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投資信託の「基準価格(価額)は高い方がいい」は大間違い!

投資信託の「基準価格(価額)は高い方がいい」は大間違い!

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佐々木 裕平

佐々木 裕平

1級ファイナンシャルプランニング技能士

中立・公正な立場から金融リテラシーを発信します。お金の疑問を「なるほど!」に変えます。書籍「入門お金持ち生活のつくり方」(こう書房)にてAmazon kindle全体1位達成。【所属・学会・協会:金融教育研究所代表/行動経済学会/NPO法人日本FP協会】

この記事のポイント

  • 投資信託の基準価格とは「入れ物」の中に入っている金融商品のお値段のようなもの
  • 投資信託の運用に、基本的に基準価格は関係ないのでとらわれ過ぎに注意!
  • 投資信託の基準価格が安いのが割安で高いのが割高、ということではまったくない

この記事は約7分で読めます。

本記事では投資信託の基準価格(価額)とは?について記しています。

基準価格(価額):正確には投資信託の価格は基準価「額」(格ではなく額)なのですが、本記事では初心者の方にもわかりやすく、読みやすくするために、基準価格(価額)と表記させていただきます。

投資信託の基準価格(価額)とは、それぞれの投資信託のお値段のようなものです。

しばしば以下のよう誤解もあります。

  • 「基準価格(価額)が高い方がいい
  • 「基準価格(価額)が低いのが割安だ
  • 「基準価格(価額)が上がり続けているのが良い投資信託」

結論から言いますと、そのようなことはありません

やさしく・詳しく見ていきましょう。

 

投資信託の基準価格(価額)とは?どんな意味?上がる仕組みは?

投資信託の基準価格(価額)とは?どんな意味?上がる仕組みは?

そもそも、投資信託の基準価格(価額)とは、どのような意味なのでしょうか。

投資信託の基準価格(価額)とはいわゆるお値段のようなものです。

 

投資信託の基準価格(価額)とは、いわゆるお値段という意味

投資信託は「入れ物」のような存在です。

国内外の株式や債券などの金融商品を「入れ物」に入れて、みんなでお金を出し合って購入する、というようなイメージです。これによって、個人でも少額で分散投資ができやすくなります。

分散投資:投資対象を分散することで、分散していない状態よりもリスク(値動きの幅)を小さくすることが、誰にでも簡単にできる(自然に発生する)。

ということは、この「入れ物」に入っている株式や債券などの金融商品の値動きが変動すると、投資信託のお値段である基準価格(価額)も変動する、ということになります。

 

投資信託の基準価格(価額)はどう決まる?純資産総額÷口数=基準価格(価額)

投資信託の基準価格(価額)は基本的に純資産総額÷口数で算出されます。

純資産総額:投資信託のいまの価値のようなもの。「入れ物」に入っている金融商品の値動きによって変わる。

口数:投資信託の受益権の単位。株式でいうと、一株に当たるイメージ。

しかし、これは覚えなくても、理解していなくても特に運用や選び方には困りません。むしろ、これを難しく考えすぎて次のような誤解が生まれることの方が困ります。

  • 「基準価格(価額)が高い方がいい
  • 「基準価格(価額)が低いのが割安だ
  • 「基準価格(価額)が上がり続けているのが良い投資信託」

これらについては、後半で解説します。

ちなみに更新時間は当日ではなく、「入れ物」の中のお値段が確定した後日が一般的です。

 

投資信託の基準価格(価額)が上がる仕組み

投資信託の基準価格(価額)が上がる仕組みを身近な例で例えましょう。

例えば、異なるアイドルユニットのコンサートチケットをカゴ(入れ物)に複数入れて、ネットオークション(市場)に出したとします。このように「入れ物」に複数の商品が入っているのが投資信託のイメージです。

ネットオークション(市場)に公開されていますので、カゴ(入れ物)の価格は変動します。

価格が上がる仕組みを見てみましょう。

  • カゴ(入れ物)に入っているアイドルユニットの人気が全体的に上がれば値上がります(欲しい人が増えるため)。

下がる仕組みも単純です。

  • カゴ(入れ物)に入っているアイドルユニットの人気が全体的に下がれば、お値段は下がります(高いままだと買い手がつかないため)。
  • 仮に台風直撃(金融危機)などになればカゴ(入れ物)全体の価格は急落します。

このようなイメージで投資信託の基準価格(価額)も中身の金融商品の値動きにより、変動していきます。ただ、前述のように分散してありますので、単品のアイドルユニットのチケットだけの値動きよりはマイルドになります(これが分散によりリスクが下がる、ということです)。

 

投資信託の基準価格(価額)と手数料の関係は?

投資信託の基準価格(価額)は、前述のような仕組みで上がったり・下がったりします。

では、この基準価格(価額)からいつ手数料が引かれているのでしょうか?

手数料:ここでは「持っている間」ずっと引かれていく「信託報酬」と呼ばれる手数料のことです。

これは基準価格(価額)が更新されたときにはすでに引かれています。じつは、手数料がすでに引かれた状態が、私たちが目にする基準価格(価額)です。

多くの人は「持っている間」ずっとかかる手数料については「お知らせ」が来ないので無頓着です。しかし、手数料は運用成果に直接関わる重要な問題です。

ご興味のある方は以下の関連記事をご覧いただければ幸いです。

 

投資信託の基準価格(価額)は分配金(株の配当のようなもの)が出るとどうなる?

初心者の方に人気のある分配金ですが、これが出ると基準価格(価額)はどうなるのでしょうか?

分配金:投資信託から受け取れるお金のこと。普通と特別の2種類がある。

分配金が出ると、その分基準価格(価額)は下がります。つまり、その時点だけで見ると、損も得もしていません。

非常に乱暴な表現をしますと、次のような感じです。

  • Ⓐ分配金がない投資信:基準価格(価額)が1万円の場合→基準価格(価額)は1万円

そのままですね。今度は分配金が百円あった場合です。

  • Ⓑ分配金が百円の投資信託:基準価格(価額)が1万円の場合→分配後の基準価格(価額)は9900円 分配金は百円 合計は1万円

このようになり、分配金「なし・あり」で全体的な金額は、この時点では、どちらも同じです

 

投資信託は分配金が出ないタイプの方が、長期では基準価格(価額)は大きくなりやすい?

ただし、現実にはⒶの方が利益を内部で再投資するので雪だるま式にお金が大きくなりやすく、資産形成上は有利だと考えられます。

一方、Ⓑの分配金がある方は、現実には利益としての分配金には税金がおよそ2割かかりますので、現実にはおよそ9980円となります。複利効果も得られず資産形成には不利だと考えられます。

分配金が出ると、得をしたような気がするが、価値自体は得も損もしていない。税金と複利効果を考えると、分配金がないほうが有利。

※分配金(普通・特別)に関しましては、下記記事にやさしく・詳しく解説してあります。ご興味のある方は、ご覧いただければ幸いです。

 

投資信託の基準価格(価額)は分配金の利回りの高さに影響する?

また、分配金の利回りランキングなどで利回りが高いものが上位に上がることがあります。ただ、それらを見ると、基準価格(価額)が低いものが目立つことがあります

どうしてでしょうか?

じつは、分配金の利回りは、基準価格(価額)が下がるほどに大きく「見える」という特徴があります。一例を挙げてみましょう。

  • 基準価格(価額)が1万円で分配金が百円→表面的な利回りは1%
  • 基準価格(価額)が5千円で分配金が百円→表面的な利回りは2%

というように、基準価格(価額)が小さいほど、利回りが大きく「見える」ということになります。ただ、これは現実には、次第に私たちの出したお金が小さくなることを意味しています。

資産運用で、ご自分の資産を次第に大きくしたい方にとっては、分配金の利回りが大きく「見える」ものに固執するのはよくありません。

基準価格(価額)が小さくなるほど、分配金の利回りは大きく「見える」。しかし、特に意味はありません。

 

投資信託の運用に基準価格(価額)は関係ある?高い方がいい?どう生かす?

投資信託の運用に基準価格(価額)は関係ある?高い方がいい?どう生かす?

結論から言いますと、運用や投資信託選びにおいて基準価格(価額)はそれほど重要ではありません

それどころか投資信託の基準価格(価額)にとらわれ過ぎると、投資信託での資産運用が大変に間違った方向に行きやすくなります。

わかりやすく見てみましょう。

 

投資信託の基準価格(価額)と運用・選び方には基本的には関係がない

下の図表をご覧ください。※図表は筆者作成

時系列ごとに、同じ投資対象(例えば国内株式の市場平均に投資をする投資信託)が3種類あるとします。それぞれⒶⒷⒸです。

中身は同じですが、それぞれ誕生した(設定された)時期が違います。

そして、大切なのは、どれも基本的に1万円からスタートしている、ということです。

基準価格(価額)

 

投資信託の基準価格(価額)は高い方がいいは間違いな理由

上記の図を見ると、

  • 「基準価格(価額)が高い方がいい
  • 「基準価格(価額)が低いのが割安だ
  • 「基準価格(価額)が上がり続けているのが良い投資信託」

という考え方が誤りであることがわかります。わかりやすく解説します。

まず、Ⓐは景気・株価が上がり始めてから誕生したので1万円から始まります。

基準価格(価額)

その後、Ⓑは景気・株価がかなり良い時期に生まれたのですが、やはり1万円から始まります。このとき、Ⓐは2万円で、Ⓑは1万円です。この時に、

  • 「ⒶとⒷどちらがお買い得か?」
  • 「どちらが優れているか?」

と言われても、スタート時期が違うだけですので、「どっちでも一緒」と答えざるを得ません。しいて言えば手数料が低い方が「マシ」なだけです。

 

投資信託の基準価格(価額)が低いのが割安だ、も間違い

上記のような状況では、「いやいや、Ⓑの方が1万円で割安でしょう」と思われる人もいるかもしれません。

しかし、そのようなことはありません。同じ種類のリンゴを1個1万円で買うのと、リンゴ2個を2万円で買うのと同じです。どちらを選んでも本質的には同じのと、一緒のようなものです。

さらに時間が進み、景気が悪くなった場合に、Ⓒが生まれました。

Ⓒはやはり1万円から始まります。このとき、Ⓐは0.7万円でⒷは0.3万円に基準価格(価額)が下がっています。この時に

  • 「ⒶとⒷとⒸどれがお買い得か?」
  • 「どれが優れているか?」

と言われても、やはりスタート時期が異なるだけですので、「どれでも一緒」と答えざるを得ません。やはり、手数料が低い方が「マシ」なだけです。

基準価格(価額)

そして、上記のⒸが設定されたような時期になると、「基準価格(価額)が低いのが割安だ」と言っていた人々は

  • 「Ⓑは運用成績が悪いからダメだ。損切りだ
  • 「ⒶよりⒷより、Ⓒが良い。乗り換えだ

などと思うかもしれません(先ほどの「低いのが割安」とは矛盾していますが、しばしば人はそう思います)。しかし、同じ中身(この場合は国内株の市場平均)なのですからどちらでも同じです。

 

投資信託の基準価格(価額)が上がり続けることってある?

また、ⒶⒷⒸいずれを保有していたにせよ、投資対象の値動きが悪くなってくると、

  • 「基準価格(価額)が上がり続けているのが良い投資信託」

という勘違いもしがちです。

仮にⒹのような値動きをする投資信託(対象が債券など)があったとします。※図表は筆者作成

基準価格(価額)とは

このとき、Ⓓはやはり1万円から始まります。そして、債券価格が上がっている状態などでは2万円になったとします。

このとき、多くの人は近視眼的に「ⒶⒷⒸは下がっていてダメだが、Ⓓは上がり続けていて良い投資信託だ」と勘違いをしがちです。

その結果、「よし、ⒶⒷⒸを売って、調子の良いⒹに買い替えよう」などと思ってしまいがちです。

ただ、このような行動は単純に「高く買って・安く売る」という損をする行動を自ら実現しただけです。

このように言語や図表で解説すると誰でも「高く買って・安く売る」のは「変な行動」だと思いますが、実際には「変な行動」に気が付かずに真面目に「変な行動」をしてしまうのが、普通の状態かもしれません。要注意です。

 

投資信託の「基準価格(価額)は高い方がいい」は大間違い:まとめ

  • 投資信託の基準価格(価額)とは「入れ物」の中に入っている金融商品のお値段のようなもの
  • 投資信託の運用に、基本的に基準価格(価額)は関係ないのでとらわれ過ぎに注意!
  • 投資信託の基準価格(価額)が「安いのが割安」で「高いのが割高」ということではまったくない

本記事では投資信託の基準価格(価額)について見てまいりました。本記事内で触れましたように、投資信託の基準価格(価額)にはそれほど大きな意味はありません

投資信託の運用で大切なのは、長期×分散×積み立て投資です。安い時ほど、損切りせずに「安く買う」ことが最終的に「高く売る(より現実的には取り崩すというニュアンスになるかと思います)」ことにつながるのではないでしょうか。

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