公開日:2020年3月20日
日本人の約9割が保険に加入していますが、なぜそんなにも多くの方が加入しているのでしょうか?国民性で考えると、何かあった時に困るから入るといった風潮があります。
もちろん保険の役割は保険事故が起きた際に役に立ちます。しかし、加入はしたものの、一度も保険を使った事が無い方もいます。今回はがん保険について加入すべきなのか、どうかという事について解説していきます。もったいないと疑問に思っている方、是非ご一読下さい。
はじめにがん保険の必要性についてお話しておきたいと思います。そもそもがん保険は必要なのか?保険を備えるにしてももったいないんじゃないのか?と疑問をお持ちの方もいるでしょう。ではがんになった際の事例を交え解説していきますので、ご覧ください。
ではがんに罹った場合、一体どれ位のお金が必要になるのか見ていきますね。最近の統計では男性も女性も2人に1人が罹患する病気となっており、絶対に罹らないとは言えない時代の中で私たちは生活しています。罹患の確率としては50%と言える疾患になります。
では治療する場合にどれ位お金がかかるのでしょうか?
3年前のデータになりますが、まとめたものがこちらになります。
部位別疾患名 | 入院平均額 |
---|---|
胃の悪性新生物 | 946,748円 |
結腸の悪性新生物 | 891,266円 |
直腸の悪性新生物 | 990,705円 |
気管支及び肺の悪性新生物 | 778,162円 |
全日病より過去のデータをまとめて掲載しましたが、胃がん・肺がんなどの1回当たりの治療費はご覧の通りです。部位に関しては一部ではありますが、金額を見ても100万円に届きそうな勢いです。この金額は検査や手術などの費用が含まれており、高額である事が分かります。
この金額以外に掛かる費用として、ご家族の病院と家の行き来にかかる交通費、入院中にかかるTVカード、パジャマレンタル、雑誌など身の回り品の費用、食費、差額ベッド代が発生しますので、約100万円は見込んでおくべきではないでしょうか。
先程のデータをご覧になって「高い」と感じた方は多いと思いますが、高額療養費という制度によって治療費は圧縮される事をご存知ですか?高額療養費についてこちらをご覧ください。
区分 | 所得条件 | 計算式 | 多数該当 |
---|---|---|---|
区分ア | 年収約1,160万円~
健保:標準報酬月額83万円以上 国保:所得901万円超 |
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
区分イ | 年収約770万円~約1,160万円
健保:標準報酬月額53万円~79万円 国保:所得600万円~901万円 |
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
区分ウ | 年収約370万円~約770万円
健保:標準報酬月額28万円~50万円 国保:所得210万円~600万円 |
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
区分エ | ~年収約370万円
健保:標準報酬月額26万円以下 国保:所得210万円以下 |
57,600円 | 44,000円 |
区分オ | 住民税非課税者 | 35,400円 | 24,600円 |
高額療養費とは、治療費がある一定の水準を超えた場合に、経済的な負担を軽減するために設けられた国の制度の事。月初から月末までの治療費が対象となり、月を跨ぐ場合は各月で計算される。
上記の表は所得区分によって治療費が異なる事を示しています。所得区分で多いのはウになるかと思いますが、ウの場合で計算すると約9万円~10万円位に圧縮される事になります。先程ご覧頂いた表での金額の約10分の1までに減額される事が分かります。
では高額療養費制度があるからがん保険は不要だよねとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと待って下さい。あくまで1ヶ月でがんが治って、その後の療養や経過観察が無い場合であれば不要だと思います。
しかし、がんという病気は退院後に通院で治療する事が多い病気なんです。
現在の統計では、がんの治療は通院患者が入院患者を超えており、病院も入院だけで治す事を考えている訳ではありません。病院にもベッドの数に限りがあります。他にも入院を必要とする患者さんは多いので回転率を上げていかなければなりません。
一旦は入院で手術等を行った後に、予後の経過として観察するか、予防の観点から抗がん剤、放射線治療などに移行する事が多いようです。
このため毎月の通院が発生する事になり、いくら高額療養費が適用されるとは言え、1年間で通算して計算してみても、区分ウに該当する方でも約65万円は掛かる計算になります。計算式は次の通りです。
また通院治療も長く見積もっても5年間は継続すると考えるならば、300万円近くの治療費を見ておく必要が出てきます。
もちろんがんの程度や経過にもよりますので、早期に抗がん剤の投与が終われば問題は無いのかもしれません。しかしこの点を家計や貯蓄から捻出するのかと考えると大きな出費である事に変わりはありません。
がんに罹ってしまった場合、仕事はどうなるでしょう。罹患した方にアンケートした結果、収入がダウンした方の回答は33%にも上り、減少の幅が最も多かった割合として5割減ったと回答した方が33%、5~7割減が29%、7~8割減が24%となっています。
勤務先の就労状況が変わった方は53%と半数を超えており、うち依願退職として回答された方は30%、転職17%、解雇11%、休職7%と会社としての対応も様々です。日々の当たり前の生活が一変してしまう事にもなりかねない病気である事がお分かり頂けたのではないでしょうか。
私個人的な見解ですが、極論を言えば、潤沢にお金がある方はがん保険に加入しなくても良いでしょう。しかし、貯蓄が出来ていない、十分ではない方は加入しておく事を強くお勧め致します。病気によって生活が苦しくなる事を防ぐ役割ががん保険には出来るからです。
また医療保険や生命保険に加入しておく事で、ご家族にも経済的な負担を掛ける事は少なくなります。加入する、見直しするなどの検討は健康であるうちに済ませてしまいましょう。
ここからはがん保険の見直しについて解説していきます。加入状況はそれぞれバラバラだと思いますが、少なくとも10年前にご加入したままであれば一度、内容の確認をしておく事をお勧めします。見直しのポイントや注意すべき事を次に解説しますね。
保険を見直す際のポイントとして、がん保険の場合は今の治療実態に合っているかどうかを確認しましょう。
例えば、通院に対応しているかどうかですが、通院にも2種類あり、一般的な通院保障と言えば1日3,000円、5,000円のように通った日数分左記の金額を支払うパターンです。このパターンで保障を備えている方は、高額療養費を利用しても過不足が出ると思います。
抗がん剤治療は1回の通院で薬剤を投与する事になりますので、薬価にもよりますが、高いものであれば8万円などになります。高額療養費制度を利用しても同額になり、この時に5,000円を受け取ったところで負担の方が大きいです。
最近の通院保障は抗がん剤や放射線で通院した際に受けた月毎に10万円、20万円、30万円といった金額を受け取れる内容の保険が多くなっています。しっかりと負担を軽くする為の保険に入っておくべきでしょう。
がんと診断された際に保険会社から一時金として50万円や100万円といった金額が支払われます。この診断一時金は2年に1回のタイプや一生に1度きりのタイプ、1年に1回のタイプ等保険会社によって様々です。なるべくなら再発リスクを考えて1年に1回出るタイプにしておきましょう。
また複数回支払われるタイプにも2回目の給付要件に入院しなければ支払われないものが多く、なるべくなら2回目も診断で支払われるものの方がスムーズでしょう。
がん保険の見直しで気を付けるべきは免責期間です。免責期間は読み替えると対象外の期間という事になり、新しくがん保険に加入しても90日間は免責期間となっている保険会社が殆どで、この90日以内にがんが見つかっても支払われません。
よって見直す前のがん保険を免責期間が終わるまでは保有しておく事で少しでもリスクは減らせますので、少しの間ではありますが、前の契約を保有しておく事が望ましいです。
次にどんな比較をすべきか、という事に触れておきます。私の個人的な見解で解説します。
前述したように、がんに罹患した際の経済的なダメージは人それぞれですが、仮に仕事を退職する事になったとします。収入が無い状況で治療しなければなりませんが、転職を考える場合、現在治療中である事を告げると採用される確率は低くなるでしょう。こうなってしまっては大変です。
この時にがん保険の効果が発揮されますが、加入しないという選択肢よりも、加入しておく事の方が重要だと考えます。
また内容を充実させると保険料が割高になります。そこで掛け捨てタイプの登場です。積立型のがん保険は貯蓄機能が備わっているので、元の値段が高くなってしまいます。毎月の家計から保険料は出ますので、掛け捨てで保障内容を充実させるという事がベストだと考えます。
がんに罹患する確率が高くなるのが男女ともに40代からになります。40歳になったから入ろうと考えていても、30代でがんに罹患することだってあり得ます。
なるべく早めに加入を検討しておく事で、掛け金が安いなどのメリットを享受できますので、なるべく早めに備え、90日の免責期間を乗り越えましょう。
今回はがん保険の必要性、見直しのポイントについて解説してきました。今の統計は50%で罹患すると判明していますので、早めに備える事はもちろんですが、しっかりと保障内容も注意して選んでおきましょう。
いざという時に保障されないという事になって後悔しても遅いですし、健康状態を損なう事で見直しも切り替えも出来なくなります。比較はしっかりと行っておきましょう。
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