- 再就職手当は「就業促進給付」の内のひとつ。
- 失業保険の残日数が1/3以上で再就職した場合にもらえる。
- 申請書に記入しハローワークへ提出。
- 再就職だけでなく開業した場合ももらえる場合がある。
- 申請して受給までに約一か月かかる。
- 再就職手当は一時金として振り込まれる。
公開日:2020年1月14日
自己都合や会社都合など、さまざまな理由から離職した場合「失業保険」について考えると思います。次の仕事が見つかるまでの間、失業保険(雇用保険のうち基本手当)としていくらを、何日くらいもらえるのかが頭に浮かんでくる方がほとんどではないでしょうか。
しかし、退職後しばらくして条件の合う仕事に就くことが出来た場合に、この基本手当ではなく、別にもらえる給付金があることをご存知ですか?基本手当ほど知られていませんが、実は「再就職手当」という手当が存在します。
今回はこのあまり聞きなれない再就職手当について、解りやすくポイントを絞って解説していきます。
雇用保険でもらえる給付金の中で、一番有名なのは「基本手当」です。これはいわゆる「失業保険」「失業手当」と呼ばれるもので、前の仕事を辞めた後から次の仕事が見つかるまでの間の最低限の生活費として、一定の期間もらうことが出来る給付金です。
実はこの他にも、雇用保険に加入している方が受け取ることが出来る手当や給付金はさまざまあります。代表的な物をいくつかご紹介します。
求職者給付とは、何らかの事情があって働くことが出来ない場合の、最低限の生活費の補償としてもらうことが出来る給付金です。代表的な物は、冒頭でも紹介した「基本手当」もこの求職者給付に含まれます。
次によく耳にするのは「傷病手当」ではないでしょうか。傷病手当とは、失業認定のあと求職活動をしている期間に、所定の働くことが出来ない状態に該当した場合に生活費のサポートとして受け取ることが出来ます。他に「技能習得手当」「高年齢求職者給付金」などもあります。
教育訓練給付とは、必ずしも求職活動中である必要はなく、働きながらスキルアップをしたい場合でも受け取ることが出来ます。この教育訓練給付には「一般教育訓練給付」「専門教育訓練給付」「教育訓練支援給付金」の3種類があります。
それぞれ給付金の上限額や、受給に関する要件の違いなど細かい違いはさまざまありますが、いずれも働くために必要なスキルを身に付けるための制度です。スキルアップをすることで、会社側・勤労者の双方にとって雇用環境の改善にもつながります。
実際に専門学校などに通う場合の費用や、該当する通信教育の受講料などがこの対象となります。
雇用継続給付は、働く意思や能力が有るにもかかわらず、高年齢であることや、育児・介護の当事者とっなってしまい、今までの様に働くことが出来なくなってしまった場合でも、少しでも安心して働き続けることが出来るように支給される給付金です。
「育児休業給付」「介護休業給付」「高年齢雇用継続給付」の3種類があります。
育児休業給付金については、こちらもご参照ください。
就業促進給付は、大きく分けて「就業促進手当」「移転費」「求職活動支援費」の3種類があります。就業促進手当は、本来まだもらえるはずの失業手当が残っている期間のうちに、新しい就職先が決定した場合に受け取ることが出来る給付金です。
本記事のテーマである「再就職手当」は「就業促進手当」のうちの手当のひとつです。「就業促進手当」には、このほかに「就業促進定着手当」「就業手当」「常用就職支度手当」があります。
ここまでで「再就職手当」が「就職促進給付」のうちの一つであると解説しました。「再就職手当」の概要について更にポイントをご紹介します。
再就職手当とは「失業保険を受給しながら求職活動をしている期間に、次の勤務先に就職が決まった場合、本来もらえる権利のある失業保険(基本手当)のうち、残りの日数分のうち所定の割合に応じて一時金として受け取ることが出来る手当」です。
平たくいうと「再就職の祝い金」のような手当です。
失業手当の受給日数を残して再就職すると、フルで手当をもらうことが出来なくなり損するのではないか?と考える方も中にはいらっしゃいます。
もちろん失業保険を限度いっぱいまでもらう場合よりは、再就職手当の方がトータルで考えると少ないですが、再就職が決まれば生活も安定しますし、働く意欲がある方にとっては、一日も早く新たなスタートを切ることがベストです。
失業保険をもらうことが出来る期間一杯まで再就職をせずに失業保険をもらい続けるより、再就職をして現役並みに給与をもらい、条件を満たした再就職手当を受け取る方が、結果的に金銭的でも大きな安心になることはいうまでもありません。
再就職手当は、新たに就職するだけでなく自営業の開始でも、事業計画書などの提出によって要件に該当する場合があります。自営業を開業して再就職手当を希望する場合の詳しい要件に関しては、ハローワークまでお尋ねください。
再就職手当の算出の根拠となるものには、以下の3つがあります。この3つをかけ合わせると、再就職手当の支給額となります。すべての算出根拠に共通して、早く再就職をすることで、より高い再就職手当を受け取ることに繋がります。
つまり、なぜ再就職手当が存在しているかというと、より早期の再就職を促進しているということです。
失業手当をもらいながら求職活動を行い、その中で再就職が決まった場合、あと何日分の支給日数が残っているかは給付額に大きな影響を与えます。残日数が多いほど、再就職手当の額はあがるということになります。
基本手当日額は、前職での給与などで差があります。もともと働いていた会社での働き方によって日額は違いますので、ここを増やしたり減らしたりすることは出来ません。
所定の給付率は、残りの残日数によって変わります。再就職が早く決まれば決まるほど、高い給付率で再就職手当を受け取ることが出来ます。おおむね50%~80%のうちのいずれかとなります。
これらの3つの数字をかけ合わせて、再就職手当の額が決まります。その際、一時金として一括で振り込まれます。
再就職手当を受給するためには、以下の受給要件を満たす必要があります。
再就職手当をもらうためには、本来もらえるはすだった失業保険の給付日数の残が1/3以上あることが大前提です。ここでポイントとなるのは「給付額の残」ではなく「給付日数の残」が必要であるとういうことです。
自己都合退職の場合は、7日間の待期期間ののちに給付制限がありますが、その給付制限の1か月目までの間に再就職を決める際は、ハローワーク経由の求人か人材紹介会社経由の求人であることが条件となります。
ハローワークや人材紹介会社以外での自己発見や個人の紹介、縁故などでの再就職では条件を満たしません。
給付制限については、こちらもご参照ください。
正社員での再就職だけでなく、パートやアルバイトでも要件さえ満たせば再就職手当を受給することが出来ます。
また、この要件を満たしていると認定され、一時金で再就職手当を受け取った後でやむを得ない事情から退職することになっても、特に返還しなければならない決まりはありません。
しかし、雇用保険全般において給付金の不正受給は厳しく罰せられます。
詳しくはこちらの記事もお読みください。
再就職が決まったら、まずはハローワークに再就職する旨を届け出る必要があります。そこで「再就職手当支給申請書」を受け取ります。ここに記載されている項目すべてを埋める必要があります。
聞きなれない用語なども申請書には多く出てきますので、わからない箇所はハローワークで訊ねながら、正しく記入していくと良いでしょう。なお、提出期限は、実際に再就職した日から1か月以内と決まっています。
再就職したばかりで仕事に慣れるのにも時間がかかる時期ですので、つい失念してしまう方が多いのも事実です。せっかくもらう権利がある給付金ですから、もらい忘れることがないよう、早めに記入し早めに提出することを心がけましょう。
実際に再就職手当が振り込まれるまでには、申請後約1カ月ほどかかります。ここまでにも解説したとおり、再就職手当をもらうまでにはクリアしなければならない条件がいくつもあります。
雇用保険全体の公平性を守るためにも、しっかり審査をして正しい支給をする必要があります。このことから、どうしても約一カ月程度の時間を要することになります。
再就職手当や失業手当などは、一生懸命に働いている方々の万が一に備えたお守りとなる手当です。例えば再就職先が遠方である場合などは、この再就職手当が一時金としてまとまってもらえることで、転居費用などに充てることもできます。
失業手当を全額もらうことと、途中で再就職をして手当をもらうことと、どっちが損か得かではなく、心身ともに健康で、働く意欲があり能力もあるのであれば、やはり一日も早く再就職することに越したことはありません。
いずれにしても、支給された給付金を最大限活用して、ご自身の望む形での再就職が出来るように求職活動を進めていく必要があります。注意点として、手続きを失念していてもらえなかった、となると非常に勿体ないことになりますので、必ず提出期日を守ってしっかり手続きを済ませましょう。
この記事を読んで少しでも心当たりや不明点が生じた場合には、一度雇用保険の担当機関であるハローワークに直接訊ねてみると良いかと思います。