- 離婚率は人口1,000人あたりの離婚件数。
- 日本の離婚率は1.70で世界的に見ても低い。
- 日本の離婚率は平成14年以降低下傾向。
- 「夫婦の3組に1組が離婚」というデータは正確ではない。
- 近年は40代以上で同居期間15年以上の夫婦の離婚件数の増加が顕著。
公開日:2019年9月3日
日本の離婚率と言えば、「夫婦の3組に1組が離婚」といった数字を聞いたことがある人が多いと思います。日本の離婚率は高いように思いますが、はたしてそうなのでしょうか?本記事では、日本の離婚率について解説し、日本では離婚率が高いと言われる理由についても検証します。
「離婚率」について、誤解している人は多いと思います。離婚率の本来の意味は、結婚している夫婦に占める離婚する夫婦の割合ではありません。
「離婚率」という言葉の正確な意味は、人口1,000人あたりの離婚件数で、次の計算式で計算します。
離婚率というと、結婚している夫婦の何組に1組が離婚するのかという割合のイメージを持っている人が多いと思います。
しかし、離婚率は、人口と離婚件数のみから導き出されるもので、結婚している夫婦が何組いるかは関係ありません。パーセンテージでもないので、例えば離婚率2.0は、2.0%とは違います。
厚生労働省が発表しているデータによると、平成29年度の日本の離婚率は「1.70」です。これは、平成29年度の離婚件数(21万2,262件)、日本の人口(1億2,464万8471人)を上の計算式に当てはめて算出されたものです。
日本の離婚率1.70は、他国と比べて高いわけではありません。厚生労働省が発表している日本、韓国、シンガポール、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、イギリスの9か国を対象とした離婚率ランキングでは日本は8位となっており、世界的にみると離婚率は低い方です。
出典:厚生労働省「平成29年人口動態統計月報年計(概数)の概況 人口動態総覧(率)の国際比較」
日本の離婚率は、近年上昇しているのでしょうか?戦後の日本の離婚件数及び離婚率の推移は、次のグラフのとおりです。
出典:厚生労働省「平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要」
日本では、戦後離婚件数は上昇傾向を続けており、1999年から2008年まで離婚率は2.0を超えていました。しかし、2002年(平成14年)をピークに、離婚件数は減少傾向となっており、離婚率も低下しています。
日本の離婚率は諸外国と比べても高いわけでもなく、近年離婚率が上昇しているわけでもありません。「日本の離婚率は高い」「夫婦の3組に1組が離婚」などと言われるのはなぜなのかを考えてみましょう。
「夫婦の3組に1組が離婚」は、年間の婚姻件数と離婚件数を比較して言われているものです。
平成29年度の年間婚姻件数は60万6,866件、年間離婚件数は21万2,262件です。これを見ると、だいたい年間の離婚件数は年間の婚姻件数の3分の1になっていることがおわかりいただけると思います。
今年結婚した夫婦が今年離婚したのであれば、「3組に1組が離婚」と言えるかもしれません。しかし、今年離婚した夫婦が結婚した年はバラバラです。まことしやかに言われている「夫婦の3組に1組が離婚」という説には、実はあまり根拠がないのです。
ちなみに、年間離婚件数が最多の28万9,836件であった平成14年の年間婚姻件数は75万7,331件でした。同じ考え方でいくと、今から15年以上前には夫婦の2.6組に1組が離婚していたことになります。さすがにこれには違和感を感じるでしょう。
結婚した夫婦のうち何組が離婚するかが明確にわかるデータは今のところありません。にもかかわらず、最近では「夫婦の3組に1組が離婚」説が一人歩きし、多くの人が「日本の離婚率は高い」というイメージ持っているようです。
年齢別の離婚件数に違いがあるのかを見てみましょう。厚生労働省が発表しているデータによると、夫・妻の年齢別の離婚件数の構成割合の推移は、次の図のとおりです。
これを見ると、戦後間もない時期と比べて、近年は20歳代以下の若年層の離婚件数は大幅に減っているのがわかります。晩婚化で20代で結婚している人自体減っていますから、当然のことでしょう。一方、離婚件数に占める40代以降の人の割合は増加傾向です。近年は、熟年離婚する人が多くなっていると思われます。
厚生労働省が発表している「同居期間別離婚件数の年次推移」は、次のようになっています。
出典:厚生労働省「平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要」
このデータによると、同居期間15年未満の夫婦の離婚件数は、平成17年をピークに概ね減少傾向です。しかし、同居期間15年以上の夫婦の離婚件数は、それほど減っていません。同居期間35年以上に限っては、平成17年よりも平成29年の方が多くなっています。
同居期間が長い夫婦というのは、熟年離婚ということです。つまり、離婚全体に占める熟年離婚の割合が増えているのです。
近年離婚件数はむしろ減少傾向です。けれど、これまで離婚しなかった40~50代以上の夫婦の離婚が増えたため、離婚率が高くなった気がするのではないかと思います。
熟年離婚が増えている理由としては、以下のような点が考えられます。
女性は離婚するとなると経済的な心配があります。今は40代以上でも働いている女性が多いですから、離婚後に直ちに困るといったケースが少なくなってきています。
平成20年度から、離婚時に夫の年金保険料納付記録を分けてもらえる「離婚時年金分割」の制度が始まりました。年金だけで生活していくことは難しいですが、年金分割すれば多少なりとも年金が増えることで、専業主婦やパートの人でも離婚しやすくなったというのがあります。
年金分割については、こちらの記事をご参照ください。
寿命の短かった昔は、夫婦で余生を過ごす時間はそれほど長くはありませんでした。しかし、現在では寿命が延びたため、子供が巣立ったり仕事を引退したりした後も、夫婦でいる時間が増えてしまったというのがあります。
残りの人生、今のパートナーと過ごすのではなく、自分の好きなように生きたいという人も増えています。相手の介護をしたくないという理由もあるでしょう。
婚姻期間が長くなったということは、離婚できる期間も長くなったということです。長い人生の中で、離婚という選択肢を取る余裕ができたことも熟年離婚が増えた理由と考えられます。
では、熟年夫婦はどういった理由で離婚しているのでしょうか?一般に、離婚原因として、最も多いのは、性格の不一致です。
離婚原因については、こちらの記事をご参照ください。
熟年夫婦であっても、離婚理由の中心的なものは、性格の不一致です。と言っても、長年一緒にいる夫婦はお互いの性格をよく知っているはずですから、性格の不一致で即離婚を決めているわけではありません。
熟年夫婦の場合、長い夫婦の歴史の中で、浮気、浪費、親族との不和など、いろいろな事件を経験しています。その時々には離婚せずに乗り切ったけれど、納得いかないことを積み重ねた結果、最終的に性格の不一致として離婚を決めているケースが多いように思います。
日本の離婚件数は、平成14年をピークに減少しており、離婚率も低下しています。近年、離婚が増えているようなイメージがあるのは、熟年離婚が多くなっているからです。
寿命が長くなったことにより、性格の合わないパートナーと余生を過ごすよりも、残りの人生自分の好きなように生きたいと考える人もいるでしょう。熟年離婚にはリスクもありますから、しっかり準備して臨むのがおすすめです。
親権や養育費・慰謝料など、離婚問題でお悩みの場合は法律のプロに相談することをおすすめします。でも、どうやって法律のプロを探せばよいのか戸惑う方も多いはず。。
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