- サブリースは毎月一定の保証家賃が保証されるが、金額については家賃相場の90%程度になる。
- サブリースにも借地借家法が適用されて不動産会社の権利が強くなるため、場合によっては解除を拒否されるリスクがある。
- サブリースは不動産会社の信用度がとても重要なので、できるだけ実績のある大手企業を選んだ方がリスク回避になる。
公開日:2019年12月12日
不動産投資に興味はあるけれど、空室リスクが怖くて尻込みをしている人は多いのではないでしょうか。
サブリースを利用すれば空室リスクを回避できるともいわれていますが、実際のところはいいことばかりではなくデメリットもあるようです。
そこで本記事では、サブリース契約のメリットやデメリットについて解説します。
目次
サブリースとは不動産会社がアパートやマンションなどの賃貸物件を借り上げて、毎月一定の家賃(保証家賃)をオーナーに対して保証する契約形態のことをいいます。
不動産会社が直接借り上げているため、契約期間中は空室リスクがなくなり常に一定の家賃収入が保証されることから家賃保証ともいわれ、新築など比較的築年数の浅い物件で利用可能なケースが多いです。
サブリース契約の期間は不動産会社によって異なり、短いものでは1年、長いものでは30年などさまざまです。契約期間中は一定の家賃が保証されることになりますが、常に同じ金額が保証されるわけではありません。
例えば30年一括借り上げなどと宣伝している不動産会社でも、毎月の保証家賃については1年ごとに見直しと規定されているケースが多いため、実際にサブリース契約を締結する際には契約期間だけでなく保証家賃の見直し期間についても必ず確認が必要です。
サブリースによって保証される保証家賃については、不動産会社によって異なりますが概ね近隣相場家賃の90%前後とするのが一般的です。
例えば家賃80,000円が相場だとすると保証家賃は72,000円となります。
オーナーとしては毎月の手取り額が直接賃借人に賃貸する場合の90%になりますが、その分空室期間が発生しないため毎月のキャッシュフローが安定するというメリットがあるのです。
特にローンを組んでアパートやマンションを購入する人については、家賃収入をそのままローン返済に充当する計画を立てるため、万が一空室が発生するとキャッシュフローが回らなくなりローンが返済できなくなるリスクがあります。
そこでサブリースを利用すれば、毎月の手取り額は減るものの空室リスクは解消できるので、ローン返済を心配することなく安心して賃貸経営ができるのです。
サブリースを利用すると、具体的にオーナーにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
先ほども少し触れましたが、サブリースを利用すると毎月の手取り額自体は90%程度になるものの、不動産投資最大のリスクといわれる空室リスクに悩まされる心配がなくなります。
また、家賃滞納リスクもなくなるため毎月のキャッシュフローが安定し資金計画が組みやすくなります。
物件を購入する際にサブリース契約を結ぶと、サブリース契約期間中の収支についてはほぼ確定的にシミュレーションできるので投資全体の安定性が高まるのです。
サブリースと管理委託どっちの方が得かという質問をよくされるのですが、損得だけで考えるとどちらとは言い切れません。
管理委託だとしても最初の入居者が10年以上住み続けてくれることもありますし、たった1年で退去してしまうこともあり予測することはできないため損得だけで考えれば結果論になります。
サブリース契約のメリットは損得の問題ではなく、リスク対策として考えることが大切です。
サブリースの場合、不動産会社と入居者が直接契約を結ぶためオーナーが入居者と絡むことは原則としてありません。
サラリーマン投資家など本業を別に持っているオーナーの場合は賃借人対応が非常に大変なので、サブリースにすることでそういった煩わしさを感じなくなります。
管理委託の場合でも一定の業務については管理会社に委託できますが、あくまで契約自体はオーナーと入居者の間で締結しているため、契約更新や家賃督促など場合によっては直接対応しなければならないこともあるのです。
サブリースのメリットは簡単にいうと安定していて楽なのですが、実は不動産会社があまり教えてくれないデメリットが思ったよりも多いので、実際にサブリースの利用を考えている方はここから先をよく読んで注意してください。
投資家の方の中にはサブリース契約を管理形態の1つだと考えている方がいますが、実は管理委託契約とは契約の性質が全く違うので、間違った認識のままサブリース契約を締結してしまうと思わぬリスクが生じる可能性があります。
では実際にサブリース契約を結ぶとどのようなリスク、デメリットが生じるのでしょうか。
保証家賃についてはサブリース契約期間とは別に見直し期間が規定されているとお話しましたが、基本的に保証家賃については過去の傾向を見ると値上がりすることはほぼなく、築年数とともに値下がりしていくことが一般的です。
最近の不動産市場の傾向として都内の不動産価格が高騰しているためか、家賃相場についても値上がりしているのではと期待を寄せて聞いてこられる投資家の方がよくおられますが、残念ながら家賃相場については値上がりしていません。
不動産価格については地価の上昇によって引き上げられていますが、それと家賃相場は全く別です。
家賃相場が上がるためには、賃貸物件を借りる会社員の年収が上がってこないと難しいといわれており、すでにご存知のように働く人の賃金についてはほとんど上がっていないので、家賃については新築を境に下り坂になるのです。
そのため保証家賃についても相場に比例して見直しのタイミングごとに値下がりしていくことがあるため、当初の補償額をあてにしてキャッシュフローの計画を立ててしまうとローンの返済が苦しくなる可能性があります。
サブリース契約における一番のデメリットというと契約解除が難しいという点にあります。サブリースは不動産会社側からすると長期の視野で利益を考えるため、短期間で解除できないよう高額な違約金を設定しているケースが一般的です。
例えば、月額保証家賃の半年分などの非常に高額な違約金が設定されていることもあります。また契約期間中は一切解除に応じない不動産会社もあるため、サブリースを利用する際には解除が難しいことを頭に入れておくことが大切です。
不動産会社によりますが、入居者の情報について開示してもらえないことがあります。
そもそもサブリースはオーナーと不動産会社の契約であり入居者とは何も契約を交わしていないため、不動産会社から開示されない限り入居者の情報がわからないのです。
不動産会社によってはオーナーが入居者と直接契約を結ぼうとすることを避けるために、入居者情報を非開示としているケースがあります。
入居審査自体は不動産会社が行っているので問題はありませんが、どんな人が住んでいるのか気になる方についてはサブリースが向かないかもしれません。
サブリース契約をめぐってはレオパレスの問題が記憶に新しいところです。約束されている保証家賃が入金されないと、オーナーとしては当初予定していたことが根底から崩れるほどの大きなトラブルに発展する可能性があります。
また、サブリース契約には他の管理形態にはない大きなリスクがまだ潜んでいるのです。
不動産投資をしている人の中には、将来的に自分や家族が部屋を利用したいと考えている人もいるのではないでしょうか。
ただ、サブリースを利用していると自己使用したいときに解除を申し出ても拒否されることがあります。契約期間中であればまだ理解できますが、契約期間が終わった後についても解除を拒否され自動更新されてしまったという事例もあるため注意が必要です。
サブリースの収支が悪いため物件を売りに出したところ、売買業者からサブリースを解除しないとまともな金額で売れないと言われたという事例がよくあります。
実は賃貸物件の多くはサブリース契約が締結したままだと買い取ってもらえないことが多く、買取可能な場合でも価格が下がってしまうことが多いのです。
オーナーとしてサブリースを解除して売りたいと思うところですが、不動産会社に解除を申し出ても先ほどの事例と同じように拒否されてしまい困り果てている方からよく相談されます。
では、なぜサブリース契約の解除ができないのでしょうか。
サブリースとは一種の商品名で法的には所有者を貸主、不動産会社を借主とする通常の賃貸借契約と同じで特約として転貸を許可しているだけです。
転貸とはわかりやすくいうと又貸しのことで、不動産会社からエンドユーザーに貸すことを意味しています。
対して管理委託契約の場合は、所有者とエンドユーザーが直接賃貸借契約を結んで賃貸管理を管理会社に委託する仕組みです。
では、このことがサブリース契約の解除にどのように影響するのでしょうか。
賃貸借契約は借地借家法という法律が適用されるのですが、サブリースについても法的性質は賃貸借契約なので借地借家法が適用されます。一方管理委託契約はただの委任契約なので、借地借家法は適用されません。
借地借家法は基本的に借主を保護するための法律なので、貸主よりも借主にとって有利になるような規定がたくさんあります。
そんな中非常に重要なのが賃貸借契約の解除に関する規定です。
借地借家法第28条
建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情のほか、〜一部省略〜正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
このように貸主側から賃貸借契約を解除するためには、借地借家法条の正当事由がなければ認められないのです。
正当事由という言葉だけで考えると、自己使用したい、収支が悪いといった理由でも認められそうに感じるかもしれません。
ですが、過去の判例などによると正当事由とはもっと厳しく判断されており、建物の安全性が疑われるような場合や、貸主が他に住む場所がないような差し迫った事情があった上で立退料を負担するような場合でなければ認められません。
サブリースにも借地借家法が適用されるため、不動産会社とのサブリース契約を解除するためには正当事由が必要となることから、不動産会社が解除を拒否してくるのです。
このようにサブリースは一歩間違えるととんでもないリスクを抱えてしまうため、実際にサブリースを利用する際には会社選びがとても重要です。
サブリースを行っている不動産会社のうち、次の項目にできるだけ多く該当する会社を選ぶとリスクが軽減できるでしょう。
サブリースはある程度実績のある会社でないと、会社の業績が落ち込んだ時に保証家賃の支払いが滞ることがあるため注意が必要です。
宅建の免許番号が(1)の会社については、免許取得後5年以上経過していないことを意味しているためできれば避けたほうがよいでしょう。
中小企業についてはサブリース契約の解除に応じない場合がありますが、大手企業であれば比較的理由を話せば応じてくれる可能性があります。また、保証家賃の金額についても比較的安定しています。
不動産売買を主体とする会社の場合、賃貸管理業務が片手間になっている可能性があります。管理主体の会社の方が賃貸経営のノウハウがあるため、保証家賃が値下がりしにくいです。
サブリースを利用している投資家の方は多いと思いますが、実際にメリットとデメリットを見てみると、あまり世間には知らされていないデメリットがたくさんあることがお分かりいただけたかと思います。
もともとサブリースは不動産会社が投資物件を売りやすくするために作り出したものなので、あまり当てにしすぎると危険です。
どうしてもサブリースを利用したい方は、保証家賃額が値下がりしてもキャッシュフローが回るくらい余裕のある資金計画を立てておくことをおすすめします。