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不動産投資に興味がある方であれば、昨今話題になったレオパレス問題は他人事ではなかったのではないでしょうか。
ニュースで大々的に取り上げられはしましたが、結局のところ何がきっかけで何が問題だったのかよくわからないという人もいることと思います。
そこで本記事では、レオパレス問題発覚のきっかけから対応までを詳しく解説したいと思います。
目次
そもそもレオパレス問題とは、賃貸不動産大手のレオパレス21が設計施工したアパートにおいて、建築基準法違反や不備が次々と発覚し結果として補修工事を行うために居住者に退去を求めることになった一連の問題のことです。
レオパレスというとマンスリーやウィークリーなど短期間から賃貸できるほか、家具家電付き物件を売りにして大きく成長を遂げてきたというイメージがあります。
CMにも広瀬すずなど豪華な役者さんが起用されてきていたただけに、世間としてはなぜ今になって大手不動産会社とは思えないような問題が発覚したのか大いに疑問に感じました。
レオパレス問題の発端となったのは、テレビ東京の人気番組であるガイアの夜明けではないかと言われています。
同番組では長期間にわたって独自にレオパレスへの取材を行っており、その放送をきっかけとして世に知られることになったのですが、実はガイアの夜明けで放送されたのは先ほどの建築基準法違反の問題だけではありません。
ガイアの夜明けが最初にレオパレスを取り上げたのは、今話題になっている建築基準法違反ではなく、2017年12月に放送された家賃保証問題です。
家賃保証とは不動産業者が建物を一括で借り上げて所有者に家賃を支払うシステムのことで、所有者としては空室リスクがなくなり安定収入が確保できるという大きなメリットがあるという謳い文句で、今でも不動産業界でサービスとして提供している会社はたくさんあります。
レオパレスは地主に税金対策などを目的とするアパート建設を持ち掛け、家賃収入でローンを返済する方法を提案します。
地主としては空室によって家賃収入が途絶える空室リスクが最大のネックとなるため、これを補うためにレオパレス自身でそのアパート一棟を借り上げて毎月決められた家賃を支払うという家賃保証契約を提案することで、地主の不安を解消してどんどん契約件数を増やしていったのです。
地主からすれば家賃さえ保証してもらえるのであればアパート経営によるリスクはほとんど無いと考えますので、都心だけでなく地方の地主についても家賃保証をあてにしてどんどんアパートを建てていきました。
レオパレスでは30年間家賃保証するなど地主を安心させる謳い文句を並べていましたが、契約後の対応としては30年間家賃を保証するどころか、採算の悪い物件の家賃保証契約を解除したり、契約期間中に大幅な保証家賃の減額を求めたりといったあまりにもずさんな対応だったのです。
番組で取り上げられた時の資料には、こういった一連の対応について終了プロジェクトと題して組織的に行っていたことが明らかになりました。
レオパレスから営業を受けてアパートを建てた地主のほとんどは、レオパレスが支払う保証家賃をあてにして高額なローンを組んでいたため、終了プロジェクトによって当初予定していた家賃収入が得られなくなり破綻寸前に追い込まれる地主が出てきたのです。
レオパレスとしては建ててさえもらえればある程度の利益が出ることから、その後賃貸収益が思うように伸びなければ、トカゲの尻尾切りのように建物所有者との家賃保証契約を解除したり保証家賃を減額したりすることで、レオパレスという会社は守り全てのリスクを所有者に押し付ける形となりました。
このようにしてレオパレスの家賃保証問題がガイアの夜明けによって世の中に知れ渡り、レオパレスに限らず不動産業界全体に家賃保証というシステムに対する不信感や不安感が広がったのです。
ここまででも十分大問題ですが、今回取り上げるレオパレス問題はさらにこの後に発覚することになります。
レオパレスの家賃保証問題の発覚から約5ヶ月後の2018年5月、さらに追い討ちをかけるようにガイアの夜明けで第二弾のスクープが報じられたのです。
レオパレス物件の屋根裏に本来設置されていなければならない界壁が設置されておらず、その様子をテレビカメラが実際の物件に潜入して屋根裏を撮影し報道しました。
この映像によって不動産業界はもちろんの事、一般の方にも大きな衝撃を与えることとなったのです。
レオパレスといえば実際の利用者から
といったクレームが多く、世間一般でも概ね知れ渡っている状態でした。
とはいえ、さすがに法令違反のアパートを建築しているとまでは予想していなかったため、界壁がない様子がテレビに映し出された時には多くの人が驚いたことでしょう。
そもそも界壁とは、アパートなどの共同住宅における各部屋を仕切るために設置する壁のことで、隣の部屋からの音漏れを防止する防音性や火災の際の炎の延焼スピードを遅らせる防火性を維持するために建築基準法で設置が義務付けられています。
建築基準法では界壁に求められる防音性能として、次のような基準を設定しています。
上記基準についてはあくまで最低限の数値であり、実際に住み心地などを考えた場合はさらに厳しい基準によって防音性を兼ね備えた界壁を設置する必要があります。
アパート火災で炎が一気に燃え広がることを防ぐためには、界壁の防火性能がとても重要になってきます。
そのため界壁の構造については、次のいずれかで設計施工することとされています。
簡単にいうと、たとえ火災が発生して高温状態に陥ったとしても界壁がすぐに変形、折損しない程度の性能が求められるということです。
界壁については人の命に関わる非常に重要な構造部分のため、建築基準法等によって非常に厳しく規定されています。にもかかわらず、レオパレス物件には重要な構造部分である界壁自体が部分的に存在していないことが発覚したのです。
このように界壁の重要性が分かるとレオパレス問題の重大性が見えてきます。
レオパレス物件の界壁の問題点は屋根裏にあります。
本来界壁については、室内部分だけではなく天井裏まで貫通する形で設置されていなければなりません。ところが一部のレオパレス物件の天井裏を見てみると、界壁が何もないスカスカの状態になっているのです。
本来防火壁となる界壁が屋根裏に一切存在していないため、万が一火災が発生すると一気に燃え広がるリスクがあるほか防音性能や耐震性などにも一定の影響があります。
報道によれば界壁の施工不良についてレオパレス側は「施工業者の誤解と認識不足」などとしていますが、これだけ多くの物件で施工不良が見つかったことを考えるともはや組織的に違反建築が行われていたと考えざるをえません。
そもそも界壁は建物が完成すると所有者が自分で確認することはまずないため、バレないことをいいことにコストカットに悪用されていたのでしょう。
何れにしても、大手不動産会社としてはありえないお粗末さです。
さて、ここまででも十分ひどい状況ですが問題はまだ終わりません。
界壁の問題が発覚して以降レオパレスは全棟調査を実施すると約束しましたが、レオパレスオーナーによれば数ヶ月経っても調査されずに放置しているという実態が発覚したのです。
オーナーからの指摘で調査が行われた物件の多くで界壁に不備が発覚しましたが、なぜかレオパレス社内では問題なしという扱いにされていました。
このようなあまりにずさんな対応にオーナーだけでなく行政も不信感を示し、徹底した調査改善を指示することになったのです。
ここまでレオパレスは界壁の不備について認識のズレなどを言い訳にして、あくまで界壁をつくらないことを指示していたわけではないという態度をとっていました。
ところがこのような傲慢な姿勢に下請け業者がついに怒り、内部告発のような形でガイアの夜明けの続編で真実の詳細が語られたのです。
ガイアの夜明けによれば、レオパレス側から施工業者あてに渡されていた建築図面には界壁が記載されていなかったとのこと。つまり、レオパレスは施工業者に界壁はつくらなくてもいいという趣旨の指示をしていたというのです。
これが真実だとすると、建築確認申請の際に提出していた図面と実際の施工図面が違うということになり組織ぐるみの非常に悪質な不正行為になります。
レオパレスは工事費用を安く抑えるために、界壁のない違反建築物を次々と建設していったのです。
このような重大な問題を引き起こせば、当然オーナーからは多数の損害賠償請求が発生します。
ところが、現在は被害者であるレオパレスオーナーの中でも今後の対応について意見が分かれているそうなのです。
被害者が少数であれば個別に損害賠償請求をすることで簡単に解決できる可能性はありますが、ここまで被害者が多くなると被害額も膨大な金額になることは間違いありません。
となると、仮に全ての被害者が損害賠償請求をしたとするとレオパレスという会社自体が存続できなくなる可能性があるのです。
ここまで不祥事を起こした会社なので自業自得だと考える人もいるかもしれませんが、レオパレスに家賃保証をしてもらっているオーナーがいることを忘れてはいけません。
レオパレスオーナーの多くはレオパレスから支払われる保証家賃がなければ残りのローンを返済できないため、今レオパレスに倒産されては困ります。
そのため、本気で損害賠償請求をしたいオーナーとレオパレスへの打撃を最小限に抑えたいオーナーとで方針が対立している部分があるのです。
レオパレス問題に端を発した界壁問題ですが、実は古い物件の中にはコストを優先するあまり界壁が設置されていない物件が少なからず存在すると考えられます。
特に中古物件についてはいい加減な施工をしているアパートもあるため、中古物件を中心に不動産投資をしている方については界壁のない物件を誤って買ってしまわないよう注意が必要です。
では、界壁の有無を見破る方法はあるのでしょうか。
建物が完成すると通常は屋根裏を見ることはできませんが、一箇所だけ簡単に見られる場所があります。それはバスルームです。
ユニットバスを導入している物件の場合、バスルームの天井に点検口があり上に押し上げるだけで簡単に蓋を開けられます。
そこから屋根裏を目視で確認できるので、四方を見渡して小屋裏まで界壁が貫通しているのかどうか確認しましょう。
レオパレス問題で被害に遭われている方の多くは、ローンという多額の借金を抱えた上で先の見えない賃貸経営を迫られています。
現在では建築確認も厳しくなってきているので違反建築は少なくなっていると思いますが、築20年以降の古い物件についてはレオパレス物件のように建築確認の図面と実際の施工図面を意図的にすり替えているケースがあるため注意が必要です。
中古物件に投資する際には、市区町村役場で建築計画概要書の写しを取得して実物の状態と相違がないかについて確認するようにしましょう。
また、違反が疑われる物件については建築士に依頼して実際に現場を見てもらうことをおすすめします。