- 査定額は不動産業者によっても違うため複数の業者に査定を依頼する。
- 査定額が一番高い業者がいいとは限らない。
- 査定前のリフォームやハウスクリーニングは不要。
- 広い視野と余裕を持って計画的に行うことが大切。
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なんらかの事情でマンションを手放す場合、査定によって売り出し価格を決めることになります。この記事ではマンション査定額に影響するポイントとマンション査定を行う際の注意点について解説します。
査定のポイントは資産価値の高いマンションを選ぶ際のポイントとも重なるため、これからマンション購入しようという方も知っておいて損はありません。
マンションの売却は通常不動産業者を介して行われ、不動産業者は売却価格を決定するためにマンションの査定を行います。この査定は基本的に無料です。
査定額は、これぐらいなら売れると不動産業者が見積もった金額であり、その業者の得意・不得意や、見込み客の有無などの要因が査定額に影響します。そのため1社の査定額は目安とはなるものの、絶対的なものではありません。一般的な相場を知るには、複数の不動産業者に査定を依頼し比較することがポイントです。
マンションの査定では主に取引事例比較法が用いられており、実際に物件を確認せず物件の情報や周辺相場などから概算額を算出する「机上査定」と、実際に現地で物件を確認して行う「訪問査定」があります。訪問査定は机上査定に比べ手間と時間がかかりますが、より正確な査定額が得られます。
取引事例比較法:物件の立地や築年数、床面積、構造、間取りなどが類似する物件の過去の取引事例(売買価格)を参考に不動産価格を算出する方法
売却方法には大きく、不動産業者が仲介役となって第三者に売却する「仲介」方式と、不動産業者自らが買主となる「買取」方式の2つがあります。それぞれの方式には以下のような違いがあり、希望する売却時期や物件の状態などに応じて売却方式を選択します。
仲介 | 買取 | |
---|---|---|
買主 | 第三者の個人など | 不動産業者 |
売却までの期間 | 買い手を探す必要があり、売却までに時間がかかる。数ヶ月以上かかることも多い。 | 買い手を探す必要がなく、売却価格に納得できれば比較的短期間で売却できる。 |
売却価格 | 相場に近い価格で売却できる可能性が高い。 | 不動産業者が再販のためのコストやリスクを負うため、相場よりも売却価格は低くなりやすい。相場の8割程度が目安となりますが、条件によっては相場価格と同程度で買い取ってもらえることもあります。 |
メリット | ・売却価格が高め | ・短期間で売れる ・仲介手数料が不要 ・瑕疵担保責任を負わない ・売り出していることが公にならない |
デメリット | ・売却までに時間がかかる ・仲介手数料やがかかる ・リフォーム費用などがかかるケースもある ・瑕疵担保責任を負う ・売り出していることが公になる ・内覧などの対応が必要(居住中に売り出す場合) |
・売却価格が低め ・ある程度資金力のある業者などに限られる |
瑕疵担保責任:売却したマンションに、隠れた瑕疵(外見ではわからない欠陥)があった場合に売主が負う責任のこと。買主は売主に契約解除や損害賠償を請求できる。
マンションの査定額には、次のようなポイントが影響します。
立地はマンションの査定額に最も影響するポイントです。駅からの距離が近いほうが査定額は高く、築年数による価格の下落も小さい傾向があります。ただし郊外型のファミリー向けマンションなど、周辺環境の良さが重視されるケースもあります。
最寄り駅からの距離 | 間取り | 平均取引価格 | 平均面積 | 平均㎡単価 | 単価比 |
---|---|---|---|---|---|
1〜5分 | 3LDK | 4,486万円 | 70.4㎡ | 61.3万円 | 100.0% |
6〜10分 | 4,204万円 | 70.8㎡ | 57.2万円 | 93.3% | |
11〜15分 | 3,454万円 | 69.5㎡ | 48.4万円 | 79.0% | |
16分 | 2,825万円 | 69.7㎡ | 40.0万円 | 65.3% |
出典:「駅からの距離と売却相場の関係性」(三菱UFJ不動産販売)/原典:国土交通省「不動産取引価格情報」データベースより算出・取引時期:2012年~2017年3月)
周辺にスーパーやコンビニなどの買い物施設、学校・保育園などの教育施設、医療機関などが充実していれば、査定額にプラスとなります。
周辺に緑地や公園などがあるマンションは特にファミリー層に好まれ、査定額にプラスとなります。幹線道路に近い物件は、アクセスの面では査定にプラスですが、騒音や排ガスなどの程度によってマイナス要因ともなります。
マンションでは眺望などの面で上層階ほど査定額が高くなる傾向があります。ただしエレベーターの設置されていないマンションでは、逆に階数が上がるほど査定にはマイナスです。また1階でも専用庭が付いている場合は査定にプラスです。
物件による差はありますが、通常1日を通して日当たりのよい南向き物件(南側に開口部・バルコニーがある物件)の査定額が最も高くなります。方角が査定額へ与える影響としては、おおよそ以下のような傾向があります。
(低評価) 北向き<西向き<東向き<南向き (高評価)
日当たりや風通しがよく、隣室の騒音の影響を受けにくい角部屋の査定額が高くなる傾向があります。
需要の多い間取り、広さの物件の査定額が高くなります。たとえば駅から離れていても、周辺環境がよくゆったりとした間取りのマンションはファミリー層の需要が見込めます。一方同じ立地でもワンルーム〜1LDK程度のコンパクトなマンションの需要は少なく、査定額も低くなりがちです。
段差の有無(バリアフリー)、水回りの水漏れや浴槽などにひび割れがないかなどは査定に影響します。ただし壁紙など表面的な劣化は修繕を前提に考えるため、影響はほとんどありません。
築浅であることのほか、新耐震基準を満たしているかが査定のポイントです。現行の新耐震基準を満たさないマンションは、耐震性が低いことに加え、住宅ローン控除が適用されないため買い手がつきにくく、査定額は低くなります。
1981年5月以前に建築確認を受け旧耐震基準で建設されたマンションは注意が必要です(旧耐震基準で建設されたマンションでも耐震補強工事によって新耐震基準を満たしていればOK)。
耐震性の目安 | |
---|---|
旧耐震基準 (〜1981/5/31) |
震度5程度の地震で倒壊しない |
新耐震基準 (1981/6/1〜) |
震度6強〜7の地震でもほとんど損傷しない |
しっかりした構造のマンションは査定にもプラスです。またリノベーションしやすい構造か、はりの位置や天井高なども査定に影響します。
(評価低) 鉄骨造<鉄筋コンクリート造<鉄骨鉄筋コンクリート造 (評価高)
耐震偽装や手抜き工事などは度々問題となっており、施工業者や販売会社がしっかりした会社であるかは査定のポイントとなります。
マンションを長持ちさせるためには、適切な管理・修繕が欠かせません。管理組合や管理規約がしっかりしているか、長期的な修繕計画が定められており、それに沿ったメンテナンス行われているか、修繕積立金が不足していないかなどが査定のポイントです。共用部分の天井や壁のひび割れ、ゴミ置き場の清掃状況なども、管理が行き届いているかを確認するためにチェックされます。
オートロックや監視カメラなどのセキュリティ設備をはじめ、宅配ボックスやキッズルーム、コミュニティスペース、ゲストルーム、ジムといった共用部分が充実していると査定にプラスです。ただし、共用部分の維持費(管理費や固定資産税)の負担が大きいとマイナスとなる可能性もあります。
駐車場の有無や料金も査定のポイントです。マンションの駐車場は、駐車場の所有権が建物部分とセットになっている「所有権分譲型」と駐車場は共用部分でその専用使用権を持つ「専用使用権分譲型」があります。専用使用権は売却の際に消滅してしまうため、所有権分譲型のほうが査定額は高くなります。
すでにマンションを保有している場合には、立地などは変えることのできない項目もあります。しかし、以下のような点は注意することで、査定アップ(よりよい条件での売却)につながる可能性があります。
査定する不動産業者によってマンションの査定額は大きく違うこともあり、複数の不動産業者に査定を依頼し査定結果を比較するのが基本です。
不動産業者には得意とするエリアや分野(マンション・戸建・賃貸・土地活用など)があります。最初からあなたのエリアでマンション販売を得意とする業者を選べればいいですが、その判断はなかなか難しいもの。また不動産業者がちょうど条件の近いマンションを探しており、希望の条件でスムーズに売れるケースもあります。
相場を知るためにも複数の業者の査定結果を比較することは大切です。
不動産業者が提示する査定額は絶対的なものではなく、その業者が仲介した場合に買い手が見つかると“見込まれる金額”です。
業者は仲介を依頼してもらわなければ利益が得られません。そのため、他社をより高くなるよう実際よりも高い査定額を提示する業者もいます。そのような業者に仲介を依頼してもその金額では売れる可能性は低く、結局売却価格を下げざるを得なくなる可能性が高くなります。
他社に比べ高い査定額を出した業者がある場合、その査定額の根拠を確認することが大切です。すでに見込み客がいるなど、その業者独自の要因があって高い査定となっているのなら依頼を検討すべきです。しかし根拠が曖昧であれば、信頼性という面でもそのような業者へ依頼するのは見送るのが賢明です。
希望する条件(時期・価格)でマンションを売れるかは、募集活動によって大きく左右されます。査定額のほか、募集計画や対応などのしっかりした業者を選ぶことも大切です。
かなり古いマンションでも、リフォームやリノベーションをすれば内装や設備はまるで新築のように綺麗になります。しかしリフォームにかけた費用以上に査定額(売却額)が上がる保証はありません。
最近では建物の枠組みだけ残し、内装や設備をすべて自分好みにリノベーションする「スケルトン(リフォーム/リノベーション)」なども人気で、せっかくのリフォームが無駄になってしまうこともあります。
査定前に自分の判断でリフォームを行うのではなく、訪問査定の際に不動産業者に相談してから判断するようにしましょう。
不動産業者の査定は表面的な綺麗さよりも、構造や設備など根本的な部分や目に見えない部分に重点が置かれます。自分で掃除するのはいいですが、査定前に業者に依頼してまでハウスクリーニングを行う必要はありません。
ただしマンションが売り出され、購入希望者が内覧を行う前までにはしっかり掃除しておく必要があります。キッチン、浴室などの水回りは気にする人が多く、重点的に掃除しておくのが望ましいです。また設備の破損などがある場合には、不動産業者と相談の上必要に応じて修繕を行います。
モノが多い部屋は汚い印象を与えるため、片付けやモノを処分しておくことは掃除以上に重要なポイントです。マンションを売却するタイミングは不要なものを処分するいい機会。思い切って断捨離してしまいましょう。
よりよい条件でマンション売却するには、複数の不動産業者に査定を依頼し比較することがポイントです。また希望する売却時期が迫っていると焦りから妥協にもつながります。マンションが売れるまでの期間はおよそ3〜6ヵ月、場合によってはそれ以上。マンションの査定・売却は広い視野と余裕を持って計画的行うことが大切です。