- 奨学金が払えないと督促が来たり、裁判所から一括返済が求められます。
- 奨学金によって自己破産をすると、家族も連鎖して自己破産するなどのリスクがあります。
- 奨学金が払えない場合には返還免除制度など、自己破産の前に活用すべき制度があります。
公開日:2019年12月20日
奨学金を払えず、自己破産したら一体どうなるのでしょうか?自己破産は借金が帳消しとなり、その後の生活を立て直しやすくなる方法ではありますが、一方でリスクもあります。
この記事では自己破産の仕組みやその後のリスクを解説した上で、自己破産前に検討すべきことを紹介します。
日本学生支援機構(旧日本育英会)のIR資料(平成31年3月)によると、学生の2.7人に1人が同機構の奨学金を利用しています。つまり、多くの学生が社会人になってから、数百万円の返済をして行かなければならないのです。
もしも最高利率の3.0%で奨学金を利用した場合、借金は1,000万円を超えることもあるため、返済が苦しくなる人がいることも用意に想像できます。
自己破産者の客観的数は後述するとして、まずは奨学金が払えないとどうなるのか、以下内容を解説します。
奨学金の返済ができないと、日本学生支援機構から督促が来ます。借金の督促というと、嫌がらせをされたり、乱暴な取り立てのイメージがあるかも知れませんが、そのようなことはありません。借金の督促は文書や電話で行われます。
借金の取り立ては法律でさまざまな規制がありますので、闇金を利用しない限り安全ではあります。しかし、遅延金として5%返済金が上乗せされますので、借金が増えてしまいます。その結果、より生活が厳しくなる可能性があるのです。
遅延が3カ月以上続くと滞納となり、信用情報機関に金融事故情報が記録されてしまいます。信用情報機関には個人の金融取引が記録されており、事故記録が載るとさまざまな金融取引で不利となります。
滞納が4カ月以上となると回収の専門である債権回収会社からの督促が始まります。これまでのような文書での督促だけでなく、訪問の可能性も出てきます。つまり、日本学生支援機構は一定期間を過ぎると、回収の専門会社に任せてしまうのです。
それでも返済できなければ、一括返済を求められます。滞納9カ月が過ぎた頃がその目安となります。一括返済は裁判所から求められるため、逃げることはできません。給与の差し押さえなどがなされるケースもあります。
元本だけでなく、利息や遅延損害金も含めて返済しなければなりませんので、返済負担が一気にのしかかることとなります。
しかし、毎月の支払いすら返済できないのに、一括返済できる余裕はありませんよね?その結果、自己破産せざるを得なくなるという人が出てくるのです。
奨学金が返せなくなって自己破産した場合、その後どのような影響が出るのでしょうか?奨学金による自己破産者の数も含めて以下の内容を解説します。
日本学生支援機構の奨学金利用者のうち、15,338人が自己破産しています(2012年~2016年)。内訳は以下のとおりです。
返還者本人 | 8,108件(うち保証機関分が475件) |
---|---|
連帯保証人 | 5,499件 |
保証人 | 1,731件 |
日本学生支援機構は自己破産の直接原因は不明としていますが、各種メディアの報道によると低収入な奨学金利用者の自己破産が多く、毎月返済が迫られる奨学金との因果関係が透けて見えます。
奨学金には人的保証と機関保証があります。もしも、機関保証を利用せず、人的保証をしている場合には、自己破産が連鎖してしまう可能性があります。
本人が自己破産をした場合、連帯保証人の親が返済を迫られ、返せなければ親まで自己破産してしまうのです。
人的保証は保証人を立てて借りる方法で、機関保証とは公益財団法人日本国際教育支援協会が連帯保証する制度です。
機関保証を行うと連帯保証人も保証人も要らないというメリットがありますが、月額保証料が奨学金から差し引かれるため、受け取る奨学金が少なくなるというデメリットがあります。保証期間は貸与の開始から完済までで、保証料は1,300円~6,900円程度です。
自己破産とは債務整理の方法の1つで、財産を没収される代わりに借金が帳消しになります。もしも自己破産をした場合にはどのような影響が出るのでしょうか?デメリットから紹介します。
自己破産をすると信用情報ブラックとなるため、一定期間不自由な生活を強いられます。自己破産が終了後10年程度はローンを組むことができなくなりますし、クレジットカードを発行することもできません。
これらの利用ができなければ、ライフプランを立てにくくなったり、金策がしづらくなってしまいます。また、スマートフォンの本体代分割やETCカードの利用もできなくなりますので、生活の利便性が低下します。
10年経過後も信用情報が真っ白な状態となりますので、金融取引の審査では不利となるでしょう。
自己破産をすると財産を没収されます。具体的には住宅などの不動産や車など、20万円以上の資産は没収されます。また、99万円以上の現金も没収されるほか、20万円を超えている口座の現金も没収されます。
財産がない人の場合には、自己破産をした方が良いケースも多いのですが、財産がある場合には大きなデメリットとなるでしょう。
特に持ち家に住んでいる人の場合、住居を探さなければならないことから自己破産をためらうケースもあるようです。
自己破産の手続きを自分でするのはハードルが高いため、弁護士などの専門家に相談することとなります。しかし、弁護士に依頼すると着手金が20万円~30万円程度、成功報酬が20万円~30万円程度、合計40万円~60万円ほどの費用がかかります。
お金がなくて自己破産するのに、多額の費用が必要であることを疑問に思うかも知れませんが、基本的に分割払いなどに応じてくれるため、計画的な返済が可能です。いずれにせよ、一定の費用が必要であるというデメリットがあります。
手続きが終わるまでは就けない職業があります。たとえば弁護士や税理士などの士業、公務員の委員長や委員、商工会議所や信用金庫などの団体企業の役員は就くことができません。
また、貸金業者の登録者や生命保険募集人など一定の業種も就けません。職業に制限がかかることは自己破産の大きなデメリットといえるでしょう。
一方で、自己破産には借金が帳消しになることや、督促・強制執行されなくなるなどのメリットもあります。これまで借金返済に苦しんでいた人には有難いはずです。自己破産のメリットについて見て行きましょう。
借金が帳消しになることで、今まで背負って来たお金の悩みから一気に開放されることになります。これまで借金の返済に追われていたからこそ、生活が苦しかったけれど、借金がなくなれば支障なく生活ができるという人は多いでしょう。
自己破産をすることによって生活再建、自立がしやすくなるのです。
自己破産をすると督促が止まります。返済したくてもできない人にとって、督促は精神的な負い目となります。督促が止まることでその負担がなくなります。
また、強制執行をされる心配もありません。たとえば給料の差し押さえなどをされてしまうと、会社に借金苦が明るみになってしまいますが、その心配も必要がなくなります。
奨学金が返せない場合に、自己破産は1つの手段ではありますが、先述のリスクも付いて回ります。そこで、より低リスクな方法を検討してみましょう。ここではおすすめのやり方として以下を紹介します。
もしも大学院在学中に優れた成績をあげていたり、教育研究職に就いた場合には、返済を免除してもらえる可能性があります。いずれも第一種奨学金の場合が前提となります。
ちなみに、心身障害による労働能力喪失や、死亡障害で返済能力がなくなった場合にも返済免除となります。
返済金額を半分にしてもらえる制度もあります。給与所得者の場合は税込年収が325万円以下の場合、給与所得者以外の場合は年間取得金額225万円以下の場合(必要経費控除後)が条件となります。
ただし、返済期間は倍となりますので、期間を延ばすことで月々の負担を軽くするという方法です。
返還期限猶予制度というのもあります。これは、返済を一時的に猶予してもらう方法です。1回の利用で12カ月まで猶予可能で、繰り返すと最大10年間となります。
利用条件は、給与所得者の場合は年収300万円以下(税込み)、給与所得者以外の場合は年間取得金額200万円以下(必要経費控除後)となっています。
任意整理や個人再生の利用も1つの方法です。任意整理は将来利息などを帳消しにしてもらうことで借金の負担を軽くする方法です。個人再生は資産を失うことなく借金を5分の1程度まで軽減する方法です。
自宅や車などの財産を保有しながら、借金の負担を軽くしたい場合には、これらの方法を取ると良いでしょう。
借金額によって最適な方法は異なりますので、任意整理が良いのか個人再生が良いのか自己破産が良いのかは、弁護士などの専門家に相談することが原則となります。ただし、一般的に目安とされている内容がありますので紹介いたします。
まず、借金額が年収の3分の1を超えている場合には任意整理を検討しましょう。借金額が100万円を超えているなら個人再生するのが一般的です。個人再生での返済負担がキャパオーバーとなっている場合や、安定収入がない場合は自己破産となります。
奨学金が払えないと督促が来たり、強制執行が行われるなどのリスクがありますが、自己破産をすると、家族も連鎖して自己破産する可能性もあります。
ただし、自己破産は借金が帳消しになるというメリットもありますので、奨学金が払えない場合の1つの手段となります。
とはいえ、自己破産をする前に、返還免除制度やその他債務整理など活用すべき制度があります。ぜひ最適な方法で生活再建を行いましょう。
債務整理の手続きは複雑で難しいため、債務整理のプロへ相談することが賢明です。まずは相談料無料で債務整理に強い弁護士事務所に相談してみるのがいいでしょう。