- 「2分の1ルール」により、離婚時には専業主婦でも財産の2分の1をもらえる。
- 財産分与の「2分の1ルール」は、個別の事情により修正されることがある。
- 通常の清算的財産分与以外に、慰謝料的財産分与や扶養的財産分与が請求できるケースもある。
公開日:2018年11月29日
離婚するとき、特に女性側が気になるのは、「相手にどれだけ財産分与を請求できるのか?」ということではないでしょうか?財産分与には2分の1ルールというのがあり、夫婦で半分ずつ分けるのが原則というのはご存じの方も多いと思います。
しかし、財産分与では、2分の1ルールが適用されないケースもあります。2分の1ルールの例外となるケースについても知っておきましょう。
併せて、離婚において専業主婦が知っておきたい知識についてはこちらをご覧ください。
目次
財産分与とは、離婚した夫婦の一方が、他方に対して財産の分与を請求するものです。財産分与でどれだけ財産を請求できるかについては、原則として婚姻期間中に夫婦が築いた財産の2分の1となっています。
財産分与は、結婚している間に夫婦が築いた財産を離婚時に清算する手続きです。婚姻期間中に夫婦が築いた財産は、夫婦2人のものとされます。離婚すると夫婦ではなくなりますから、1人ずつの財産に分けなければなりません。
財産分与の対象になるのは、以下のものになります。
なお、親から相続した財産や親族から贈与を受けた財産などは「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象になりません。
財産分与について決めるときには、通常、2分の1ルールが適用されます。これは、離婚時には、財産分与の対象となる財産を、夫も妻も2分の1の割合で取得するという意味です。
専業主婦であっても、財産分与については2分の1の権利を持っています。
財産分与を公平に行うためには、「財産形成に対してどれだけ貢献したか」を基準にすべきです。収入がなかったら財産形成に貢献していないわけではありません。専業主婦は、収入がなくても、家事を行うことで夫の労働を支えています。つまり、専業主婦も間接的に財産形成に貢献しているのです。
財産分与の割合は、2分の1が絶対というわけではありません。財産分与割合は、個別の事情により修正されるべきものです。たとえば、以下のようなケースでは、財産分与割合は2分の1にならないことがあります。
夫が医師、会社経営者、その他の特殊な資格保持者で、それにより高収入を得ている場合には、妻の財産分与割合は2分の1未満になる可能性があります。このような場合には、本人の才能や努力で財産形成をしている部分が大きいからです。
夫が高収入で高額の資産を持っている場合、妻の財産分与割合が2分の1未満でも、妻は一般的な相場よりもかなり多くの財産をもらえます。そのため、2分の1ルールを厳密に適用する必要もないのです。
夫はギャンブルなどで浪費が激しかったけれど、妻は生活費を切り詰めコツコツと貯金をしていたような場合には、妻の財産分与割合は2分の1より多くなる可能性があります。
この場合、夫は財産を積極的に減らすような行為をしており、財産形成は主に妻が行ったと考えられるからです。
婚姻期間中、同居していない期間があった場合には、2分の1ルールが修正されることがあります。別居期間が長ければ、夫婦共同で財産を築いたと言える期間も短いと考えられるからです。
なお、離婚を前提とした別居の場合には、別居時以降築いた財産は、そもそも財産分与の対象になりません。
結婚前から持っていた株式を使って財産形成したような場合には、元々株式を持っていた側の財産分与割合が大きくなることがあります。特有財産を使って形成した財産も財産分与の対象になりますが、2分の1ルールは修正されることがあるということです。
夫婦が結婚前に夫婦財産契約を結んでいる場合には、2分の1ルールではなく、夫婦財産契約にもとづき財産分与が行われます。
夫婦財産契約は、婚姻中に形成したの財産の帰属先について、民法と異なるルールを定める夫婦間の契約です。夫婦財産契約は、婚姻届を出す前に締結しなければならず、結婚してから夫婦財産契約を結んでも無効とされます。
財産分与の割合については、当事者間で合意した内容が優先です。2分の1ルールが適用されるケースでも、必ず2分の1をもらわないといけないわけではありません。離婚時に夫婦間で一旦合意すれば、一方の割合が2分の1よりも少なくても、基本的には有効となります。
財産分与で2分の1ルールが適用されるのは、「清算的財産分与」になります。財産分与と言えば、通常は清算的財産分与です。しかし、「慰謝料的財産分与」や「扶養的財産分与」と呼ばれる財産分与もあります。
慰謝料的財産分与とは、慰謝料の意味合いを含んだ財産分与のことです。慰謝料的財産分与を行う場合には、2分の1ルールは適用されません。
財産分与は離婚時に存在する夫婦の財産を分ける手続きです。また、離婚原因を一方が作った場合には、他方から慰謝料を請求することができます。財産分与と慰謝料は本来別個に請求するものですが、これを一緒にし、慰謝料的財産分与として請求することも可能です。
慰謝料的財産分与を行う場合には、慰謝料を請求する側は、慰謝料分を考慮した割合で財産分与を請求できます。つまり、2分の1よりも大きい割合で請求できるということです。
扶養的財産分与とは、離婚後の一定期間、扶養の意味でお金を支払う形の財産分与になります。扶養的財産分与は、今ある財産を分けるものではなく、一方的にお金を払ってもらうものです。そのため、扶養的財産分与では、財産分与割合は問題になりません。
夫婦間にはお互いに扶養義務がありますが、離婚すれば扶養義務はなくなります。しかし、夫婦の一方の経済的自立が困難で、離婚すると生活に困窮してしまう可能性がある場合には、当面の間離婚後扶養を請求することが認められているのです。
たとえば、妻がまだ幼い子供を引き取る場合には、すぐに働けないことも多いでしょう。このような場合、今財産分与する財産がなくても、将来的に生活費を払ってもらう形の扶養的財産分与を夫に請求できます。
扶養的財産分与は、どんな場合でも認められるわけではありません。たとえ一方が働けなくても、清算的財産分与や慰謝料的財産分与で生活費を確保できるケースでは、扶養的財産分与を行う必要はないでしょう。
なお、扶養的財産分与が認められるのは、1~3年と考えられています。それを超える期間となると、離婚後扶養ではなく贈与とみなされてしまい、贈与税が課税されるリスクがあることも認識しておきましょう。
離婚時の財産分与の割合は、原則として2分の1となり、専業主婦でも夫婦の財産の半分を請求できます。ただし、例外的に2分の1より多くを請求できるケースもありますから、覚えておきましょう。
財産分与の際には、慰謝料分を含めた慰謝料的財産分与として、財産を多めにもらうことも可能です。また、今財産がないという場合でも、将来的に生活費を支払ってもらう形の扶養的財産分与が請求できることもあります。
離婚時に財産を折半するだけの財産分与では不安がある場合には、専門家に相談して検討するようにしましょう。
親権や養育費・慰謝料など、離婚問題でお悩みの場合は法律のプロに相談することをおすすめします。でも、どうやって法律のプロを探せばよいのか戸惑う方も多いはず。。
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