- 相手が離婚に応じてくれない場合、別居することで離婚しやすくなる。
- 別居中も夫婦である限り生活費を請求できる。
- 正当な理由なく別居すれば、同居義務違反で慰謝料が発生することもある。
- 長期間別居していれば、有責配偶者の側から離婚を言われることもある。
公開日:2019年5月28日
離婚を考えているけれど、すぐに離婚を進めるのではなく、当面の間別居したいと思うこともあるでしょう。離婚前に家を出て別居するときには、生活費の問題や、将来離婚するときのことも考えておかなければなりません。
本記事では、離婚前に別居する際には、どのような点に注意しておいたらよいかを説明します。離婚の前段階として、必要な準備をした上で別居をしましょう。
離婚の前に、婚姻関係を続けたまま別居という選択肢をとることがあります。離婚前に別居した方がいいのは、次のようなケースです。
離婚は子供や周りの人への影響も大きいですから、簡単に決めるべきではありません。「もう離婚するしかない」と思っても、別居して冷却期間を置くことで、「もう一度頑張ってみよう」という気持ちになることがあります。
離婚は一人でできるわけではなく、原則的に相手の同意が必要です。相手の同意がない場合には、法律上の離婚原因(浮気など)がない限り、離婚はできません。
離婚を希望する理由としては、「性格の不一致」を挙げる人が最も多くなっています。
しかし、性格の不一致はそれだけでは法律上の離婚原因になりませんから、相手が応じてくれないと離婚は困難です。
このような場合、長期間別居すれば、法律上の離婚原因である「婚姻が継続し難い重大な事由」に該当する可能性が高くなり、離婚が認められやすくなります。
何年別居すれば離婚できるかについては、明確な基準があるわけではありません。一般には3年程度の別居で離婚できると言われますが、あくまでケースバイケースです。
たとえば、長期間別居していても頻繁に会っているような場合には、夫婦関係が破綻しているとは言えず、離婚しにくくなります。
離婚すると、名字を変えたり転居したりすることもあります。子供がいる場合などは特に、進級や進学のタイミングに合わせて離婚したいと思うことが多いでしょう。
お互いが離婚に合意していてもすぐに離婚届は出さない場合、一緒に暮らすのも窮屈ですから、離婚までの間は別居を選ぶことがあります。
相手の浮気があった場合などには、とりあえず相手に出て行ってほしいと思ったり、自分が実家に帰りたいと思ったりすることもあるでしょう。離婚するかどうかは後で考えるとして、とりあえず一緒にいたくないので別居するケースもあります。
相手のDVがある場合、離婚の話をすれば余計に暴力をふるわれる可能性があります。DVの場合には、別居して安全な場所に避難してから離婚手続きを進めるべきです。
DVのケースでは、相手に居場所が知られると危険なこともあるでしょう。各地域に設けられている配偶者暴力相談支援センター(DV相談支援センター)に相談すれば、別居や離婚について情報を提供してもらえるほか、一時的に避難できるシェルターも紹介してもらえます。
別居して世帯が分かれると、お金の管理もそれまでと同様にはいかなくなります。別居中でも相手に生活費を払ってもらうことはできます。別居するなら、生活費の請求も忘れないようにしましょう。
別居していても夫婦であることには変わりありません。夫婦は助け合って生活するのが前提ですから、別居中も生活費(婚姻費用)の分担義務があります。
別居により足りなくなる生活費は、相手に請求することが可能です。
別居中、生活費としてどれくらい請求できるかは、裁判所が用意している婚姻費用算定表を参照して決めることができます。生活費には、衣食住にかかる費用のほか、医療費や教育費なども含まれます。
別居中の生活費については、夫婦間できちんと取り決めをしておきましょう。口約束では守ってもらえない可能性がありますから、「別居合意書」として書面に残しておくのが安心です。
別居合意書には、別居期間、受け渡しする生活費の金額、子供との面会のルールなどを記載しておきましょう。
別居合意書は、公証役場で公正証書にすることもできます。公正証書にしておけば、約束どおりの支払いがない場合に、強制執行することも可能になります。
相手が別居中の生活費を払ってくれない場合、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てする方法があります。婚姻費用分担請求調停を申し立てると、裁判所で相手と生活費の金額について話し合うことができます。
話し合いで合意できない場合には、審判手続きに移行し、裁判官が婚姻費用の額を決定します。
裁判所で婚姻費用が決まった場合には、裁判所で調停調書や審判書が作られます。相手が約束どおり生活費を払ってくれない場合には、調停調書や審判書にもとづき強制執行が可能です。
別居するときには、将来離婚するときのことも考えておきましょう。別居する場合の注意点をピックアップしてみます。
夫婦は民法上、同居する義務があります。正当な理由がなく一方的に別居した場合、同居義務違反となり、離婚時に慰謝料請求される可能性があります。
離婚の慰謝料の相場は50万円から300万円程度です。慰謝料発生の原因が同居義務違反のみの場合には、慰謝料はそれほど高額にはなりませんから、50万円程度と考えるとよいでしょう。
別居する場合にも、できれば相手と話合いをし、承諾を得た方が安心です。別居合意書を作成しておけば、別居について両者が合意していることの証拠にもなります。
なお、DVの場合には、相手の同意を得る必要はありません。身の安全の確保を最優先にしましょう。
離婚するときには、夫婦の財産を分ける財産分与を行います。財産分与は、離婚時の財産が基準になるのが原則です。しかし、別居が先行している場合には、別居時が財産分与の基準時になります。
たとえば、別居時点で夫名義の預金残高が1,000万円であった場合、離婚時点に残高が600万円に減っていたとしても、1,000万円を基準に財産分与します。
他の財産がないと仮定すると、夫は妻に対して、600万円のうち500万円を渡さなければならないことになります。
ただし、すべてのケースにおいて別居時が基準となるわけではありません。裁判になった場合、不動産や株式など価格が変動する財産については、離婚時が基準になることが多くなっています。
財産分与については、原則として別居時を基準としながら、状況に応じてケースバイケースの判断をするということです。
長期間別居を続けると、他の離婚理由がなくても、離婚が認められやすくなります。長期間の別居により夫婦関係が破綻しているとみなされ、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断されるからです。
相手が浮気した場合、有責配偶者である相手の側からは原則として離婚を請求できません。しかし、浮気の後長期間別居すると、相手の側から離婚を請求される可能性も出てきます。
離婚したくない場合でも、相手との関係修復を図らないまま長期間別居を続けていると、離婚させられてしまうことがありますから注意しておきましょう。
離婚前に別居するときには、生活費について取り決めしておきましょう。別居後に離婚を考えているときには、慰謝料や財産分与についても意識しておくべきです。
離婚しないまま長期間別居を続けると、そのこと自体が離婚原因になります。夫婦としてやっていく意思がない場合には、どこかで離婚の覚悟を決めた方がよいでしょう。
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