- 個人事業主はプライベートの口座とビジネス用の口座を分けるべき。
- ビジネス用の口座は屋号付き口座にすることで、さらにさまざまなメリットを得られる。
- 屋号付き口座を開設する金融機関は「取引先や顧客が全国にあるかどうか」や「将来融資を受けたいと思っているか」で判断しよう。
公開日:2020年5月5日
個人事業主として独立するとき、銀行の口座は個人名義のままでも問題ありませんが、事業用の口座と分けて使うべきなのでしょうか?
本記事では、個人事業主として独立された方やこれからされる予定の方に向けて、事業用の口座開設をすべきかどうかや、そのメリット、おすすめの金融機関などをお伝えしていきます。
個人事業主は個人でもあり事業主でもあるため、プライベートの口座のまま取引先や顧客から報酬や売上を受け取ることが可能です。一方、金融機関で口座を開設する際に、屋号付きの口座にしてビジネス専用の口座とすることもできます。
屋号付き口座を開設してビジネス専用の口座を持つと、プライベートとビジネスのお金を分けて管理できたり、税金の計算に便利だったりといったメリットがあります。詳しいメリットの内容については次以降で解説していきます。
個人事業主の方がプライベートの口座とビジネス用の口座を分けると、以下のようなメリットを得ることができます。
それぞれ見ていきましょう。
まず、プライベートの口座とビジネス用の口座を分けることで、それぞれお金を分けて管理しやすくなります。これは意外と重要なことで、ビジネス用の口座を作っていないと、1つの通帳で生活費などと事業用の経費(事務所家賃や仕入れ費など)が入り混じってしまいます。
一方、口座を分けていると、生活費などにいくらかかっているか、事業の経費にいくらかかっているかをはっきり区別できます。例えば1月の収支がマイナスになっている場合には収入を上げるか支出を下げるかする必要がありますが、これは口座を分けている方が断然やりやすくなるでしょう。
ちなみに、1カ月のお金の動きが多い場合には、ビジネス用の口座を収入専用の口座と支出専用の口座に分けることで、さらに管理しやすくなります。
起業して個人事業主になると、複式簿記による方法で記帳することで最大65万円の特別控除を受けられる「青色申告」を利用できます。青色申告をするには事業の財務状況を表す貸借対照表を作成する必要がありますが、その際、口座の1年間の取引を帳簿付けしなくてはなりません。
1つの口座で事業用でない入金や出金があると、それらについてもすべて「事業主借」や「事業主貸」などとする必要があり、記帳の手間が増えることになります。
一方、ビジネス用の口座を開設していると、生活費などをまとめてプライベートの口座に移す際のみ「事業主貸」とすればよいだけなので、記帳が楽になります。
また、確定申告を税理士に代理してもらっている場合は、帳簿をつけるために通帳の中身を見せることになります。ビジネス用の口座を作っていないと、通帳を見せるときにプライベートな内容まで見せることになり、嫌だという方もいるでしょう。
事前にビジネス用の口座を作成していれば、こうした心配をする必要もなくなります。
もう1つのメリットとして、屋号付き口座を持つことによって、会社名義口座を持つのと同じような効果を得られるということが挙げられます。
例えば、ネットショップを経営しているようなケースでは、振込先として銀行口座を提示することがありますが、こうしたとき、個人名の口座より屋号付きの口座の方が安心感を持たれやすくなるでしょう。
また、複数の事業を行っている場合には、事業別に屋号をつけることで口座を分けられるというメリットもあります。
ところで、屋号付き口座を開くのであれば、どのような視点で金融機関を選ぶとよいのでしょうか?ここでは銀行系と信用金庫系、ネットバンク系に分けてそれぞれ比較していきたいと思います。
なお、屋号付き口座はすべての金融機関が対応しているわけではありません。検討している金融機関があるのであれば、まずは確認してみるとよいでしょう。
必要書類としては「本人確認書類」と「印鑑」、「開業届の控え」、「事務所の住所等の分かる賃貸契約書」などがありますが、こちらも金融機関によって変わることがあるので、事前に確認しましょう。
都市銀行や地方銀行などが該当します。都市銀行の場合、三菱UFJ銀行やみずほ銀行、三井住友銀行など、いずれにおいても基本的には屋号付き口座の開設が可能ですが、銀行の方針によっては口座開設時にヒアリングが行われ、必要に応じて書類を提出しなければならないことがあります。
また、地方銀行においても基本的には屋号付き口座の開設が可能ですが、一部の地方銀行では取扱いがないこともあるため注意が必要です。
都市銀行の場合、取引先や顧客に安心してもらいやすい他、都道府県をまたいで全国に取引があるようなケースでは、同じ都市銀行間であれば振込手数料が安くなるメリットを得ることができます。
一方、将来的に銀行から融資を受けることなど考えているのであれば、地方銀行の方がおすすめです。
信用や実績の少ない個人事業主の方が都市銀行から融資を受けるのはハードルが高いですが、地方銀行は中小企業や個人事業主をメインターゲットとしているため、話を聞いてくれやすいからです。
都市銀行においては、屋号付き口座の取扱いにおいて以下のような違いがあります。
信用金庫も基本的には地方銀行と同じだと考えてよいでしょう。地方を中心に事業を行う場合や、将来的に融資を受けることも考えているのであれば、信用金庫の方が適していることが多いといえます。
なお、地方銀行がよいか信用金庫がよいかについては、大きな違いはないと考えて問題ありません。支店数や、融資への姿勢など個別に判断する必要があるでしょう。
ネットバンクは、屋号付き口座であってもWeb上だけで口座開設を完結できる手軽さが特徴です。お金を振り込む際に手数料を安く抑えられるのもポイントの1つだといえます。
ただし、住信SBIネット銀行など一部のネットバンクでは屋号付き口座の開設はできないため事前に確認しておきましょう。
ネットバンクにおいては、屋号付き口座の取扱いについて以下のような違いがあります。
個人事業主の方が屋号付き口座を開くメリットやおすすめの金融機関などをお伝えしました。
個人事業主になっても個人の口座のままで通すことはできますが、お金の管理の問題や確定申告のしやすさから、ビジネス用の口座を開設して分けるのがおすすめです。
その際、どの金融機関にすればよいかについては、本記事の内容を参考に「取引先や顧客が全国にあるかどうか」や「将来融資を受けたいと思っているか」といった視点で選ぶとよいでしょう。
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