- 株式投資の利益にはキャピタルゲインとインカムゲインの2種類がある。
- 東証一部銘柄の株式益回りは7.51%、配当利回りは2.02%。
- 株式投資の利回りは4~5%程度を目指す。
- 株式投資はインカムゲインをメインにする。
公開日:2019年8月25日
株式投資をする際、「利回り」については知識は欠かせません。株式投資において、年間でどの程度の利益が出るのかというのは、最大の関心事です。その時に用いられるのが「利回り」です。自分が投資した金額に対して、年間どの程度の利益が出たのかを測る指標です。
今回は、利回りの計算方法から、年間利回りの目標を何%にしたらいいのかを具体的に解説していきます。株式投資の参考にしていただければ幸いです。
なお、投資信託の利回りが知りたいという方はこちらをご覧ください。
目次
株式投資の利回りとは、投資した金額に対する収益割合のことです。株式の収益には次の2種類があります。
株式の値上がり益のことです。例えば、1,000円の株を100株購入し1,500円で売却した場合、5万円がキャピタルゲインとなります。
インカムゲインとは、配当と株主優待のことです。ただ、株主優待は割引券など正確な価値を算出するのが難しいケースもあるので、インカムゲインの利回りには配当利回り(配当 ÷ 株価)を用いるのが一般的です。
以上、2つの収益から株式の利回りを計算すると次のようになります。利回りは、1年間の運用で考えます。
( キャピタルゲイン + インカムゲイン)÷ 投資元本 × 100
つまり、(値上がり益 + 配当金) ÷ 投資元本 × 100となります。キャピタルゲインは銘柄を保有している場合、含み益で計算します。
それでは、具体例を見てみましょう。株価2,000円の銘柄を100株購入して1年間運用。現在の株価が2,100円で1株当たりの配当金が60円得られた場合の年間利回りは次のようになります。(※手数料や税金を考慮せず)
利回り=(10,000円+6,000円)÷200,000円 × 100 = 8%
利回りは8%になります。ただし、インカムゲインはほぼ確実にもらえる収益ですが、キャピタルゲインは株価が下がって損失になることもある(キャピタル・ロス)ので注意しましょう。
それでは、株式投資の目標利回りはどの程度にすればいいのでしょうか。
バフェットは、経営するバークシャー・ハサウエイが毎年公表する「株主の手紙」の中で、長期の運用成績を公表しています。1965年~2017年の利回りは以下のようになっています。
出典:バークシャー・ハサウエイ
利回りが100%を超える年もありますが、長期での平均利回りは20.9%となっています。年率で20%を超える利回りを目指すということは単年では可能ですが、長期では世界一の投資家に挑むぐらいの高い目標となります。
株式益回りは「株式益利回り」とも呼ばれ、1株当たり税引利益(1株当たり純利益)を株価で割ったものです。会社の利益と比較して株価の利回りがどの程度かを測る指標です。計算式は以下のようになります。
株式益回り=(1株当たり純利益) ÷ 株価 × 100
東証一部の予想株式益回りは7.51%となっています。会社の利益から考えた場合、株式のリターン(利回り)は7.5%程度と考えることができます。
債券と株式どちらがいいのかを判断する指標として「イールドスプレッド」があります。イールドスプレッドとは、債券と株式を比較して、どちらが割安かを示した指標です。長期金利(10年国債利回り)と株式益回りを比較します。計算式は以下のようになります。
イールドスプレッド = 長期金利 – 株式益回り
現在の長期金利はほぼゼロなので、株式益回りとの差(イールドスプレッド)はー7.5%前後になります。
イールドスプレッドがー3%まで縮小すると、株式から債券へ資金シフトするといわれています。現在のイールドスプレッドでは株式投資の方が有利となります。
配当は税引後利益から還元されます。株式の利回りを考えた場合、最低でも配当利回りを上回ることを目標にしましょう。配当利回りの計算式は以下のようになります。
配当利回り= 配当金 ÷ 株価
東証一部の全銘柄の予想配当利回りは2.02%となっています。
以上をまとめると
が東証一部銘柄の平均値となります。
ただ、株式益回りは利益水準から考えた利回りです。株価は外部環境の影響も受けるので目標利回りを7.51%にするのは現実的ではありません。また、配当利回りを下回るということは、買値よりも株価が下落している(キャピタル・ロス)ことを意味します。
以上のことから、現実的な目標としては、株式益回りと配当利回りの中間である4~5%程度が妥当な水準であると考えます。
5%の運用だと資金額を2倍にするのに単純計算で20年かかるのでしょうか?確かに単利での計算はそうなります。しかし、株式投資の基本である長期投資の場合は、複利で考えるべきです。単利と複利の違いについて解説します。
単利とは、元本にのみ利息がつくことです。例えば、100万円預けて年利が5%の場合、1年目の利息は5万円になります。そして、2年目も元本100万円を基本に計算するので、利息分は5万円になります。2年間で10万円ということになります。
一方、複利の場合は、「元本+利息」に利息がつくことです。100万円預けて年利5%の場合、1年目の利息は5万円ですが、2年目の利息の元本は「100万円+5万円」で「105万円」になります。このため、2年目の利息は5万2,500円となり、1年目よりも増えるわけです。単利と比べて2年目で差がでています。長期で見ると元本が増えてくるので、利息分もどんどん増えていきます。具体例を見てみましょう。
100万円の資金を年利5%で運用した場合、単利と複利では以下のような結果になります。
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | |
---|---|---|---|---|---|
単利 | 1,050,000 | 1,100,000 | 1,150,000 | 1,200,000 | 1,250,000 |
複利 | 1,050,000 | 1,102,500 | 1,157,625 | 1,215,506 | 1,276,282 |
6年 | 7年 | 8年 | 9年 | 10年 | |
---|---|---|---|---|---|
単利 | 1,300,000 | 1,350,000 | 1,400,000 | 1,450,000 | 1,500,000 |
複利 | 1,340,096 | 1,407,100 | 1,477,455 | 1,551,328 | 1,628,895 |
2年目では2,500円の差だったのが、10年後には128,895円の差になります。長期になればなるほど差額が大きくなるのがわかります。先ほど述べた資金額を倍にする期間ですが、単利では20年かかるものの、複利では約14年で済みます。
これは「72の法則」で計算できます。
72の法則とは、複利で運用する場合に必要な年数を計算するもので、72を利回りで割ります。つまり5%の場合は、
約14年で倍になると計算できるのです。
株式投資での単利とは、毎年配当を受け取りながら株式を売却して利益を確定することです。一方、複利とは株式を保有し続けながら、配当をさらに再投資することです。
大きく値上がりした年などは、株式を売却して利益を確定したくなりますが、長期で複利運用を考えた場合は、再投資した方の利益が大きくなります。
ウォーレンバフェットもマイナスをだしている年もあります。それでも株式を売却せずに保有し続けたおかげで、世界一の投資家になれたのです。株式投資は短期的な目線ではなく、長期での運用を考えるようにしましょう。
株式投資をキャピタルゲインで考えると、目標利回りを達成するのは難しくなります。株価は短期的には大きく変動するからです。アベノミクス当初のように20~30%程度儲かる年もあれば、リーマンショックのようにー30%以上の年もあります。
相場が下落傾向にある時に、現物株で利益を出すことは困難です。儲かる銘柄に乗ろうと頻繁に売買を繰り返すと余計な手数料がコストとしてかかります。
まずは、配当利回りをベースに考えることをオススメします。東証一部銘柄の平均配当利回りは2%前後ですが、3%を超える高配当銘柄もたくさんあります。例えば、東証一部の配当利回り上位20銘柄は以下のようになっています。
出典:ヤフーファイナンス
このように配当利回りが5%を超える銘柄もあるのです。ただし、銘柄選択の際は配当利回りだけでなく、業績にも注意する必要があります。業績が悪化しているのに高配当を無理してだしている銘柄は、いずれ減配(配当を減らすこと)の恐れがあるからです。
例えば、3%の高配当銘柄を購入した場合、年間のキャピタルゲインは2%程度が目標となります。5%ならキャピタル・ロスをださなければ目標達成です。この程度の利回りなら銘柄選びのハードルもかなり下がるのではないでしょうか。
今回は、株式の利回りについて解説してきました。利回りの目標は5%程度が現実的です。ただし、短期的には値動きの振れがあるので、長期での運用を考えましょう。そして、株式を長期で保有し続け、配当金を再投資することで「複利効果」を得ることができます。
ただし、株式投資は元本や利回りが保証されているわけではありません。利回りはあくまでも目標と考え、余裕資金で無理のない運用を心掛けましょう。
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