- 確定申告は納税のためだけではなく、節税のためにも活用できる。
- 確定申告の申請書には2種類あり、入手するのは国税庁のHPが便利。
- 令和3年分の確定申告は【令和3年2月16日〜令和3年3月15日】まで。
公開日:2021年2月11日
本記事は、初めて確定申告を行う方、確定申告とは何かわからないという初心者の方向けの記事です。そもそも確定申告とは何か、確定申告はどのような人が必要なのか、記入内容と必要な書類、申請の仕方などを簡潔にわかりやすく説明します。
目次
確定申告とは、所得の金額、所得に対する所得税、復興特別所得税の額を自ら計算し、確定申告書を提出して納税または還付申告をする手続きのことです。一般的に「税金を支払うために確定申告する」というイメージが強いかもしれませんが、還付を受けるために行うこともできます。
確定申告の仕組み、控除の種類などを理解していれば、税金を取り戻せる可能性があります。そのため、「サラリーマンで年末調整しているからわからなくても大丈夫」と思わず、確定申告の基本について知っておくことをおすすめします。
令和3年分の確定申告の期間は、2021年(令和3年)2月16日〜2021年(令和3年)3月15日までです。確定申告の対象期間は、申告書を提出する年の前年の1年間分です。つまり、令和3年度の申告対象期間は2020年(令和2年)1月1日〜2020年(令和2年)12月31日までとなります。
また、これは申告義務のある申告納税の期限であり、還付申告をする場合は、確定申告する年の1月1日から5年間であれば申告が可能です。
通常ですと上記の期限が厳守となり、それを過ぎると加算税や延滞税などが発生します。一方で、令和2年分の確定申告は4月16日までに延長された上に、それ以降の申告も柔軟に受け付けるといった対応になりました。
令和3年分についても、期限の変更について発表がある可能性があるため注意が必要です。
確定申告をする上で必ず明確にしておきたい用語として、「収入」と「所得」があります。似ているように感じますが、全くの別物です。
収入は支給額のことを指します。給与の場合だと、一般的に額面と言われる金額です。
所得は、収入からその収入を得るためにかかった費用等を引いた金額です。所得には10種類あり、それぞれ異なった計算方法で算出します。確定申告をする際は所得の種類ごとに金額を記入する必要があるため、自分の所得の種類を把握することは重要です。
給料、パート、アルバイト収入、賞与などによる所得です。
他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得のことで、公的年金、副業による所得などです。
株式等による配当、投資信託の収益分配金などによる所得です。
※配当金や分配金は基本的に源泉徴収されているので確定申告は不要ですが、申告分離課税や総合課税を選ぶことも可能です。
生命保険の満期保険金、解約返戻金、賞金等による所得です。
個人事業主やフリーランスが事業により得る所得です。
預金の利息などによる所得です。
不動産、株式、公社債等の売却による所得、機械、ゴルフ会員券、骨董、貴金属などの資産売却による所得です。
※特別控除がある場合のみ
土地、建物などの賃貸により得る所得です。
退職金等による所得です。
山林を伐採して売却、立木のままで譲渡したことによる所得です。
確定申告は全員に義務があるわけではなく、一定の条件に当てはまる人にだけ申告義務があります。確定申告が必要になる主な例を6つ紹介します。
サラリーマンであっても収入金額が2000万円を超える場合は、年末調整ではなく確定申告が必要になります。源泉徴収票は受け取ることができるので、それをもとに自身で控除金額などを計算して申告することになります。
給与収入以外に副業で収入を得ていて、経費を差し引いた所得の合計が20万円を超える場合は確定申告の必要があります。注意点は、副業による売上が20万円を超えたら確定申告が必要であると勘違いしやすい点です。
経費を引いた後の所得が基準になりますので、例えば売上が30万円あったとしても、経費が10万円であれば所得は20万円となり、確定申告は不要になります。
副業による収入は基本的に雑収入になります。経費としては、交通費、資料代、インターネット接続代などが該当します。そのため、雑収入から経費を引いた雑所得が税金の対象になります。
また、源泉徴収された上で報酬を受け取った場合は還付金を受け取れる可能性があります。
複数の会社から収入を得ている場合は確定申告が必要になります。ただし、主たる給与以外の収入の合計が20万円以下であれば、確定申告は不要です。
主たる給与以外の収入が20万円を超える場合は、年末調整だけでは正しい税金の額が算出できません。そのため、源泉徴収票をもとに自分で計算して確定申告をする必要があります。
満期保険金は一時所得として課税対象になります。中途解約して受け取った解約返戻金も対象です。ただし、払込保険料は必要経費にできるので、実質「もうけ」部分にだけ課税されます。
課税金額は、保険会社から発行される支払明細書をもとに計算します。支払明細書の収入金額を申告書第二表の収入金額に記入し、払込保険料を申告書第二表の必要経費等の欄に記入します。
一時所得には50万円の控除があるので、同じ年に保険満期金以外の一時所得がなければ、より有利に受け取ることができます。
個人事業主の収入は事業所得として確定申告する必要があります。白色申告の場合は申告書Bのほか、収支内訳書(一般用)を用意しなければなりません。帳簿を確認しながら、売上原価や経費の欄に金額を記入します。また、青色申告ではより複雑な複式簿記での記帳が必要です。
退職金は退職所得として課税の対象になります。退職所得控除が適用できるため、比較的有利に受け取ることができます。
確定申告の義務がない人でも、確定申告することによって税金の還付を受けられる場合があります。代表的な例を3つ紹介します。
1年間で医療費を10万円以上支払った場合には、所得控除を受けることができます。自分自身の医療費だけでなく、生計を一緒にしている家族の医療費を支払った場合はそちらも合算対象になります。
ただし、医療費の対象外になる費用もあるので注意が必要です。具体的には、診断書の作成費用、予防接種、美容目的の治療、差額ベッド代、実家出産のための帰省費用などがあります。
ふるさと納税を行ったり、災害時に義援金を送ったりした場合は寄付金控除を受けることができます。控除の対象になるのは、税法上で規定された特定寄付金とされるもののみです。
ただし、ふるさと納税に関しては、ワンストップ特例制度を使って必要書類を各自治体に送付した場合は、確定申告不要で控除を受けることが可能となります。注意点として、ワンストップ特例制度の税金の還付方法は、所得税分もまとめて住民税から引かれることとなります。
生命保険、医療保険、個人年金保険などの保険料を支払っている場合は、生命保険料控除を受けることができます。
支払った保険料によって控除を受けられる金額が変わりますが、年間8万円以上支払っている場合で所得税は最大4万円分、住民税は2.8万円分の所得控除を受けられます。
詳細は国税庁のHPで確認できます。
確定申告の大まかな手順は以下の通りです。
確定申告書は申告書Aと申告書Bの2種類あります。申告書Aは簡素化されており、一定の条件を満たす場合のみに使用できます。一方で申告書Bは汎用的に使用できます。
申告書Aは、所得が給与所得・雑所得・配当所得・一時所得のみであり、予定納税額がない場合に使用できます。申告書Aの対象者はサラリーマンや年金受給者など、申告書Bの対象者は個人事業者、フリーランス、不動産所得のある人などです。
申告書Aは第一表と第二表で構成されています。第一表には氏名、住所などの個人情報の他、収入・所得・所得控除・税額を記入します。第二表には、所得の内訳・所得控除の詳細・住民税について記入をします。
申告書Bは第一表〜第四表で構成されています。第一表・第二表の記入項目は申告書Aの場合と同様です。
第三表は分離課税用で、土地・建物・株による譲渡所得や退職所得等があった際に使用します。第四表は損失申告用で、所得の金額が赤字になった人が使用します。申告書Aと似ていますが、対象となる所得の種類が多くなっています。
初めて確定申告をする場合は、書類を自分で入手する必要があります。入手するためには、国税庁のHP、税務署や確定申告会場、市区町村の担当窓口などに取りに行くといった方法があります。直接取りに行く場合は、受付時間などを事前に確認しておくと良いでしょう。
一度確定申告をすると、次の年からは郵送で申告書が送られてくるようになります。
申告書Aと申告書Bはどちらも第一表と第二表があります。正しい順番で書き進めていくことで不備が発生しにくくなります。申告書の書き方は以下の通りです。
第一表に種類ごとに収入を記入します。次に、第二表に記入するのは雑所得(公的年金以外)、総合課税の配当所得・譲渡所得、一時所得の詳細です。分離課税の配当所得や譲渡所得の記入は不要です。
各収入から費用を引いた所得を種類ごとに記入します。また、所得の合計金額も記入します。ただし、第一表に記入するのは総合課税に関する所得のみです。分離課税の所得は申告書第三表で計算します。
受けられる所得控除の金額を第二表に全て記入します。第二表で計算した所得控除の額を第一表に転記します。
所得金額の合計額から、所得から差し引くことのできる金額の合計を差し引いた金額を、第一表右上の課税される所得金額の欄に記入します。
※分離課税の所得がある場合は、申告書第三表で税額を計算して第一表に転記します。
税額控除の金額を種類ごとに記入します。外国税額控除は、復興特別所得税を合計した金額から差し引きます。
税額控除を引いた金額に復興特別所得税額(所得税額の2.1%)を加えて、最後に源泉徴収税額を差し引きます。算出後の金額がマイナスの場合は還付となり、プラスの場合は納税する必要があります。
受けたい控除の種類によって、申告書の他にも各種書類と添付書類台紙が必要になる場合があります。それらの書類を添付書類台紙に添付して、申告書とともに提出します。
保険に加入している | 申告書A、保険の控除証明書 |
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マイホームを売却して利益を得た | 申告書B、第三表(分離課税用)、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書) |
医療費控除を受けたい | 申告書AまたはB、医療費控除の証明書 |
住宅ローン控除を受けたい | 申告書AまたはB、住宅借入金等特別控除額の計算明細書 登記事項証明書、住宅ローンに関する年末残高等証明書などの書類も必要 |
確定申告書の提出先は、申告者自身の現住所を管轄している税務署になります。ただし、個人事業者は所得税・消費税の変更に関する届出書を提出することにより、事業所のある地域を管轄している税務署に変更できます。
税務署に持参する場合、月曜〜金曜の8時30分から17時までに持参するのであれば窓口に提出、土日・祝日や時間外に行く場合は時間外収受箱に投函します。税務署以外では広域申告センター、市区町村役場などでも受付が可能です。
レターパックプラス、信書箱、レターパックライトで税務署に送付する方法もあります。宅配便やゆうメール、ゆうパックなどは利用できません。送付した場合、通信日付印で表示された日が提出日になります。書留郵便で出すと証拠が残せるので安心でしょう。
申告書の控えを返送して欲しい場合は、自分の宛名を書いた返信用封筒に切手を貼って同封します。
e-Taxを利用すれば、インターネットで申告と納税までを完結することができます。初めて行う場合は、電子証明書の取得(マイナンバーカード)やICカードリーダーライタの購入などが必要になります。
最初に申告を行う時は面倒ですが、一度慣れると持参や送付に比べて手間が少なく便利です。e-Taxを活用した確定申告は以下の流れで行います。
住民基本台帳に登録されている人全員に支給された10万円の特別定額給付金は非課税となっており、確定申告は不要です。
特別定額給付金以外に非課税となる給付金は以下の通りです。
課税対象となり、確定申告が必要になる給付金は以下の通りです。
日本では源泉徴収制度があるため、税制についてよくわからないまま税金が徴収されている人がいるかもしれません。ですが、税金の仕組みや確定申告の流れ・控除・還付方法などについて知っておくだけで、納税はもちろん節税することが可能になります。
本記事で確定申告の基礎について理解を深めていただけたら幸いです。
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