- がん保険は一生涯必要な保障であるため、途中で解約する「貯蓄(積立て)型」より「掛け捨て型」を選んだほうが良い。
- 掛け捨て型の「終身タイプ」と「定期タイプ」なら、保障が一生涯続いて保険料が一定の「終身タイプ」のほうが良い。
- 掛け捨て型の「定期タイプ」は若いうちの保険料が安いことを生かした使い方がある。
公開日:2020年3月17日
生命保険には「掛け捨て型」と「貯蓄(積立て)型」があり、がん保険にも当てはまります。「掛け捨てはもったいない」という考えの人も多いと思いますが、果たして掛け捨て型は損なのでしょうか。
今回は、がん保険において「掛け捨て型」と「貯蓄(積立て)型」のどちらを選べばいいか、を考えてみます。
目次
一般的に貯蓄型の保険とは「途中で解約したときに解約返戻金があるもの」のことを指します。日本において現在、このタイプのがん保険は非常に数少なくなっています。
従来から法人向けのがん保険には保障が終身で、途中で解約したときに支払った保険料の80%以上が戻ってくるタイプがあります。しかし、法人用がん保険は個人では契約できません。
また、法人用は節税が目的の商品だったため、保障内容が現代のがんの医療事情にそぐわない場合もあります。
個人向けで貯蓄型と呼べるがん保険もありますが、単純に解約したときに解約返戻金がもらえるというタイプはほとんどなく、以下のようなタイプがあります。
最近の医療保険やがん保険では、基本は掛け捨てでも一定期間(5年間とか10年間など)保険からの給付を受けなければ支払った保険料の一部を返すという商品があります。
この場合の戻ってくる保険料を「無事故給付金」とか「健康祝い金」などと呼んでいます。保険を使わないで済んだことへのボーナスのようなものと言えるでしょう。
70歳や75歳などの定められた年齢まで保険からの給付金の支払いがなければ、それまで払い込んだ保険料が還付金として戻ってきます。診断給付金などを受け取った場合、払い込んだ保険料から給付金を差し引いた金額が戻されます。
還付金を受け取ってからも保障は継続できます(保険料の払い込みは必要)。
貯蓄型のがん保険がいいと思う方は「もし、がんにならなかった場合に1円も残らないのはイヤ」という気持ちからでしょうか。けれども、今の生命保険の運用事情は芳しくなく、貯蓄として考えると魅力はあまりありません。
そうなると、がん保険に求めるのは保障だけで、貯蓄性は不要と考えるほうが合理的です。貯蓄型がん保険の保険料は当然、掛け捨て型がん保険より高いです。
がん保険は保障だけと割り切って掛け捨て型を選び、浮いたお金でNISAやiDeCoで資産形成をすることをお勧めします。
掛け捨て型がん保険にはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
がんに罹る人の増加に伴い、がん保険の保険料も上昇傾向にあります。ますますがん保険の必要性が増す中で、少しでも保険料を押えて必要な保障を確保するためには、貯蓄型より保険料の安い掛け捨て型を選ぶほうが賢明だと言えます。
「日本では貯蓄型のがん保険は種類が少ない」と述べました。そのため、新商品もあまり開発されず、現在の医療事情にそぐわない商品も見受けられます。
それに対し、掛け捨て型は現在のがん保険の主流であるため競争も激しく、保障内容の充実した新しい商品が常に発売されています。
がん保険はがんの医療事情の変化とともに次々に新しい商品が開発されてきました。加入しているがん保険が、その時の医療事情にそぐわなければ、見直しをしたほうがいい場合もあります。
そんなとき、貯蓄型は解約するタイミングによっては返戻金が少なくなる可能性があります。それに対し、掛け捨て型のように返戻金がなければ、いつでも解約してより良い商品に乗り換えることが気軽にできます。
掛け捨て型がん保険のデメリットは、がんに罹らなかった場合、受け取るものが何もないことです。この特徴から、「掛け捨て型は損」と感じられる場合、がん保険の加入そのものが難しくなるでしょう。
掛け捨て型がん保険には「終身タイプ」と「定期タイプ」の2種類があります。主な特徴は以下の通りです。
終身タイプ | 定期タイプ | |
---|---|---|
保険期間 | 終身(一生涯) | 期間限定(80歳くらいまで更新) |
保険料 | 一定 | 更新ごとにアップ |
定期型の保険料は20代、30代では割安ですが、50代以降は更新時(5年ごとが多い)の上り幅が大きくなります。
では、「終身タイプ」と「定期タイプ」の掛け捨て型がん保険では、どちらを選んだらよいのでしょうか。
ここで、加入する目的からがん保険選びのポイントを考えてみます。
保険に入るとき、保険金額や保険料をチェックし、入ってからも忘れない人は多いのではないでしょうか。けれども、「保障がいつまで続くのか」を気にする人はあまりいません。
ところが、保険選びにおいて保険期間は保険金額や保険料以上に重要なポイントなのです。
がん保険の保障期間を考えるうえで、参考にしたいのが年齢ごとのがんの罹患率です。次のグラフは男女の年代ごとのがん罹患率を表しています。
出典:国立がん研究センターがん対策情報センター「がん登録・統計」
女性は男性より罹患率は低いのですが、20歳を過ぎると乳がん、子宮がんに罹る人が増えてきます。男性は50歳を過ぎると急激にがんに罹る人が増える傾向にあります。男女ともに年齢が上がれば上がるほど、がんの罹患率が上がることがわかります。
がんの治療事情も変化しています。以前は、入院して手術をする治療が主でしたが、今は抗がん剤や放射線治療を外来で受けることが多くなりました。
長らくがん保険の基本保障は入院給付金でしたが、今は診断給付金などの一時金や放射線や抗がん剤などの治療給付金に変わりつつあります。そうした今どきの、がんの治療事情に対応した保障内容になっているかも、がん保険選びの大きなポイントです。
以上のことから考えると、がんの保障は一生涯必要ということになります。そうなると途中で解約するということは考えにくく、やはり貯蓄型は選択肢には入らないことになりそうです。
歳を取れば取るほどがんに罹りやすくなること、日本人の平均寿命の伸びを考えますと、80歳くらいで保障がなくなる定期型がん保険も選びにくいのではないでしょうか。
また、年金生活者になって収入が限られているのに、保険料がどんどん上がっていく、というのも定期型のマイナスポイントです。やはり選ぶなら、保障が一生涯続いて、保険料が上がらない「終身型」がん保険がベストだと思います。
若いうちに保険料の払いやすい掛け捨て型の終身タイプに加入しておけば、がんの治療事情の変化で見直しが必要になった時の乗り換えをしても損になりません。仮に見直す前にがんに罹ったら、加入している保険を継続すればいいのです。
終身タイプの掛け捨てがん保険がいいというなら、定期タイプは全く役に立たない保険なのでしょうか?若いうちの保険料が安い定期タイプの特性から、考えてみます。
特に女性は20代から乳がんや子宮がんに罹るリスクがあります。乳がんや子宮がんは死亡するリスクは低いですが、その分、治療が長びいて費用がかかりやすい問題があります。がんに罹った時の経済的なダメージは収入の少ない若年層にも重くのしかかってくるでしょう。
若いうちからがん保険に加入したほうがいいのですが、保険料の負担が厳しい、というような場合に定期タイプの掛け捨て型がん保険は役に立ちます。
がん保険に関わらず、保険のニーズが高いのは子育て世代の一家の大黒柱です。まだ若い子育て期にがんに罹り、長期の治療が必要なうえに住宅費も教育費も掛かる、などという場合にはがん保険の保障も手厚くしたいものです。
そこで、終身タイプのがん保険に一定期間、定期タイプの保険を上乗せすることも一つのアイディアだと思います。子どもが独立したら定期タイプは解約する、というような使い方です。
最後に、保険の比較サイトなどで人気の商品の中からおすすめの掛け捨て型がん保険をご紹介します。
今回、筆者がお勧めする掛け捨て型がん保険はFWD富士生命の「新がんベスト・ゴールドα」です。がんと診断されたら、誰でも精神的なダメージを受けるだけでなく、経済的な不安にも襲われるでしょう。
そんなとき、治療が始まる前にある程度まとまったお金が受け取っておけたら、パニックにならないで済むと思います。
また、2年に1回という制限はありますが、入院という条件がつかずに治療が続く限り、何度でも一時金が受け取れるので、治療が長びいても安心です。悪性新生物と診断確定されたら、以後の保険料の払込は必要なくなります。保険料の負担がなく、一生給付が受けられます。
基本保障 | 悪性新生物診断給付金(一時金100万円) |
---|---|
オプション | がん治療給付金特約(10万円/月) |
がん先進医療特約 | |
35歳男性保険料 | 2,585円/月 |
35歳女性保険料 | 2,567円/月 |
悪性新生物と診断されれば、治療が始まる前に100万円を受け取ることができ、保険料の払込が必要なくなります。また、抗がん剤・ホルモン剤治療、放射線治療を受けたら月には治療給付金を10万円受け取れます。
重粒子線治療などの「先進医療」を受けた場合、治療費の実費が通算2000万円まで支払われます。この保険料は一生涯アップすることはありません。
掛け捨てのがん保険は、がんに罹らなければ1円も残らないから損だと考える人も多くいます。しかし、保険料が高くて貯蓄性も良くない「貯蓄(積立て)型」は逆に損ながん保険です。
保障が一生涯続いて保険料がずっと変わらない「掛け捨て型終身タイプ」がベストな選択肢となります。
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