- 株式の税金には「譲渡益課税」と「配当課税」の2種類がある。
- 「特定口座・源泉徴収あり」を利用すれば確定申告不要。
- 「NISA口座」を使えば、年間120万円までの新規投資に対して利益が非課税(上限600万円)。
公開日:2019年1月20日
株を売って利益が出たり、配当金をもらったりした場合は、「税金」がかかります。そして、確定申告をして税金を支払う必要があります。
確定申告と聞くと「大変そう」「やり方がわからない」という方も多いと思います。しかし、制度をうまく使えば確定申告が不要になり、余分な税金を払わないで節税につながります。
この記事では、株式の税金について詳しく解説していきます。まずは、税金の種類から見ていきましょう。
目次
株式投資の税金には2種類あります。買った値段より高く売れた時の差額である値上がり益にかかる「譲渡益課税」と、企業から受け取る配当金にかかる「配当課税」です。
譲渡益課税と配当課税のどちらも20.315%(所得税15.315%+住民税5%)です※復興特別所得税を含む。それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。
譲渡益課税は、株式の値上がり益にかかる税金です。申告分離課税で、確定申告が必要です。
申告分離課税とは、ほかの所得と合計せずに分離して、その所得だけ単独に所得額を計算し、定められた税率(株式は20.315%)で税金を計算することです。
確定申告とは、所得にかかる税金の額を計算し、税金を支払うための手続きです。個人の所得の計算期間は1月1日から12月31日の1年間で、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告書や決算書などの必要書類をそろえて税務署に申告・納税します 。
譲渡益課税の算出方法は以下のようになります。
譲渡益所得=総収入金額 ―(取得費 + 委託手数料等)
株式の配当金は「配当所得」で、それにかかる税金が「配当課税」です。配当所得は、原則として確定申告を行う総合課税です。
総合課税とは、給与所得など他の所得と配当所得を合算して、それに税率をかけて税額を算出するものです。所得税は超過累進税率なっているので、所得に応じて税率が段階的に上がります 。
ただ、株を取引している人は大勢いるので、全員に確定申告を求めることは現実的ではありません。そのため、 配当課税は「申告不要制度」を選択することができ、配当金の受取時にはすでに20.315%が源泉徴収(天引き)されています。
このように株で利益が出た場合には「譲渡益課税」と「配当課税」の2種類の税金がかかり、原則として確定申告して税金を支払う必要があります。
ただ、サラリーマンなど確定申告をしたことがない方は、「ハードルが高い」「複雑で面倒そう」と感じますよね。そこで、証券会社では「特定口座」という便利なサービスがあります。
特定口座は、証券会社が株式の1年間の取引結果を「年間取引報告書」にまとめる損益通算サービスです。特定口座には次の3つの選択肢があります。
「特定口座・源泉徴収あり」を選択すると、原則確定申告は不要です。株初心者の方には、「特定口座・源泉徴収あり」がオススメです。
「特定口座・源泉徴収なし」では、年間取引報告書を証券会社から受け取って、自分で確定申告します。「一般口座」は、株式の収支を全て自分で計算して確定申告する必要があります。
まとめると以下の図のようになります。
「特定口座・源泉徴収あり」が一番便利ですが、会社員の場合は「年収2,000万円以下の給与所得者で、給与以外の所得が年間20万円以下の場合は確定申告をしないで良い」という申告不要制度があります。
株式投資の利益が年間20万円までは税金がかからないので、この場合は「特定口座・源泉徴収なし」を選ぶようにしましょう。
また、確定申告をした方がお得になる場合があります。それは、主に次の2つです。
複数の証券会社で株式を取引している場合、損益通算することができます。損益通算とは2種類以上の所得について黒字と赤字があった場合、それらを一定の順序に従って差し引くことです。
例えば、A証券で100万円の利益が出ていたら、20.315%の税金を支払う必要があります。
その場合の税金は下記のようになります。
しかし、B証券で50万円の損失が出ていた場合は、A証券の利益からB証券の損失を差し引くことができます。つまり、下記のようになり、税金が半分になる計算になります。
これは、「特定口座・源泉徴収あり」でも行うことができます。原則、「特定口座・源泉徴収あり」は確定申告が不要ですが、確定申告をすることにより、払い過ぎた税金が還付されます。
株式投資で損失を出した場合も、確定申告をした方がお得になります。確定申告をしておけば、翌年以降3年間にわたり損失を控除できるからです。具体例を見てみましょう。
今年 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | |
---|---|---|---|---|
売買損益 | -100万円 | 30万円 | 40万円 | 40万円 |
前年からの繰越損失 | -100万円 | -70万円 | -30万円 | |
繰越控除後(課税対象) | -70万円 | -30万円 | 10万円 |
今年100万円の損失を出した場合、3年間繰越控除ができます。翌年(1年目)に30万円の利益が出た場合、100万円の損失を繰り越せるので、合計70万円の損失となり、税金がかかりません。
2年目に40万円の利益が出ても、70万円の損失繰越があるので合計30万円の損失となり、税金はかかりません。3年目にも40万円の税金が出た場合、30万円の繰越損失と合わせて10万円分が課税対象になります。
このように、支払う税金を大幅に減らすことができるので、損失が出た場合は確定申告をするようにしましょう。
株式投資で利益が出た場合、原則として税金を支払わなければいけませんが、いくら儲けが出ても税金を払わずに済む方法があります。それは「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」を利用することです。
NISA(ニーサ)とは、株式の売買益と配当金にかかる税金が最長5年間ゼロになる制度です。具体的には以下のようになります。
日本に住んでいる20歳以上(口座を開設する年の1月1日現在)の人。
株式の売買益と配当金。
新規投資額で毎年120万円が上限(非課税枠は最大600万円)。
最長5年間。
2014年~2023年。
NISA制度のイメージは以下のようになります。
出典:金融庁
5年間の非課税期間が終了した場合は、
という3通りの手段を選択できます。
NISA口座で120万円分の株式を購入して、値上がりにより150万円になった時点で売却した場合の具体例を紹介します。
税金がかからず、売却益の30万円が全額もらえます。
差額は税金分の60,945円となります。利益の額が多くなればなるほど、差額は大きくなります。
NISAは1人1口座なので、複数の証券会社でNISA口座を開設することはできません。ただし、変更は可能です。その場合は、変更しようとする年の9月までに、金融機関で変更の手続きをする必要があります。
配当金は「株式数比例配分方式」を選択している場合のみ、非課税になります。
NISA口座で保有している株式が値下がりして売却して損失が出ても、他の口座(特定口座や一般口座)との損益通算はできません。
NISA(ニーサ)の他につみたてNISAというお得な制度もあります。つみたてNISAについてや、NISA(ニーサ)との違いなどを以下記事で説明していますのでご覧ください。
株式投資の利益には「譲渡益課税」と「配当課税」の2種類があり、確定申告の必要があります。ただ、「特定口座・源泉徴収あり」を使えば確定申告の必要がなくなりますし、「NISA口座」を使えば、年間120万円までの投資額の利益に対して税金がかかりません。
お得な制度や税金について基本的な知識を身につけて、賢く節税するようにしましょう。
株式投資など資産運用を始めるには口座を開設する必要があります。銀行や証券など多くで株式投資などの取扱いがございますが、一番のおすすめはSBI証券です。
業界屈指の格安手数料や、豊富なサービス・商品ラインナップを誇るネット証券業界最大手です。