- 離婚公正証書は公証役場で公証人に作成してもらう。
- 養育費の取り決めを公正証書にしておけば、支払いがなかったときにすぐに強制執行の手続きができる。
- 離婚公正証書の作成費用は2~5万円程度。
公開日:2019年1月11日
協議離婚するときには、離婚協議書を作成しておくと安心です。養育費など金銭の支払いがある場合には、支払確保のために、離婚協議書を公正証書にしておきましょう。本記事では、離婚協議書を公正証書にする作り方、必要書類、費用などについて詳しく説明します。
離婚の際の手続き全般について知りたい方はこちらをご覧ください。
目次
離婚公正証書とは、離婚協議書を公正証書の形で作成したものです。公正証書には、通常の契約書や合意書にはない効力があります。
離婚協議書とは、協議離婚する際に夫婦間で取り決めした事項を記載した合意書です。
調停離婚など裁判所を通じて離婚する場合と違って、協議離婚は離婚届を出すだけでできるので、取り決め事項の書面が残りません。口約束で別れてしまうと後々トラブルになることがあるので、離婚協議書を作って残しておきましょう。
離婚協議書は、公正証書にすることもできます。公正証書とは、公証人に依頼して作成してもらう文書です。公証人とは、公証役場で文書の認証などの業務を行っている公務員になります。
公正証書を作成するときには、当事者が公証役場に出頭し、公証人に本人確認や意思確認を受けます。契約書や合意書を公正証書の形で作成すれば、偽造などを疑われる可能性もきわめて低くなるということです。
離婚公正証書は、離婚協議書に比べて証明力が高くなります。離婚の際に合意した条件を離婚公正証書にしておけば、「そんな約束はしていない」という言い訳ができなくなってしまいますから、相手に約束を守らせる上でも効果的です。
離婚協議書を公正証書にした方がよいのは、離婚後に養育費などのお金の支払い義務が残るケースです。というのも、公正証書には、強制執行認諾約款を付けることができるからです。
強制執行認諾約款とは、「本証書に記載の金銭債務の履行をしないときは、強制執行を受けることを認諾する」といった条項です。公正証書に強制執行認諾約款を入れておけば、裁判などを経ることなく、公正証書にもとづき強制執行ができます。
慰謝料などは離婚時に一括払いすることも多いですが、養育費はほとんどの場合、長期間にわたって支払いを続けることになります。途中で支払いがされなくなるリスクも高いですから、公正証書を作成し、強制執行に備えるのが安心です。
協議離婚で公正証書を作成するまでの大まかな流れは、次のようになります。
夫婦で離婚協議をし、離婚の条件及び公正証書作成について合意をします。
公証役場は全国に約300か所ありますが、どこに依頼してもかまいません。公証役場がどこにあるかは、日本公証人連合会のホームページで検索できます。
離婚公正証書に記載する内容について、公証人と事前に打ち合わせをします。また、公証役場に行って公正証書を作成する日時を決定します。
あらかじめ予約した日時に夫婦で公証役場に行き、内容を確認の上、公正証書の原本に署名押印します。
公証役場で離婚公正証書を作成してもらう際には、次のような必要書類を提出しなければなりません。
離婚前の夫婦は同じ戸籍に入っているので1通でかまいません。離婚届を出した後に公正証書を作成する場合には、戸籍は別になっているため、それぞれの戸籍謄本が必要です。
公正証書作成時には、本人確認のため、身分証明書の提示が求められます。運転免許証があれば、免許証を出しましょう。
免許証がない場合には、顔写真入りのパスポートやマイナンバーカードなどを提示します。身分証明書がなければ、印鑑証明書と実印をセットにして本人確認してもらいます。
なお、公正証書作成当日には、認印も持参する必要があります。
当事者本人が公証役場に出頭できない場合には、代理人が出頭することも可能です。ただし、1人が夫婦双方の代理人を兼ねることはできません。
代理人が出頭する場合には、委任状、本人の印鑑証明書、代理人の身分証明書が必要です。
公正証書の内容によって、資料の提出を求められることがあります。
たとえば、不動産の財産分与がある場合には、登記事項証明書と固定資産評価証明書(または固定資産税納税通知書の課税明細)が必要です。公正証書で年金分割の合意をする場合には、年金分割のための情報通知書や基礎年金番号がわかる書類を提出します。
公正証書を作成するには、費用がかかります。公正証書作成費用の目安を知っておきましょう。
公証役場で公正証書を作成してもらうときには、公証人手数料を支払う必要があります。公証人手数料の主なものは、公正証書作成手数料です。その他に、正本・謄本作成費用(用紙代)や送達費用(公正証書の送付手続きにかかる費用)などが加算されます。
目的物の価額(公正証書に記載した支払金額や財産額など)によって変わります。
目的物の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円超200万円以下 | 7,000円 |
200万円超500万円以下 | 11,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円超3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円超5,000万円以下 | 29,000円 |
(以降略)
公正証書作成手数料は、養育費、慰謝料、財産分与などの種類別に計算し、合計します。養育費については、10年を超える場合には10年で計算します。
離婚公正証書作成時に支払う公証人手数料は、一般には2~5万円程度です。公正証書作成を行政書士、司法書士、弁護士等の専門家に依頼した場合には、別途専門家の報酬が発生します。
離婚公正証書には、主に次のような事項を記載します。なお、通常は夫を「甲」、妻を「乙」、子を「丙」「丁」などとします。
離婚の合意をすること及び離婚届の提出方法などを記載します。
養育費の金額、支払期間、支払方法を記載します。振込の場合には、振込手数料の負担についても書きます。
財産分与がある場合には、内容を記載します。不動産の名義変更が必要になるケースでは、登記費用の負担についても書いておきます。
慰謝料の支払いがあるときには、支払方法等を記載します。分割払いの場合には、強制執行に備えるため、期限の利益喪失条項を入れておきます。
子供がいる場合には、別居する親との面会交流についても定めておきます。
公正証書に記載した以外の債権・債務がないことを明確にする清算条項を入れておくことができます。清算条項を入れた場合には、双方とも、追加の請求などはできなくなります。
協議離婚で養育費の支払いがある場合には、公正証書を作成しておきましょう。公正証書作成には手間や費用がかかりますが、支払いを確保するには有効な手段です。
公正証書作成は、行政書士等の専門家に依頼できます。専門家に依頼した場合には、公正証書原案の作成や必要書類の取り寄せ、公証人との打ち合わせなどを任せられます。
親権や養育費・慰謝料など、離婚問題でお悩みの場合は法律のプロに相談することをおすすめします。でも、どうやって法律のプロを探せばよいのか戸惑う方も多いはず。。
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