- 過払い金とは借金返済時に払いすぎた利息。
- 利息制限法を超える利息は無効だが、過去には当たり前のように払わされていた。
- 過払い金は貸金業者に返還を請求できる。
- 借金返済中に過払い金を請求すると、一時的にブラックリストに載ってしまう。
公開日:2019年7月27日
消費者金融などで借金をした経験がある人なら、発生しているかもしれない「過払い金」。過払い金請求のCMやチラシを見たことはあるけれど、過払い金の意味がよくわからないという人も多いのではないでしょうか?
本記事では、過払い金とは何かを説明します。過払い金を返してもらえる理由や返還請求することのデメリットについても知っておきましょう。
過払い金とは、一般には払いすぎたお金という意味です。ただし、近年よく耳にする過払い金とは、借金を返済するときに払いすぎた利息を意味します。
過払い金とは、消費者金融など貸金業者から借りた借金を返済するときに、払いすぎている利息のことです。
お金の貸し借りをするときには、貸主と借主の間で利息や返済方法について合意し、契約を結びます。返済するときには、元本だけでなく契約した利息を払わなければなりません。
しかし、契約した利息をそのまま払ったのでは、払いすぎになってしまうケースがあります。契約どおりに返済すると利息を払いすぎてしまうケースとは、利息制限法で定められている上限を超える金利が設定されている場合です。
お金の貸し借りを行ったときの利息については、利息制限法という法律で規制されています。お金の借主(債務者)は経済的に弱者ですから、債務者を保護するために、借金の利息には上限が設けられているのです。
当事者間でどのような契約をするかは原則的に自由ですが、利息制限法の定めは強行法規なので必ず守らなければなりません。当事者間で利息制限法に反する内容を約束しても、無効になってしまうということです。
利息制限法で定められている制限利率は、次の表のとおりです。
元本 | 制限利率 |
---|---|
10万円未満 | 20% |
10万円以上100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
利息制限法の制限利率を超える金利を設定して契約した場合、制限利率を超える部分については無効になります。
たとえば、100万円を年利20%で借りる契約をした場合でも、払わなければならない利息は年利15%で計算した金額のみです。払いすぎている部分については、過払い金ということになります。
過払い金は、利息制限法の制限利率を超える金利で貸付契約をし、返済を行った場合に発生します。利息制限法で認められている範囲内の金利での契約であれば、過払い金は発生しません。
貸金業者では、以前は利息制限法の制限利率を超える金利での貸付契約が行われていたため、過払い金が発生しているケースがあります。
本来無効であるはずの金利で貸付契約が行われているというのは、どういうことなのでしょうか?
利息制限法は1954年から施行されている法律ですが、実は2007年頃までは利息制限法の制限利率を超える金利も有効と考えられていたのです。それは、次のような理由からです。
みなし弁済とは、貸金業者が受け取る利息について、利息制限法の制限を超えている部分も、次の要件を満たせば有効とみなす規定です。
みなし弁済の要件を満たすことは、貸金業者にとってそれほど難しいことではありません。そのため、貸金業者の間では、借主に利息を多く払ってもらい、書面を交付してみなし弁済とするということが慣例になっていました。
貸付金利を規制する法律には、利息制限法のほかに、出資法もあります。出資法の上限金利は利息制限法の制限利率よりも高く、これに違反すれば刑事罰の対象となります。また、以前は利息制限法に違反しても罰則はありませんでした。
こうしたことから、多くの貸金業者では、利息制限法と出資法の間の「グレーゾーン金利」を設定していました。グレーゾーン金利を設定しても、みなし弁済の要件を満たしていれば全部が有効な利息になり、罰則を受けることもないからです。
出資法の金利は、これまでに何度か引き下げられています。しかし、2000年~2010年頃でも29.2%となっており、この頃までに消費者金融等の貸金業者と契約した人は、過払い金が発生している可能性が高いと言えます。
最高裁は2006年1月、グレーゾーン金利についてみなし弁済の適用を否定するという画期的な判決を出しました。
これにより、利息制限法の制限利率を超過する利息の支払いは一律に無効であり、違法な超過利息を受け取った貸金業者は過払い金返還の義務を負うことが明らかになったのです。
その後、出資法の上限金利が20%まで引き下げられ、グレーゾーン金利は撤廃されることになりました。また、利息制限法の制限利率を超過する利息は行政処分の対象にもなりました。
なお、改正出資法の施行は2010年6月、改正貸金業法の完全施行は2010年6月ですが、改正法施行前の2007~2008年頃にほとんどの貸金業者が金利の引き下げを行っています。
過払い金が発生しているのは、おおよその時期で2007~2008年よりも前に契約しているケースということです。
過払い金が発生するのは、消費者金融のカードローンだけではありません。過払い金が発生する借金の種類について把握しておきましょう。
クレジットカードには、ショッピング枠とキャッシング枠があります。このうち、キャッシング枠で借りたお金については、過払い金が発生している可能性があります。
クレジットカードのショッピング枠の利用代金は、買い物代金を立て替えてもらったものですから、借金ではなく「立替金」になります。
ショッピングでも分割払いやリボ払いにすると手数料を払わなければなりませんが、これも「利息」ではなく、カード会社の「手数料」です。
つまり、ショッピング枠には利息制限法の適用はなく、過払い金は発生しません。
クレジットカードのキャッシング枠は、お金の借入ができるものです。借りたお金は利息を付けて返さなければなりません。キャッシング枠は、消費者金融等のカードローンと何ら変わらないということです。
キャッシング枠付きのクレジットカードを発行している会社は、必ず貸金業者としての登録もしています。カード会社の中にも、2007~2008年頃まではキャッシング枠にグレーゾーン金利を設定していたところがありますから、過払い金が発生している可能性はあります。
銀行でも、消費者金融と同様の無担保カードローン商品を取り扱っています。しかし、銀行カードローンでは、以前からずっと利息制限法の範囲内の金利が設定されており、過払い金は問題になりません。
銀行でもお金の貸付を行っていますが、銀行は貸金業法の適用を受ける「貸金業者」ではなく、銀行法の適用を受けます。銀行には貸金業法のみなし弁済等の規定は適用されず、銀行がこれまでグレーゾーン金利で貸付を行っていたということもありません。
貸金業者に払った過払い金は、返してもらうことができます。貸金業者に対して過払い金の返還を請求することを、「過払い金返還請求」または「過払い金請求」と言います。
「不当利得」とは、法律上の原因なく他人の財産又は労務によって受けた利益のことです。
民法では、「不当利得を受けて他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」(703条)と規定されています。つまり、不当利得を得た人に対しては、返還を請求できるということです。
過払い金は、民法上の不当利得であることが判例上も認められています。貸金業者には、受け取った過払い金を返還する義務があります。
ただし、何もしなくても過払い金を返還してもらえるわけではありません。過払い金を返してもらいたいなら、貸金業者に対して過払い金返還を請求する必要があります。
貸金業者から借りた借金は、何年もかけて分割返済するのが一般的です。そのため、過払い金が発生していても、まだ借金の返済が終わっていないというケースもあるでしょう。
過払い金請求の方法は、借金を既に完済しているか、まだ返済中かによって変わってきます。
過払い金は、裁判を起こさなければ返してもらえないわけではありません。過払い金請求をする場合、まずは貸金業者に対して直接文書で請求するのが通常です。過払い金の額を計算し、返還を請求する文書を作成して貸金業者に送ります。
なお、完済後に過払い金請求をしても、貸金業者が過払い金の全額をすんなり返してくれるケースということは、通常はありません。過払い金をどれだけ返してもらえるかは、交渉次第になります。
借金をまだ返済中の場合、これまでに発生している過払い金を借金の残りに充当します。つまり、返済中の過払い金請求は、債務整理(任意整理)をするのと同じことになります。
この場合、借金の残額よりも過払い金の額の方が大きければ、借金は完済になり、それでも余る過払い金については返還してもらえます。
一方、過払い金を使っても借金がまだ残る場合には、借金を減らした後、残りの借金の返済方法について貸金業者と話し合う必要があります。
過払い金請求は、自分で過払い金請求書を作成し、貸金業者に送って手続きすることもできます。しかし、請求した過払い金の全額を返してもらえるケースはほとんどありません。貸金業者側は、あれやこれや理由をつけて、過払い金の減額を要求してきます。
特に、法律的な知識がない素人の場合、自分で交渉すれば不利になってしまうことが多くなります。過払い金請求をしたい場合には、弁護士または司法書士に相談し、貸金業者と交渉してもらうのがおすすめです。
過払い金請求をすれば、お金が戻ってくるのは魅力です。ただし、過払い金請求に全くデメリットがないわけではありません。過払い金請求のデメリットも認識した上で手続きしましょう。
返済中に過払い金請求した場合、一時的にブラックリストに載ります。ブラックリストに載るとは、信用情報機関に事故情報が登録されることです。
上にも書いたとおり、返済中の過払い金請求は、任意整理と同じです。通常、貸金業者に任意整理を申し出ると、その時点で事故情報が登録されますから、ブラックリストに載るのは避けられません。
なお、借金の残額よりも過払い金の額の方が大きい場合、本来なら借金は完済していたことになります。そのため、過払い金を返還してもらう手続きが完了すれば、事故情報は削除される扱いになっています。
一方、過払い金を清算しても借金が残る場合には、過払い金請求をしたときから5年程度は事故情報が残ります。
過払い金請求を弁護士や司法書士に依頼すれば、報酬を払わなければなりません。せっかく過払い金が戻ってきても、実際には弁護士や司法書士の報酬を差し引いた分しか手にできないことになります。
しかし、自分で過払い金請求をすれば、過払い金の額が少なくなってしまう可能性もあります。弁護士等に依頼した方が結局は得することもありますから、費用がかかることは一概にデメリットとは言えません。
過払い金請求は、いつまででもできるというわけではなく、請求できる期間があります。過払い金は最後の取引日から10年経過すると時効になり、それ以降に過払い金請求をしても過払い金は戻ってきません。
過払い金に気づかない間に時効になってしまえば、取り戻しができなくなってしまいます。
過払い金とは、払いすぎた利息です。2007~2008年頃よりも前から消費者金融など利用して借金している場合、利息制限法の制限利率を超える金利が設定されており、過払い金が発生している可能性があります。
過払い金は返還を請求しない限り、返してもらえません。グレーゾーン金利撤廃から年数も経過しているため、過払い金が発生していても時効になっているケースもあります。しかし、まだ請求可能であるケースもあると思いますから、気になる方は弁護士等に相談してみましょう。
自分で交渉すると不利になってしまう可能性もある過払い金請求は、弁護士または司法書士に相談するのが賢明です。まずは相談料無料で過払い金請求に強い弁護士事務所に相談してみるのがいいでしょう。