- ふるさと納税は寄附金控除の特例。
- 控除を受けるには原則確定申告が必要。
- ふるさと納税以外で確定申告が不要な人は、寄付先が5自治体以内であれば申請により確定申告を不要にできる。
- 確定申告が必要な場合、国税庁サイトから申告書を作成し税務署に書面またはインターネット経由で提出する。
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わずかな自己負担で地域の特産品などの特典が受けられる「ふるさと納税」。利用するには原則確定申告が必要ですが、特例によって確定申告をしなくて済むケースもあります。
どのようなケースで確定申告が必要なのか。必要な場合どのような手続きをすればいいのか。確定申告の対象者や必要となる書類、手順について確認しておきましょう。
ふるさと納税は納税者が選択した自治体(都道府県・市町村)に「寄付」を行い、寄付額から2,000円を差し引いた額が個人住民税(以下、住民税)や所得税から控除される寄附金控除の特例です。
本来であれば納税して終わりのところ、ふるさと納税では地域の特産品などの返礼品が実質2,000円の負担で手に入る点が大きな魅力となっています。
ふるさと納税の手続きは、次のような流れで行います。
寄付先の選択や申込は、次のようなサイトを介して行うのが一般的です。
換金性の高いギフト券や高額な返礼品などが問題となったことを受け、2019年6月以降規制が強化され、還元率3割超・地場産品以外の返礼品は制度の対象から外されることになりました。
返礼品への規制強化により、自治体間での競争は収まっている一方で、申し込みサイト間での競争が起こっています。
サイトによっては返礼品とは別に利用者にギフト券などの特典が用意されており、同じ自治体に同じ金額を寄付する場合でも、受け取れる特典に差がつくケースもあります。
利用者にとってはふるさと納税先の自治体だけでなく、申し込みサイトも比較するポイントといえるでしょう。ただし、サイトの特典にかかるコストは自治体の負担となるケースが多く、サイトによって返礼品の内容などが違うこともあり注意も必要です。
ふるさと納税制度では特例により、2,000円を超える部分の寄付額が、所得などに応じた一定の上限額まで、所得税・住民税から「全額控除」されます。この点が通常の寄付金控除とは異なります。
控除額=ふるさと納税額(寄附金額)−2,000円 (上限あり)
実質的な自己負担額を2,000円に抑えるには、納税者本人の収入(所得)や他の控除額から全額が控除対象となるふるさと納税額を計算し、その金額の範囲内でふるさと納税を行う必要があります。
全額が控除されるふるさと納税額の目安は、ふるさと納税ポータルサイト(総務省)で確認できるほか、こちらのエクセルシートからも概算できます。
ふるさと納税と住宅ローン控除や医療費控除などを併用する場合、併用する控除額によってはふるさと納税のメリットが得られないケースもあります。ふるさと納税を行う前にあらかじめ確認しておく必要」があります。
ふるさと納税と他の控除を併用する場合のポイントや注意点については、以下の記事も参照下さい。
ふるさと納税で確定申告が必要なのは次のような人です。
ふるさと納税を利用するには確定申告が原則必要ですが、「ワンストップ特例」を利用すれば確定申告をしないで済む場合もあります。
ふるさと納税ワンストップ特例とは、通常であれば年末調整によって確定申告が不要な人(会社員等の給与所得者)がふるさと納税を行った場合、一定の条件を満たしていれば、申請により確定申告をしなくても控除を受けられるものです。
特例を利用するには、その年のふるさと納税先(寄付先)が5自治体以内かつ、寄付先の自治体へワンストップ特例適用に関する申請書【寄附金税額控除に係る申告特例申請書】の提出する必要があります。
同じ自治体へ複数回に分けて寄付した場合は、1つの自治体への寄付として扱います。
出典:総務省
ワンストップ特例の申請は、要件を満たした上で寄付先の自治体へ【寄附金税額控除に係る申告特例申請書】を郵送して行います。
申請書は寄付を行う際に自治体に依頼して送付してもらうか、こちらのページから自分でダウンロードし印刷して利用します。
出典:総務省(筆者加筆)
【顔写真付きのマイナンバーカード】があれば、1枚でマイナンバー確認書類と本人確認書類となります。
なければ、マイナンバー確認書類として【マイナンバー通知カード】(通知カードもなければ、マイナンバー記載の住民票の写し)、本人確認書類として【運転免許証】や【保険証】などのコピーを郵送します。
ワンストップ特例の申請書と確認書類は、ふるさと納税をするごとにふるさと納税先の自治体へ送付する必要があります。同じ自治体へ追加納税する場合でも、一度にまとめて送付できないので注意しましょう。
ふるさと納税ワンストップ特例を利用する際には、次のような点に注意が必要です。
特例の申請書はふるさと納税の都度、遅くとも、ふるさと納税を行った翌年1月10日までに自治体に到着するよう送付します。
申請書の提出後、翌年1月1日までに申請書に記載した内容に変更(住所変更等)があった場合には、変更届出書【寄附金税額控除に係る申告特例申請事項変更届出書】を1月10日までに自治体に送付する必要があります。
この期限に申請が間に合わなければ、ワンストップ特例の適用は受けられず、確定申告が必要になります。
ワンストップ特例は、5団体を超える自治体にふるさと納税を行った場合や、他の所得・控除を申告するために確定申告を行う場合には利用できません。
ワンストップ特例の申請書を既に提出していたとしても、寄付先が5団体を超えた場合、あるいは確定申告をした時点ですべての申請が無効になります。この場合、ワンストップ特例の申請をした自治体も含め、すべての寄付額について申告しなければなりません。
ふるさと納税先が5団体を超えた場合や、確定申告を行った場合、ワンストップ特例の申請はすべて無効に。ふるさと納税にかかるすべての寄付について確定申告する必要がある。
確定申告が必要となるケースでは、次のような流れで手続きを進めていきます。
控除のみの申告(還付申告)であれば、ふるさと納税をした翌年1月1日から5年間、いつでも申告できます。
ふるさと納税の確定申告には、次のような書類などが必要です。
確定申告は納税者が【確定申告書】を作成し、税務署に提出して行います。申告書は国税庁サイトの確定申告書等作成コーナーから作成するのが簡単で便利です。
出典:国税庁
[作成開始]を選択すると、提出方法の選択画面に進みます。データで送信する場合には[e-TAXで提出する]を、印刷して税務署に持参または郵送で提出する場合には[印刷して書面提出する]を選択します。
*e-TAXでの提出には、マイナンバーカードとICカードリーダライタ(またはマイナンバーカード対応スマートフォン)、あるいは利用者識別番号と暗証番号(税務署の窓口または確定申告書等作成サイトからの届出により発行)が必要となるため、事前に準備しておく必要があります。
出典:国税庁
提出方法(ここでは[書面提出])を選択すると、OSなどの利用環境、利用規約の確認画面に進みます。確認後[利用規約に同意して次へ]のボタンで作成する申告書等の選択画面に移ります。
[申告する年分の申告書等の作成]から[所得税]の作成を選択します。
出典:国税庁
[所得税]の申告書作成を選択すると、入力方法の選択画面に進みます。
所得が給与所得・年金所得のみの人は青色[給与・年金の方]を、給与所得以外に所得があれば、赤色[左記以外の所得のある方]を選択します。
判断に迷う場合には、緑色[左のボタン選択がお分かりにならない方]を選択し、質問に回答しながら作成を進めていけば、適切な種類で申告書を作成できます。
出典:国税庁
それぞれの[作成開始]ボタンを押し、その後は画面の指示に従って入力を進めていきます(以下[給与・年金の方(青色)]を選択した場合で説明します)。
適用を受ける控除の選択画面では[寄附金控除]にチェックを入れます。そのほか医療費控除などの適用を受けるのであれば、あわせてチェックします。
出典:国税庁
給与所得の入力画面では、所得や控除の金額、源泉徴収税額など、源泉徴収票に記載された金額などを入力します。
源泉徴収票にはたくさんの項目が記載されていますが、源泉徴収票のどこを見ればよいか、見方は同じ画面に見本が表示されているため、該当する金額等をそのまま入力すればOKです。
出典:国税庁
所得控除の入力画面では[寄附金控除欄]の[入力する]を選択し、寄付金受領証明書の内容を1件ずつ入力します。
出典:国税庁
すべての寄付金受領証明書の入力し次の画面へ進むと、還付される金額が表示されます。作成した申告書を表示して、記入内容に漏れや誤りがないか確認しましょう。
出典:国税庁
漏れや誤りがないかを確認後は次へ進み、【住民税等に関する事項】【還付金受取方法】【氏名・住所等】【マイナンバー】を入力し、申告書の作成は完了です。
書面で提出する場合には、税務署に持参(窓口へ提出・ポスト投函)するか、郵送します。e-Taxで提出する場合には、作成画面から引き続き申告書のデータを送信します。
サラリーマンなど給与所得者は、「スマート申告」を利用して、スマホやタブレット端末からもふるさと納税の申告ができます。
2019年までは、給与を1カ所から受け取り年末調整を行なった給与所得者しか利用できませんが、2020年以降対象者や申告できる内容の大幅な拡充が予定されています。
スマート申告のやり方やポイント・注意点については、次の記事を参照ください。
ふるさと納税は控除を申告するまでがセットの制度。申告には手間もかかりますが、ワンストップ特例やスマート申告など、確定申告を普段しない人でも申告しやすいような仕組みも用意されています。
制度の内容や申告の方法を理解した上で、ふるさと納税を活用していきましょう。
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