分与では、離婚時点で存在している財産を分けるのが原則です。
しかし、離婚の前に別居期間がある場合、別居している間は2人で協力して財産を築いているとは言えません。別居が先行しているときには、別居時が財産を分ける基準時点になります。
別居してからも家計が別々になっておらず、夫と妻の協力関係があるようなケースでは、離婚時点の財産を分けるべきでしょう。どのようにしてよいかわからない場合には、専門家に相談するのがおすすめです。
離婚するときには、不動産や預貯金を持っている側に対して、半分分けてもらうよう請求できます。
元夫名義になっている不動産や預金などを、離婚後に分けてもらうことも可能です。元夫と直接話し合いができるなら、連絡をとって交渉しましょう。
もし相手が話し合いに応じてくれなければ、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。
調停を申し立てる方法は、次のとおりです。
申立先 | 相手の住所地を管轄する家庭裁判所 |
---|---|
申立費用 | 収入印紙代(1,200円)、郵便切手代(約1,200円) |
必要書類 | 申立書、戸籍謄本、財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預金通帳写しなど) |
元夫に財産を分けてもらいたい場合、請求できる期間が決まっています。時効になってしまうと、もらえるはずのものがもらえなくなってしまいます。
専業主婦の方の中には、自分には稼ぎがないので家などをもらうことはできないと思っている人も少なくないかもしれません。ですが、上にも書いたとおり、専業主婦であっても財産の半分をもらう権利があります。
既に離婚は成立しているけれど、元夫から何ももらっていないという場合、もらえるものがないかを考えてみましょう。
住宅ローンが残っている家でも、売却してプラスになるようなら、プラスになった部分の半分をもらえます。家を売却せず、元夫がそのまま家に住み続けてローンを払っている場合でも、財産分与は可能です。
たとえば、家の売却価格が2000万円でローン残高が1600万円の場合、400万円はプラスになります。元妻は400万円の半分の200万円を元夫に現金で払ってもらうことができます。
既に離婚が成立していても元夫に家の権利などを譲ってもらうことはできます。ただし、いつまででも請求できるわけではありません。法律上の期限が決まっています。
民法768条では次のように定められています。
民法768条2項を見ると、離婚の時から2年を経過したら、家庭裁判所に請求できない旨が書かれています。これは、調停などを申し立てできるのが2年以内という意味です。
この2年という期間は、厳密には時効ではなく除斥期間と呼ばれるものです。
時効はいろいろな理由で中断(リセット)されます。時効の場合、2年と書かれていても期間が延びることがあります。
一方、除斥期間には中断がありません。2年と定められている場合、2年が過ぎると権利行使ができなくなります。
民法768条の2年は除斥期間なので、延びることはありません。たとえば、2018年10月1日に離婚した場合、2020年9月30日までに家庭裁判所に申し立てしなければならないということです。
財産分与は必ずしも裁判所を通してする必要はありません。当事者同士が話し合いで財産分けをするならば、期限後も可能です。
裁判所を通さず、当事者同士の話し合いで財産分けをするなら、離婚から2年を過ぎていても可能です。ただし、税金の問題が発生することがありますから覚えておきましょう。
贈与税とは、無償で財産を受け取ったときに課される税金です。年間110万円を超える贈与を受けた場合、原則として贈与税がかかります。
財産分与は夫婦のお金を清算する手続きなので、贈与ではありません。そのため、通常は贈与税がかからないことになっています。
離婚から10年経って元夫から元妻に財産の受け渡しをした場合、当事者同士が「これは財産分与だ!」と主張しても、税務署は納得してくれない可能性があります。
財産分与という名目で非課税贈与ができてしまうと、税金逃れのために財産分与をしようと考える人も出てくるので、課税上不都合が生じてしまいます。元夫婦ならいつまでも財産分与ができるとは考えないようにしましょう。
別れた後何年以内なら贈与税がかからないという明確な基準があるわけではありません。ですが、2年を過ぎると贈与税がかかる可能性があると認識しておきましょう。
話し合いの場合にも、期間内に手続きしてしまうのが安心です。
財産分与は、離婚と同時か離婚した後2年経つまでにするものです。離婚が成立する前に財産を分けてしまうと、財産分与とは言えず、やはり贈与とみなされてしまうことがあります。
まだ離婚するかどうかがわからないのに、焦って不動産の名義を変えたり預金を移し替えたりは、できるだけしない方が無難です。
離婚前であれば生活費を払ってもらうことができるので、お金が足りなければ生活費を請求することで対処しましょう。
離婚から2年を経過してしまうと、裁判所を通じて財産分与の請求をすることはできません。元夫名義の不動産をもらわないないまま請求期間が経過してしまったと仮定して、対処法を考えてみましょう。
請求期間が過ぎても、話し合いによる財産分与は可能です。元夫と連絡がとれる場合には、話し合いを申し入れてみましょう。
元夫と話し合いができない状況なら、弁護士に代理人になってもらって交渉する方法があります。
ただし、離婚から長期間経過していると、元夫が拒否した場合に財産分与として請求することは困難です。元夫名義の不動産をどうしても譲って欲しいなら、買取りも視野に入れる必要があります。
住宅ローン支払い中の不動産は、財産分与により譲ってもらうことができても、ローン完済まで名義変更が不可能なケースがあります。
このようなケースでは、離婚時に財産分与の取り決めとローン完済後に名義変更する約束をして公正証書にして残しておくのが有効です。
期限後も法務局で財産分与登記を申請することは可能です。登記申請については司法書士に頼むことができるので、離婚協議書や公正証書を持参して相談しましょう。
離婚するときに財産分与をしていなくても、2年以内なら財産分与請求ができます。期限を過ぎてしまうと、相手が任意に応じてくれない限り、財産分与は難しくなってしまいます。
離婚するときには、必ず財産分与の取り決めをし、公正証書を作成しておきましょう。取り決めさえしていれば、2年の期間を過ぎてからの名義変更も可能です。
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