- 学資保険の返戻率は、保険会社の運用利率以外にも、運用期間や支払期間によって決まる。
- 学資保険で学資金を準備するメリットは、貯蓄と保障を両立できる点にある。
- 返戻率を上げるには契約内容を工夫する必要があるが、計画的に無理なく続けることが重要。
公開日:2021年2月18日
子どもの将来に向けた教育資金準備の目的で加入する学資保険は、できるだけ効率よく貯めたいものです。そのため学資保険に加入する上では、返戻率の高さが重要な選択基準の一つとなります。
この記事では、返戻率の基本的な考え方や返戻率を上げるための方法、また返戻率の高い学資保険について解説します。返戻率の仕組みを正しく理解し、より効率よく教育資金を準備しましょう。
以前は「子どもが生まれたら必ず学資保険に加入しよう」といわれるほど、学資保険は教育資金準備の代名詞とされていました。しかし昨今は低金利下の影響もあり、それほど大きな貯蓄効果が見込めないのも実態です。
そうした実態から、学資保険を検討する際はその貯蓄性だけに着目せず、保険としての特徴や利点について理解しておきましょう。学資保険の特徴と、そのメリットについて解説します。
学資保険はその名の通り、子どもの将来の学資金の準備を目的とした貯蓄型の保険です。契約時に定めた保険料を払い込むことで、子供が一定の年齢に達したときに、祝い金や満期金という形でまとまった返戻金を受け取ることができます。
学資保険は高校卒業後の進学費用として準備しておくケースが主です。大学や短大進学にかかる教育費は以下の通りです。
区分 | 国立大
(4年) |
私立文系
(4年) |
私立理系
(4年) |
私立医歯系
(6年) |
私立短大
(2年) |
---|---|---|---|---|---|
自宅の場合 | 516.6万円 | 682.6万円 | 820.4万円 | 2,534.4万円 | 346.0万円 |
下宿の場合 | 814.7万円 | 972.3万円 | 1,110.1万円 | 2,951.9万円 | 484.7万円 |
それぞれの進路によって必要となる費用は異なりますが、いずれにせよ大きな支出となるのは間違いありません。早い段階から計画的に準備しておくことが得策といえます。
人生において子どもの誕生は大きな変化であり、親は子を養うために大きな責任があります。親に万が一のことが発生し、子どもが路頭に迷うといったことがないよう、十分な保障を準備しておくことが重要です。
学資保険は親の万が一の事態に備えて、学資金を貯めながら保障も準備できる点が特徴です。
学資保険に加入するメリットは、以下の5点です。
以下にてそれぞれ解説します。
これは「育英年金」という特約の仕組みです。全ての学資保険に付いているものではありませんが、この仕組みを付加することで、子どもの進学時までに万が一の事態が発生した場合でも遺族にまとまった資金を遺すことができます。
これは「保険料払込免除」という仕組みで、学資保険の主契約に付与されています。これによって、子どもの進学時までに親に万が一の事態が発生し、経済的に保険料の支払いが厳しくなった場合でも、将来の子どもの学資金はしっかりと確保することが可能になります。
加入する学資保険に子どものケガや病気に備える保障特約を付加する形です。これによって別途子どもに医療保険を掛けることなく、活発な子どもの日常生活のリスクに備えることができます。
学資保険を含めた貯蓄型の保険は、中途解約すると元本割れが生じてしまうケースがほとんどです。預貯金や他の資産運用のように余裕があるときだけ貯めるという形がとれず、毎月支払わないと契約自体が失効してしまいます。
そうした点が抑止力となり、結果として強制的にお金を貯めることができます。
「生命保険料控除」とは、保険料を負担している人が、所得税や住民税の申告において一定額の所得控除を受けることができる税制上の制度です。これによって、将来に向けた貯蓄を行いながら、同時に税金の負担を抑えることができます。
学資保険の返戻率とは、支払った保険料の総額に対し、受け取る祝い金や満期金の総額の割合のことをいいます。
実際に計算してみると、以下のようになります。
払い込む保険料の総額は、1万2,000円×12か月×18年=259万2,000円となります。よって返戻率は、300万円÷259万2,000円×100=115.74%となります。
返戻率が高ければ高いほど、貯蓄性が高く効率のよい学資保険であるといえます。
学資保険は昨今の低金利下の影響もあり、過去と比較してその返戻率は低くなっています。学資金の準備として貯蓄するという目的であれば、預貯金やその他の資産運用など学資保険以外のさまざまな手段を検討する必要があります。
貯蓄性を重視し、リスクを取ってでもとにかくお金を少しでも増やしたいと考える人は、学資保険の返戻率には物足りなさを感じてしまうかもしれません。また、準備開始が遅れ、短期間でお金を増やしたいと考える人にとっても学資保険は不向きといえます。
一方、低金利下において銀行預金の金利には期待は持てないが、他の運用商品だとリスクがあって不安を感じるという人には、学資保険による貯蓄が向いています。毎月定額の保険料が口座から振り替られるため、貯蓄が苦手な人でも強制的に貯蓄ができます。
学資保険の返戻率が決まるポイントは、以下の4つです。
この4つのポイントを踏まえた上で検討すれば、返戻率の高い学資保険に加入することができます。以下にて解説します。
運用利率が高ければ高いほど、支払う保険料は安く、返戻率は高くなります。
毎月支払う保険料は、予定死亡率・予定利率・予定事業費率によって算出されます。このうち予定利率は、保険会社が契約者に対して約束する運用利回りのことです。予定利率が高いほど運用成果が良いということになり、保険料は安く抑えられ、返戻率も高くなります。
運用利率は各保険会社の商品によって異なるため、加入時に確認しましょう。
運用期間が長ければ長いほど、返戻率は高くなります。保険会社は契約者から預かったお金を運用して増やします。その運用期間が長ければ長いほどお金は増えるため、保険会社に寝かせておく期間が長ければ返戻率は高くなります。
保険料の支払い期間が短ければ短いほど、返戻率は高くなります。保険料の支払いを前倒しで早く済ませることで、満期が来るまでの期間が長くなり、その分運用期間も長くなります。保険会社は預かったお金を長い期間で運用できるため、返戻率は高くなります。
支払い期間には月払い以外にも半年払い・年払い・一時払いなどがありますが、まとめて支払った方が返戻率は上がります。
満期金の受け取りは、一括で受け取るよりも分割で受け取った方が返戻率は高くなります。満期で一括で受け取った場合はそれで終了ですが、受け取り年度を分けて分割で受け取ることによって、保険会社に据え置いている残りのお金の運用は継続されるため、最終的な返戻率は高くなります。
「貯蓄と保障の両立」という、学資保険の特徴を十分に理解した上で加入を検討するなら、少しでも返戻率を高くする方が得策です。できるだけ返戻率の高い学資保険を選択することで、効率よく学資金を増やすことが可能です。
契約内容を工夫すれば、返戻率を上げることができます。以下では返戻率を上げるための5つの方法をご紹介します。
学資保険の保険料は、親も子どもも、ともに年齢が若ければ若いほど安くなります。また、父母で年齢差がある場合は、若い方を契約者にすることで保険料が下がります。月々の保険料を安く抑えることで、結果として返戻率を上げることが可能です。
ほとんどの学資保険は、出産予定日の140日前から加入できます。出産直後は里帰りなどもあって忙しくなるため、早めに夫婦で話し合って加入を検討しましょう。
学資保険の払込期間には、以下の種類があります。
全期払いに比べ、短期払いや一括払いの場合は、満期金を受け取る時期までの保険会社への据置期間が長くなります。その間も保険会社が運用によってお金を増やしてくれるため、返還される満期金をより増やすことができます。返戻率を上げたいなら短期払いや一括払いを選ぶといいでしょう。
ただ、払込期間を短くすると月々の保険料負担は大きくなるため、無理なく支払える金額で設定することが大切です。
保険料の支払方法は以下の種類があります。
保険料はまとめて支払うことで割引になり、総支払金額が安くなります。繰り返しになりますが、保険料が安くなると結果的に返戻率は上がります。
契約時に月払いで始めた場合でも、家計の見直しによって余裕ができれば、将来の保険料をまとめて前倒しで支払うことも可能です。これを前納といいます。
前納を活用すれば保険料の支払いが早めに完了し、満期金の受け取り時期まで保険会社への据置期間が長くなるため、返戻率アップにつながります。
返戻金(満期に受け取れる給付金)の受け取り方法には、以下の種類があります。
学資保険は、保険会社にお金を預けておく期間(据置期間)が長ければ長いほど、貯蓄効果は高くなり返戻率は上がります。よって受け取り時期をできるだけ遅くに設定すると、その分運用期間が長くなるため返戻率を上げることができます。
分割受け取りで、中学校や高校などの進学時期に祝い金を受け取るタイプの場合、返戻金の支払いによって元本を減らすことになるため返戻率は下がります。
反対に同じ分割受け取りでも、大学在学中に毎年受け取るタイプの場合であれば、元本を保険会社に長い期間据え置くことになり返戻率は上がります。
前段でも解説しましたが、学資保険にはさまざまな特約があります。
これらの特約が付加されている学資保険は、その特約にかかる費用として保険料の一部が充てられます。つまり貯蓄に充てる部分が減ることとなり、結果として返戻率は下がってしまいます。返戻率を上げたい場合は、できるだけ特約を付けず貯蓄に特化したシンプルな形にすることが得策です。
しかしながら、学資保険に特約を付加することでほかの生命保険や医療保険に加入する必要がなくなれば、返戻率は下がったとしてもトータルで家計支出を減らすことができます。総合的に考えた選択が重要です。
ここでは、現状の低金利下の中でも比較的返戻率の高い学資保険についてご紹介します。
※【契約者:30歳男性、被保険者(子ども):0歳、保険期間:17歳満期、支払方法:月払、払込期間:10歳】で試算
月払保険料 | 払込保険料総額 | 学資金総額 | 返戻率 | |
---|---|---|---|---|
日本生命「ニッセイ学資保険」 | 2万3,320円 | 279万8,400円 | 300万円 | 107.2% |
明治安田生命「つみたて学資」 | 2万3,640円 | 283万6,800円 | 300万円 | 105.7% |
ソニー生命「学資保険Ⅲ型」 | 2万3,683円 | 284万1,840円 | 300万円 | 105.5% |
フコク生命「みらいのつばさ」 | 1万4,354円 | 189万4,728円 | 200万円 | 105.5% |
(上記の表は2021年1月28日に作成)
あくまでも一般的なケースで算出した返戻率であり、開始期間や支払方法、受取時期は個々のケースによって異なります。より詳しく知りたい人は保険会社へ問い合わせてみましょう。
子どもの学資金を準備する手段としての学資保険は、開始年齢や保険期間・支払方法によって、返戻率を上げることが可能です。少しでも高い返戻率で将来の備えができるよう、計画性をもって加入しましょう。
また、学資保険には万が一の事態に対する保障を確保できるメリットもあります。返戻率だけでなく、その利点も踏まえた上で加入を検討してください。
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