- 離婚協議書の目的は離婚後のトラブル予防。
- 離婚協議書は夫婦だけで作成し、それぞれが持っておけばOK。
- 離婚協議書の内容は夫婦の実情に合ったものにする。
- 離婚協議書を公正証書にすれば強制執行が可能になる。
公開日:2019年2月8日
離婚すると、夫婦だった相手も法律上他人になってしまいます。他人間でお金の支払いの約束をするときには、多くの人が契約書を作るでしょう。離婚するときにも同様、離婚協議書という契約書が必要です。
本記事では、離婚協議書について詳しく説明します。離婚協議書を作る意味を理解し、できるだけメリットになる形で離婚協議書を作成しましょう。
離婚協議書とは、協議離婚する夫婦の合意書です。作成が義務付けられているものではありませんが、協議離婚するなら必ず作っておいた方がよいでしょう。
離婚協議書は、契約書の一種です。契約書には将来のトラブルを予防するという意味がありますが、離婚協議書も離婚後のトラブルを防ぐ目的で作ります。
調停離婚や裁判離婚など、裁判所を通じて離婚した場合には、裁判所で離婚の条件を記した調停調書や判決書が作成されます。しかし、協議離婚は離婚届を出すだけで成立するので、そのままでは離婚の条件についての書面が残りません。
たとえば、離婚する際に月5万円の養育費を払ってもらう約束をしたとしても、口約束だけでは相手に「そんな約束はしていない」と言われてしまう可能性があります。離婚協議書を作成しておけば、約束した証拠を残すことができます。
離婚協議書は、離婚届を出す前に作るのが一般的ですが、離婚後に作成してもかまいません。ただし、養育費などは離婚後すぐに支払いが開始しますから、できるだけ早い時期に作成しましょう。
なお、離婚協議書はあくまで離婚を前提として作成するもので、「万一離婚することになった場合に備えて離婚協議書を作る」ということは、基本的にはできません。
協議離婚は、離婚届を出す時点で双方に離婚の意思がないと成立しないものです。また、民法には夫婦間契約は婚姻中いつでも一方から取り消しできる旨の規定もあります。すぐに離婚する気がない場合、離婚協議書を作っても、どちらかが気が変われば意味のないものになってしまいます。
離婚協議書には決まった書式などはありません。たくさん出回っているサンプルを参考に作ることもできます。
離婚協議書は、当事者である夫婦だけで作ることもできます。合意事項がそれほど複雑でない場合、インターネットや書籍のサンプルを参考にすれば、それほど難しくはないでしょう。
ただし、当事者だけで離婚協議書を作る場合、必要事項が漏れていたり、合意しても無効な事項を入れてしまったりしがちです。リスクを抑えるためには、行政書士や弁護士に依頼して離婚協議書を作ってもらった方がよいでしょう。
離婚協議書は手書きで作成しても問題ありません。ただし、手書きだと文字が判別しにくかったり、改ざんしやすくなってしまったりしますから、可能ならパソコンで作成した方がよいでしょう。なお、署名については手書きした方が安心です。印鑑も押しておきましょう。
作成した離婚協議書は、どこかに提出しなければならないわけではありません。同じものを2通作成し、各自1通ずつ持っておきましょう。相手に対して訴訟を起こす場合には、証拠として離婚協議書が必要です。
離婚協議書に記載すべき内容は、それぞれの夫婦によって違います。サンプルどおりにするのではなく、自分たちの実情に合ったものを作成するようにしましょう。
離婚協議書には、一般に次のような事項を記載します。
子供の親権者は離婚届に記載して指定するものですから、必ずしも離婚協議書に書かなくてもかまいません。ただし、養育費について記載する場合には、前提として親権者を書いておいた方がわかりやすくなります。
養育費は、通常は毎月払いの形で決めます。毎月の支払額のほか、支払日、支払方法(振込、持参など)、支払期間(成人まで、大学卒業までなど)についても記載します。
高校や大学の入学金などは、毎月の養育費と別に払ってもらうべきものなので、これについても取り決めして記載しておいた方がよいでしょう。
離婚後に慰謝料の支払いをする場合には、支払日や支払方法などを記載します。離婚前に慰謝料の支払いが完了している場合にも、支払いがあった証拠として書いておいた方が安心です。
財産分与について取り決めした場合には、その内容を書いておきます。家財道具まで全部書いているとキリがありません。離婚前に引き渡しをすませた上で、「残っている家財道具については所有権を放棄する」等の条項を入れておくとよいでしょう。
子供と別居親との面会交流について決めておきます。月1回などと決めてもかまいませんが、その都度話し合って決める形でもOKです。
当事者間でトラブルになって訴訟になった場合に備えて、裁判所の管轄を合意しておくことができます。
訴訟では原則的に被告の住所地を管轄する裁判所が管轄になりますが、当事者間で合意した裁判所(合意管轄)があればその裁判所で訴訟ができます。離婚後遠方に離れて住む場合には、合意管轄を定めておいた方がよいでしょう。
離婚協議書は、離婚後将来にわたってずっとトラブルが起こらないようにするためのものです。そのため、離婚協議書自体には有効期限はありません。なお、個別の条項について、支払期限などの期限を設けることはできます。
離婚協議書は、公正証書にすることができます。公正証書のメリットや公正証書にする手続きについて知っておきましょう。
契約書でお金の支払いについて定めた場合、約束した支払いがなかったら、支払う側に対して「約束どおりに払ってください」と言うことができます。しかし、通常の契約書があるだけでは、相手の財産を差押えしてお金を回収することはできません。
差押えなどの強制執行を可能にするには、契約書をもとに訴訟を起こし、判決などの「債務名義」を得る必要があります。
離婚協議書も契約書の一種ですから、通常の離婚協議書があるだけでは、強制執行はできません。離婚協議書は、約束をしたことの証明にはなりますが、約束を守らせる強制力まではないということです。
離婚協議書を公正証書にすれば、強制力をもたせることができます。公正証書は公証人が作成する文書で、私文書よりも証明力が高い公文書です。
公正証書はそれ自体が債務名義になるため、契約書を公正証書にしておけば、訴訟を経ずに強制執行ができます。たとえば、公正証書で定めた養育費の支払いがなされない場合、公正証書にもとづき相手の給料を差し押さえ、養育費を回収することが可能です。
通常の離婚協議書の場合、どこかに提出するわけではないので、紛失してしまうリスクがあります。公正証書は原本が公証役場に保管されるため、紛失しても再発行が可能です。約束した証拠が公的機関に残るという意味でも安心感があります。
離婚協議書を公正証書にするには、夫婦双方が公証役場に行き、合意内容を伝えた上で、本人確認や意思確認を受ける必要があります。一方の意思だけで公正証書を作ることはできません。
実際に公正証書を作成するときには、必要書類を揃え、公証人と事前打ち合わせした上で、予約しておいた日時に公証役場に出頭して調印するという流れになります。
行政書士や弁護士に公正証書作成のサポートを依頼すれば、合意内容のチェックをしてもらえるほか、必要書類の取り寄せや事前打ち合わせなどもすべて任せられるというメリットがあります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
離婚協議書には、離婚の際に夫婦間で合意した事項を記載します。離婚協議書を作るときには、将来どんなトラブルが起こり得るかを予想し、できるだけリスクを抑えられる形にしましょう。離婚協議書の内容については、専門家にチェックしてもらうのがおすすめです。
親権や養育費・慰謝料など、離婚問題でお悩みの場合は法律のプロに相談することをおすすめします。でも、どうやって法律のプロを探せばよいのか戸惑う方も多いはず。。
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