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離婚時の不動産の財産分与、気をつけたいポイントは?名義変更や税金についてFPが解説します

離婚時の不動産の財産分与、気をつけたいポイントは?名義変更や税金についてFPが解説します

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著者名

森本 由紀

森本 由紀

行政書士、AFP(日本FP協会認定)、離婚カウンセラー

行政書士ゆらこ事務所・離婚カウンセリングYurakoOffice代表。法律事務所勤務を経て、2012年に行政書士として独立。メイン業務は協議離婚のサポート。養育費、財産分与など離婚の際のお金の問題や離婚後の生活設計に関するアドバイスなど、離婚する人の悩みを解決するためトータルなサポートを行っています。法人設立や相続に関する業務にも力を入れています。

この記事のポイント

  • 財産分与による不動産の名義変更(財産分与登記)は離婚届を出した後に行う。
  • 財産分与登記の際には、登録免許税や司法書士費用がかかる。
  • 財産分与で不動産をもらっても、贈与税・不動産取得税は原則としてかからない。
  • 不動産の財産分与では譲渡した側に譲渡所得税がかかることがある。

離婚時の財産分与により、不動産の名義を変更することがあります。不動産の名義変更は、どのタイミングで行うことになるのでしょうか?また、必要書類やかかる費用はどうなっているのでしょうか?

本記事では、不動産の財産分与をした場合の名義変更のタイミングや必要書類、発生する税金などについて詳しく解説します。

また、離婚時に知っておきたいその他のポイントについてはこちらをご覧ください。

 

 

【離婚時の不動産の名義変更①】財産分与による名義変更はいつ、どこで行う?

財産分与による不動産の名義変更はいつ、どこで行う?

不動産の名義変更は離婚成立後に法務局で申請を行ないます。

夫婦で購入した不動産は実質的には夫婦共有ですが、名義は夫婦共有になっているケースと、一方だけになっているケースがあります。離婚時の財産分与により、夫婦の一方が不動産を引き継ぐことになった場合には、不動産の名義を引き継ぐ側の単独名義にする必要があります

 

不動産の名義変更が必要なケースと不要なケース

たとえば、夫名義になっている不動産を財産分与により妻が取得することになったときには、夫から妻への名義変更手続きが必要です。一方、夫名義の不動産を夫が引き継ぐ場合には、名義変更は不要です。

不動産の名義が夫婦共有になっている場合には、夫婦共有名義から不動産をもらう側の単独名義に変更する必要があります。

 

不動産の名義変更は法務局で行う

不動産(土地・建物)の情報は、法務局で登記されているため、法務局で名義変更手続きを行います。財産分与による不動産の名義変更手続きのことを財産分与登記といいます。

財産分与登記には、次の2つのパターンがあります。

 

所有権移転登記

財産分与により不動産の名義を夫婦の一方から他方に変える場合には、不動産の所有権が移転することになるため、財産分与を原因とする「所有権移転登記」を申請します。

 

持分移転登記

夫婦共有名義になっている不動産を単独名義に変更する場合には、不動産の所有権ではなく、共有持分が移転することになります。たとえば、夫婦共有名義を妻一人の名義に変更する場合の登記は、夫の「持分(全部)移転登記」となります。

 

財産分与登記は離婚成立後に申請する

財産分与というのは、離婚に伴って効果が生じるものです。離婚前に財産分与の取り決めをすることはできますが、実際に財産分与が確定するのは離婚が成立したとき(離婚日)になります。

財産分与の効果が生じていない段階で、登記をすることはできません。財産分与登記は、離婚日以降に申請する必要があります

 

【離婚時の不動産の名義変更②】名義変更(財産分与登記)の必要書類や費用は?

不動産の名義変更(財産分与登記)の必要書類や費用は?

法務局での登記申請は、書面で行います。登記申請をするときには、登記申請書を作成し、必要書類を添付して、不動産の所在地を管轄する法務局に提出します

 

財産分与登記の必要書類

財産分与登記の際には、次のような書類が必要になります。

  • 登記事項証明書
  • 登記申請書
  • 戸籍謄本
  • 不動産を譲渡する側の印鑑証明書
  • 不動産をもらう側の住民票
  • 不動産の権利証または登記識別情報
  • 登記原因証明情報
  • 固定資産評価証明書または課税明細

 

①登記事項証明書

登記事項証明書は、登記申請の際の添付書類ではありませんが、不動産の表示や権利者などを確認するために、事前に取り寄せておきます。

 

②登記申請書

登記申請書には記載のルールがあるので、ルールに従って作成する必要があります。

 

③戸籍謄本

離婚日の記載があるものが必要になるため、離婚前の戸籍謄本は使えません。離婚後は夫婦が別々の戸籍になりますが、どちらか一方の戸籍謄本を用意すれば足ります。

 

④不動産を譲渡する側の印鑑証明書

不動産を譲渡する側(所有権や持分を失う側)については、印鑑証明書を提出します。印鑑証明書は、発行日から3か月以内のものが必要です

 

⑤不動産をもらう側の住民票

不動産をもらう側については、住民票または戸籍の附票が必要になります。

 

⑥不動産の権利証または登記識別情報

不動産の権利証(登記済証)があればそれを提出します。なお、2005年以降に登記された不動産については、登記済証に代わり、登記識別情報(数字とアルファベットを組み合わせたもの)が発行されています。この場合には、登記識別情報通知書を提出します。

 

⑦登記原因証明情報

財産分与があったことを証明する書類のことです。「登記原因証明情報」というタイトルで、必要事項(不動産の表示、離婚日、財産分与の内容など)を記載し、当事者が署名捺印した書面を作成して提出するのが一般的です。離婚協議書や財産分与協議書そのものを提出してもかまいません。

 

⑧固定資産評価証明書または課税明細

登録免許税の計算のために、固定資産評価額がわかる書類を提出する必要があります。不動産の所在地の市区町村役場で固定資産評価証明書を取得して提出するか、役所から送られてくる固定資産納税通知書に付いている課税明細をコピーして提出します。

 

財産分与登記にかかる費用

財産分与登記の際には、次のような費用がかかります。

 

①登録免許税

登記申請をするときには、登録免許税が課税されます。財産分与を原因とする所有権移転登記では、登録免許税額は固定資産評価額の1000分の20(2%)になります。通常は、税額分の収入印紙を貼り付けた収入印紙貼付台紙を登記申請書に添付して納税します。

 

②書類取り寄せ実費

登記の必要書類を取り寄せるときに、役所に支払う手数料が発生します。

  • 登記事項証明書→不動産1つにつき600円(※土地、建物の場合には3つ分必要)
  • 戸籍謄本→1通につき450円(※郵送の場合には小為替手数料100円や切手代も追加)
  • 印鑑証明書、住民票、固定資産評価証明書→1通につき300円程度(※市町村によって異なる)

 

③司法書士費用

登記手続きは、司法書士に依頼することができます。司法書士に頼んだ場合には、司法書士の報酬のほか、交通費、書類取り寄せ費用などの実費を払う必要があります

 

【離婚時の不動産の名義変更③】不動産の財産分与で他にかかる税金はある?

不動産の財産分与で他にかかる税金はある?

不動産の名義変更を行うときには、贈与税、不動産取得税、譲渡所得税にも注意しておく必要があります。

 

 

財産分与では贈与税は原則として非課税

無償で財産を譲り受けたときには、贈与税の課税対象になります。財産分与は夫婦の財産関係の清算であって、贈与とは性質が異なるため、贈与税は原則的に課税されない扱いとなっています。

ただし、どう考えても財産分与の範囲を超えていると思われる場合には、超えている部分について贈与とみなされ、贈与税を課税されることがあります。

 

財産分与では不動産取得税もかからない

不動産を譲り受けたときには、都道府県から不動産取得税を課税されます。しかし、夫婦の財産関係の清算である通常の財産分与では、不動産取得税はかかりません

慰謝料がわりに不動産を譲渡したような場合には、不動産取得税を課税される可能性があります。

 

財産分与で不動産を譲渡した側に譲渡所得税がかかることがある

上述のとおり、不動産の財産分与を行ったときに、不動産を譲り受けた側はほとんど税金の心配をする必要はありません。しかし、財産分与では、不動産を譲り渡した側に税金がかかることがあるので注意が必要です。

 

譲渡所得税とは?

財産分与で不動産を譲渡した側に課税される可能性があるのは、譲渡所得税になります。譲渡所得税とは、財産の譲渡により発生した譲渡所得(譲渡による利益)に着目して課税される税金です。

 

財産分与でなぜ譲渡所得税がかかる?

財産分与はお金をもらって不動産を譲渡したわけではありませんから、譲渡所得は発生していないと考えがちです。しかし、不動産が購入時より値上がりしている場合には、不動産を保有している間に含み益を得ているため、財産分与で不動産を手ばなすときに課税されます。

たとえば、不動産の価格が1,000万円のときに不動産を譲渡すれば、1,000万円を支払ったのと同じことになります。ところが、不動産の価格が1,200万円になってから不動産を譲渡すれば、同じもので1,200万円を支払うことができるため、200万円は利益を得ていることになるのです。

 

特例により税額が発生しないことも多い

居住用財産(自宅)の譲渡であれば、譲渡所得計算の際に、3,000万円の特別控除が受けられる「マイホーム特例」があります。ただし、マイホーム特例は夫婦間の譲渡では適用されません。

マイホーム特例の適用を受けるためには、離婚届を出して夫婦の関係を解消した上で財産分与の合意をし、名義変更の手続きをするようにしましょう

 

離婚時の不動産の名義変更・財産分与に関するまとめ

離婚するときに財産分与により不動産を譲り受け、名義変更が必要になる場合には、離婚成立後に登記をすることになります。

財産分与登記の際には、登録免許税や司法書士費用がかかります。また、不動産を譲渡する側に譲渡所得税がかかることがあります。

不動産の財産分与をする際には、どれくらいの費用がかかるのかを認識しておき、夫婦間で費用の負担についても話し合っておきましょう。

 

離婚問題で困ったら専門家に相談することが大切

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