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年末調整と源泉徴収票の関係とは?知っておくべき基礎知識をFPが解説!

年末調整と源泉徴収票の関係とは?知っておくべき基礎知識をFPが解説!

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竹国 弘城

竹国 弘城

RAPPORT Consulting Office 代表、1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP(R)、証券外務員一種

証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。ミニマリストでもあり、ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP(R)。

この記事のポイント

  • 年末調整は源泉徴収税額と本来の税金額を調整する仕組み。
  • 源泉徴収票は年末調整後の源泉徴収の内容が記載された結果表。
  • 年末調整後に確定申告が必要となる場合もある。
  • すべて丸投げにせず、確定申告や源泉徴収票の内容を理解しておくことが大切。

会社員や公務員、パートなど、雇用され給料をもらい働く人であれば毎年行っている「年末調整」。あなたはその仕組みについてちゃんと理解しているでしょうか。この記事では年末調整の仕組みや役割、会社から渡される源泉徴収票の内容などについて解説します。

なお、年末調整と確定申告の違いについて知りたい方は、こちらをご覧ください。

 

 

年末調整は源泉徴収税額と本来の税金額を調整する仕組み

年末調整は源泉徴収税額と本来の税金額を調整する仕組み

年末調整とは、給与から天引き(源泉徴収)された所得税額と本来支払うべき所得税額(復興特別所得税を含む、以下同様)との差額を調整するための仕組みです。

 

給与所得者の所得税は雇用主が代わりに申告・納税する

所得税は納税者自身が1年間の所得(収入)を計算し、自ら申告して税金を納める「確定申告方式」が原則です。

雇用主(会社など)があらかじめ給与から所得税を差し引き(源泉徴収)、年末調整をして代わりに申告・納税を行う仕組みは、その例外にあたります。

 

源泉徴収税額は概算額であり調整が必要

源泉徴収税額とは「社会保険料等控除後の給与等の金額と扶養家族の数」をもとにした所得税の概算額です。

その年に支払った生命保険料や地震保険料(生命保険料控除・地震保険料控除の対象)、個人で加入している個人型確定拠出年金の掛金(小規模企業共済掛金控除の対象)などの所得控除や、年内の給与の変動などは源泉徴収税額に反映されておらず、本来納税すべき所得税額とは違ってきます。

年末調整ではこの差額の調整を行い、本来納税すべき税額より多く徴収していれば還付(返金)を行い、徴収額が少なければ追加で徴収を行います。

 

年末調整までに「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した人が対象

年末調整の対象となるのは、年末調整を行う日までに「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した人です。

雇用主(会社等)には年末調整を行う義務がありますが、年末調整実施日までに給与所得者の扶養控除等申告書を提出しなかった従業員については、対象となりません。この場合、従業員は自ら確定申告を行い納税しなければなりません。

 

12月末に年末調整の対象となる人

給与所得者の扶養控除等申告書を提出し、年末まで引き続き勤務している人は、12月に行われる年末調整の対象となります。ただし、次のいずれかに該当する人は年末調整の対象となりません。

  • 1年間に支払うことが確定した給与総額が2,000万円を超える人
  • 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人

 

年の中途で行う年末調整の対象となる人

次のいずれかに該当した場合、そのタイミングで年末調整を行います。

  • 海外転勤などにより非居住者となった人
  • 死亡により退職した人
  • 心身の障害により退職し、再就職の見込みのない人
  • 12月に支給されるべき給与等の支払いを受けた後に退職した人
  • 本年中に支払いを受けるべき給与総額が103万円以下であり、その年に他の勤務先から給与支払いを受ける見込みのない人

 

年末調整と源泉徴収票との関係

年末調整と源泉徴収票との関係

年末調整を行なった会社は「源泉徴収票」を作成し、従業員に渡すことになっています。源泉徴収票とは、年末調整後の源泉徴収の内容が記載された「結果表」です。

源泉徴収票は、従業員への通知用1部のほか、税務署への提出用1部、市町村への提出用(給与支払報告書)2部の、合計4部が発行されます。

 

 

源泉徴収票の記載内容

源泉徴収票の記載内容

源泉徴収票に記載される内容で特に重要なのが次の4つです。

  • 支払金額
  • 給与所得控除後の金額
  • 所得控除の合計額
  • 源泉徴収税額

 

支払金額

「支払金額」欄には、給与、賞与(ボーナス)、時間外手当(残業代)、そのほか課税対象となる各種手当を含む、その年に支払うことが確定した額面支給額が記載されます。この支払金額には、通勤手当や出張手当など非課税となる手当は含まれていません。

 

給与所得控除後の金額

「給与所得控除後の金額」欄には、その名の通り「支払金額から給与所得を差し引いた金額」が記載されます。給与所得控除は従業員(給与所得者)の必要経費のような位置付けで、給与収入金額に応じて次のように計算されます。

給与等の収入金額
(給与所得源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
2017(平成29)年分〜2019(令和元)年分
180万円以下 収入金額×40%(最低65万円)
180万円超360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超1,000万円以下 収入金額×10%+120万円
1,000万円超 220万円(上限)
2020(令和2)年分
180万円以下 収入金額×40%−10万円(最低55万円)
180万円超360万円以下 収入金額×30%+8万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+44万円
660万円超850万円以下 収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

 

所得控除の合計額

「所得控除の合計額」欄には、給与所得控除を除く基礎控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除・障害者控除・寡婦(寡夫)控除・勤労学生控除・扶養控除・配偶者控除(配偶者特別控除)の10種類の所得控除の合計額が記載されます。

 

源泉徴収税額

「源泉徴収税額」欄には、年末調整後の源泉徴収額が記載されます。年末調整後の源泉徴収税額は、「給与所得控除後の金額」から「所得控除の合計額」を差し引いた「課税所得金額」に応じた所得税率をかけ、控除額を差し引いて計算できます。

  • 年末調整後の源泉徴収税額=(給与所得控除後の金額−所得控除の合計額)×所得税率−控除額
所得税額の速算表
課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 9万7,500円
330万円超695万円以下 20% 42万7,500円
695万円超900万円以下 23% 63万6,000円
900万円超1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

 

年途中で退職し再就職した場合に発行される源泉徴収票の記載内容

源泉徴収票は年途中に退職する際にも発行されますが、退職者が再就職する場合には年末調整は行われません。

源泉徴収票には「その年の退職までの期間の収入額」と、退職までに給与から天引きされた(概算額の)「源泉徴収税額」が記載されます

 

年末調整をしても確定申告が必要となる場合もある

年末調整をしても確定申告が必要となる場合もある

年末調整をした人であっても、場合によっては自分で改めて確定申告をする必要があります。次のような人は、原則として確定申告が必要となります。

 

 

年末調整をした人であって原則確定申告が必要となる人

  • 1カ所から給与の支払いを受けている人で、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額(*1)が20万円を超える人
  • 2カ所以上から給与の支払いを受けている人で主たる給与以外の給与収入金額と給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える人(*2)
  • 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
  • 源泉徴収のないものから給与等の支払いを受けている人
  • 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりの多くなる人

(*1)次の所得は給与所得・退職所得以外の所得に含みません。

1 上場株式等の配当等や非上場株式の少額配当等で確定申告をしないことを選択したもの

2 特定口座の源泉徴収選択口座内の上場株式等の譲渡による所得で、確定申告をしないことを選択したもの

3 特定公社債の利子で確定申告をしないことを選択したもの

4 源泉分離課税とされる預貯金や一般公社債等の利子等

5 源泉分離課税とされる抵当証券などの金融類似商品の収益

6 源泉分離課税とされる一時払養老保険の差益(保険期間等が5年以下のもの及び保険期間等が5年超で5年以内に解約されたもの

出典:国税庁

(*2)給与収入金額の合計から、雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下かつ、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下であれば申告は不要です。

 

もともと年末調整の対象とならないケース(再掲)

  • 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
  • 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人

 

医療費控除や寄附金控除などの適用を受けようとする人

14種類ある所得控除のうち「医療費控除」「寄附金控除」「雑損控除」は年末調整では控除されません。これらの控除を受けるには、年末調整を行なっていても確定申告を行う必要があります。

医療費控除
その年の1月1日から12月31日までの間に、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払い、その支払った医療費が一定額を超えるとき所得から一定額を控除できる。

寄附金控除
国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し「特定寄附金」を支出した場合に、所得から一定額を控除できる。

雑損控除
災害、盗難、横領により資産に損害を受けた場合などに、一定の金額が所得から控除できる。

 

住宅ローン控除の適用を受けようとする人

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けるためには、年末調整を行なっていても確定申告が必要です。

年末調整のみで申告・納税の完了する給与所得者については、1年目は確定申告が必要ですが、2年目以後は年末調整のみで控除を受けられます。この場合、税務署から送付される以下の書類を勤務先に提出することが条件です。

  • 年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書
  • 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書

 

確定申告をする場合はすべての所得を申告する必要あり

年末調整を行なった場合、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告は要しないとされています。

しかし確定申告を行うのであれば20万円以下の所得についても、すべて申告しなければなりません。所得の申告はせずに控除の申請だけ行うということはできません。

 

住民税に申告不要制度はない

住民税には確定申告不要とする制度はありません。そのため副業などで給与所得・退職所得以外に所得があれば、たとえ所得が20万円以下であってたとしても住民税の確定申告は必要です

通常の確定申告では所得税の申告が住民税の申告も兼ねているため、所得税の申告が不要であれば住民税も申告しなくてもよいと勘違いしてしまいがちです。気をつけましょう。

 

すべて丸投げはNG!年末調整・確定申告・源泉徴収票の内容を理解しておくことが大切

年末調整によって会社員の人などは確定申告をせず税金の申告と納税を済ませることができます。しかし代わりにやってもらえるからといって、自分の税金についてよく分からないままに、すべて丸投げしてしまうのは好ましくありません。

医療費控除などの適用を受けたり、副業や投資などで収入を得たりして確定申告が必要となったときに困らないよう、確定申告や源泉徴収票の内容を理解しておくことが大切です。

 

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