- 過払い金請求をすれば、払い過ぎた利息が戻ってくる。
- 過払い金請求をする前に取引履歴を取り寄せて過払い金額を確認する必要がある。
- 過払い金請求しても、過払い金の全額を返金してもらえるわけではない。
公開日:2019年8月2日
弁護士事務所や司法書士事務所のCMや広告でよく見かける「過払い金請求」。過払い金請求をすれば、お金が戻ってくると聞いて、気になっている人も多いのではないでしょうか?
本記事では、過払い金請求について基本的な内容をご説明します。「過払い金があるかも」という方は、過払い金の取り戻しの際の参考にしてください。
目次
「過払い金請求」とは、過払い金返還請求のことです。まずは、過払い金請求について、どういう意味があるのかを知っておきましょう。
過払い金とは、利息制限法で規制されている上限を超えて貸金業者に払ってしまった、払いすぎの利息のことです。過払い利息ということもあります。
他人にお金を貸すときには利息を請求できますが、利息はいくらでも徴収できるわけではありません。利息制限法という法律の規制があり、その範囲内の利息でなければ無効となってしまいます。
しかし、2000年代の初め頃まで、消費者金融をはじめとする貸金業者では、利息制限法を超える利息を徴収していました。
というのも、利息制限法の制限利率を超えていても明確に違法とは言えない「グレーゾーン金利」があったからです。実際に、多くの貸金業者では、グレーゾーン金利が設定されていました。
過払い金について、詳しくは以下の記事をご参照ください。
2006年の最高裁判決で、貸金業者が利息制限法を超えて徴収した利息は無効と判断され、払いすぎの利息は返還を請求できることが明らかになりました。これにより、消費者金融などの貸金業者に対し、過払い金請求を行う人が急増したのです。
過払い金請求とは、貸金業者に対し、払いすぎの利息を返還してもらうよう請求することです。過払い金請求は、民法上の不当利得返還請求に該当します。
民法には、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」(703条)と定められています。
ここでいう「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって受けた利益」が不当利得です。不当利得を受けて他人に損失を与えた者は、民法上、返還義務を負います。
払いすぎた利息には、法律上の原因はありません。過払い金は不当利得ということになり、過払い金請求という不当利得返還請求ができるのです。
不当利得返還請求権には、10年という時効があります。過払い金請求ができるのは、最後に取引した日から10年以内です。過払い金が発生していても、10年経過していれば、取り戻しはできません。
たとえば、最初に借入した日が15年前でも、最後に取引した日が10年以内であれば過払い金請求できる可能性があります。
過払い金請求を考えたときには、時効になっていないかどうかをまず確認しておきましょう。
不当利得返還請求をする場合、決まった方式はありません。過払い金請求をするときには、口頭で行っても書面で行ってもよいということです。ただし、口頭で請求しても証拠が残りませんから、少なくとも書面で過払い金請求すべきなのは言うまでもありません。
過払い金請求するには、必ず裁判を起こす必要はないので、自分ですることもできます。しかし、過払い金請求は弁護士等の専門家に依頼するのがおすすめです。
貸金業者に対して過払い金請求を行っても、過払い金の全額を返してくれることはほとんどありません。請求があった過払い金をすべて返していたのでは、貸金業者の経営も破綻してしまうからです。
実際、過払い金請求の急増で、倒産や経営難に追い込まれた消費者金融が多数あるのはご存じの方も多いでしょう。
過払い金をどれくらい返してもらえるかは、貸金業者との交渉で決まります。自分で交渉すれば、貸金業者に提示された額が妥当かどうかがわからず、そのまま応じてしまいかねません。
過払い金請求を多数扱っている弁護士等は、各業者の過払い金の返還率を把握しています。弁護士に頼めば、少ない額で妥協せず強気で交渉を行ってもらえますから、返還額が増える可能性があります。
貸金業者との任意の交渉で提示された過払い金の返還額が少なく、どうしても納得がいかない場合には、裁判を起こす方法があります。弁護士に過払い金請求を依頼した場合には、裁判まで対応してもらえます。
ただし、裁判を起こせば、より多くの弁護士費用がかかってしまいます。弁護士費用を払っても裁判をした方が回収できる額が増えそうな場合にのみ、裁判を検討した方がよいでしょう。
なお、弁護士に依頼する際には相談料無料で過払い金請求に強いイストワール法律事務所がおすすめです。
今は借金を返し終わっているけれど、過去に消費者金融などでお金を借りたことがあるという人もいるでしょう。完済後の借金でも、利息制限法の上限を超える金利で契約していれば、お金を取り戻せる可能性があります。
過払い金が発生しているかどうかは、貸金業者から取引履歴を取り寄せれば確認できます。取引履歴とは、借入と返済の一覧表です。貸金業者は、債務者から取引履歴の開示請求があった場合には、開示を拒否できませんから、堂々と請求しましょう。
取引履歴は10年間保存が義務付けられているので、借金を完済している場合でも、10年以内であれば、取引履歴を開示してもらえるはずです。
過払い金請求を弁護士等に依頼すれば弁護士等が取引履歴も取り寄せてくれますが、自分で取り寄せてもかまいません。
過払い金請求をする場合には、弁護士または司法書士に依頼するのが一般的です。完済後の過払い金請求では、戻ってきた過払い金から弁護士等の費用を払えるので、お金を持ち出す必要がありません。
完済後の過払い金請求の具体的な流れは、次のようになります。
過払い金請求についての相談は、通常は初回無料で受け付けてもらえます。既に取引履歴を取り寄せている場合には、相談時に持参しましょう。
弁護士の業務範囲は広いので、すべての弁護士が過払い金請求に詳しいわけではありません。また、司法書士については簡易裁判所代理権のある認定司法書士のみ相談可能です。
ホームページ等を確認し、過払い金請求の実績がある評判の良い事務所に相談しましょう。
過去に消費者金融と取引していたけれど、過払い金があるかどうかわからないという場合、事務所によっては無料調査を行ってもらえることもあります。
相談後、過払い金請求を正式に依頼する場合には、弁護士等との間で委任契約を結びます。
取引履歴をまだ入手していない場合には、弁護士等が代理人となった旨を貸金業者に知らせる受任通知書を送ると同時に、取引履歴の開示を請求します。
貸金業者から取り寄せた取引履歴をもとに、利息制限法の制限利率で利息を計算し直す「引き直し計算」を行います。引き直し計算の結果で、正確な過払い金額がわかります。
過払い金額が確定したら、貸金業者あてに過払い金請求書を送って請求します。
過払い金請求書を送っても、すぐに過払い金の全額を返してもらえるわけではありません。少しでも多く返してもらえるよう、貸金業者と文書や電話で交渉する必要があります。
交渉が成立したら、約束した額を振込等で返金してもらえます。交渉で納得のいく返金額の提示が受けられない場合には、裁判(訴訟)を起こす選択肢もあります。
払いすぎの利息があるけれど、まだ借金自体を返し終わっていないということもあると思います。借金返済中でも、過払い金を返してもらうことは可能です。
借金返済中でも、過払い金は発生します。利息制限法の制限利率を超える金利が設定されている場合、毎月利息を払いすぎていることになるからです。
貸金業者から借りたお金は、毎月払いで返済します。毎月の返済額は、利息に優先的に充てられ、残りが元本の返済に充てられます。
利息は契約上の金利(実質年率)をもとに日割り計算するので、毎月支払う利息の計算式は次のとおりです。
たとえば、借入残高が50万円で契約金利が20%の場合、1か月(30日)で発生する利息は次のようになります。
月1万円返済したとすると、利息の8,219円を引いた1,781円が元本の返済に充てられているということです。
しかし、借入残高が50万円の場合には、利息制限法の制限利率は18%です。金利18%で計算した利息額は、
となります。
つまり、8,219-7,397=822(円)の利息を払いすぎており、これが過払い金になります。
返済中に払いすぎた利息は、本来元本に充てられるはずのものなので、元本に充当していく形で処理します。
上の例では、払いすぎている822円が元本に回ることになり、元本を2,603円返済したことになります。このようにして、元本の返済額を増やしていけば、最終的に元本が残るケースと借金が完済になるケースに分かれます。
返済中の過払い金を残りの借金の元本に充当しても借金がまだ残る場合には、残りの借金の支払い方法について貸金業者と話し合って決めます。これは、債務整理のうちの任意整理の手続きになります。
任意整理については、以下の記事をご参照ください。
返済中の過払い金を借金の元本に充当すれば、借金が完済になることがあります。この場合には、借金の支払い義務は既になくなっていることになります。オーバーして払っているお金については、貸金業者に返還を請求できます。
過払い金請求すれば、お金が戻ってくるというメリットがあります。しかし、過払い金にはデメリットもあることを知っておきましょう。
返済中の過払い金請求には、ブラックリストに載るという問題があります。ブラックリストとは、信用情報機関に事故情報が登録されることを意味します。事故情報とは、延滞、強制解約、債務整理などのネガティブな情報です。
クレジットやローンなどを含めた借入の申し込みの際には、信用情報機関に登録されている情報の照会が必ず行われます。事故情報が登録されていれば、借入の審査には通過できません。
返済中に過払い金請求をして借金が残るケースについては、任意整理と同じですから、当然に事故情報となります。
一方、過払い金で借金が完済になるケースでは、事故情報にはなりません。本来払うべきものはすべて払っていることになり、金融事故とはいえないからです。ただし、手続きが完了するまで、一時的に事故情報が登録されてしまうことはあります。
過払い金請求をした場合、その後同じ会社のカードを作れなくなることがあります。
任意整理に該当する場合を除き、過払い金請求をしても信用情報に残ることはありません。しかし、過払い金請求をした会社には、ずっと記録が残ることになります。
過払い金請求は当然の権利行使とはいえ、貸金業者にとっては過払い金請求をするような人はあまり嬉しくない顧客です。そのため、同じ会社からは新規のカードやローンの申し込みを断られてしまう可能性があります。
過払い金とは、消費者金融などの貸金業者で借りた借金の返済時に、払いすぎてしまった利息です。払いすぎの利息は、貸金業者の不当利得なので、返還を請求できます。
過払い金請求をしても、過払い金の全額を返してもらえるわけではありません。返済中に過払い金請求をすれば、ブラックリストに載る可能性もあります。
過払い金があるかどうかわからない場合や、過払い金請求を迷っている場合には、弁護士等に相談して決めるのがおすすめです。
自分で交渉すると不利になってしまう可能性もある過払い金請求は、弁護士または司法書士に相談するのが賢明です。まずは相談料無料で過払い金請求に強い弁護士事務所に相談してみるのがいいでしょう。