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ネット銀行の住宅ローンにはデメリットもある?金利・審査・メリット・デメリットをFPが解説

ネット銀行の住宅ローンにはデメリットもある?金利・審査・メリット・デメリットをFPが解説

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竹国 弘城

竹国 弘城

RAPPORT Consulting Office 代表、1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP(R)、証券外務員一種

証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。ミニマリストでもあり、ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP(R)。

この記事のポイント

  • ネット銀行が必ずしも最安の金利とは限らない。
  • 金利以外のコストも含めたトータルの負担で比較する。
  • ネット銀行と従来型の銀行の垣根は小さくなっている。
  • 先入観を捨て、幅広い選択肢から比較して選ぶことが大切。

金利の低いイメージのあるネット銀行の住宅ローンですが、デメリットはないのでしょうか。この記事ではネット銀行の住宅ローンの金利やメリット・デメリットについて、従来型の銀行の住宅ローンと比較しながら解説。住宅ローンを選ぶ際のポイントをお伝えします。

 

ネット銀行の住宅ローン金利は低い?金利を比較

ネット銀行の住宅ローン金利は低い?金利を比較

ネット銀行の住宅ローンを選ぶ理由として金利の低さが挙げられます。実際には銀行による違いが大きく、メガバンクなど従来型の銀行でも、ネット専用住宅ローンであればほとんど差はありません。主な銀行の住宅ローン金利は以下のようになっています。

 

変動金利

変動金利は半年ごとに金利が見直され、通常固定金利よりも低く設定されます。2019年8月時点の住宅ローンの変動金利相場は年0.5%前後。ネット銀行など一部では年0.4%台の金利も見られます。

ネット専用の住宅ローンと比較した場合、メガバンクとネット銀行で金利に大きな差はありません(対面契約の場合の金利は、ネット契約より年0.1%程度高くなっています)。

 

変動型住宅ローン金利相場

変動型住宅ローン金利(2019年8月適用金利・新規)
三菱UFJ銀行 ネット専用 年0.525%
通常 年0.625%〜0.725%
みずほ銀行 ネット専用 年0.525%〜0.775%
通常 年0.625%〜0.875%
新生銀行 年0.45%〜0.65%
住信SBIネット銀行 年0.457%
ソニー銀行 年0.457%〜0.807%
イオン銀行 年0.52%〜0.82%
じぶん銀行 年0.457%

 

当初固定10年金利

借入から一定期間固定金利が適用され、固定期間経過後に変動金利に切り変わるのが固定期間選択型の住宅ローンです(固定金利への切り替えを選択することもできます)。

 

「当初型」と「全期間型」

固定期間選択型の住宅ローンは大きく、固定期間中の金利引き下げ幅の大きな「当初型」と、返済期間中金利引下げ幅が一定の「全期間型」に分かれます。

当初型では固定期間終了後に金利引下げ幅が縮小するため、固定期間終了後に同じ金利タイプを選択すれば全期間型の金利を上回ります。借入当初の金利は当初型と全期間型で相場が違うため、比較する際はどのタイプの金利なのかを確認した上で行わなければなりません。

 

固定10年型住宅ローン金利相場

2019年8月時点の固定10年の金利相場は、当初型で年0.5%〜1.0%全期間型で年1%台前半となっています。

固定10年型の住宅ローンについても、ネット銀行だから金利が低いというわけではなく、銀行による違いのほうが大きいと言えます。

固定10年型住宅ローン金利(2019年8月適用金利・新規)
当初10年間
適用金利
(基準金利)
11年目以降
適用金利(*)
三菱UFJ銀行
(ネット専用)
当初型 年0.59%
(年3.19%)
▲1.60%
みずほ銀行
(ネット専用)
全期間型 年0.60%〜0.85%
(年2.55%)
▲1.70%〜▲1.95%
新生銀行 当初型 年0.80%
(年2.00%)
▲0.70%
住信SBIネット銀行 全期間型 年1.06%
(年2.36%)
固定金利選択:▲1.30%
変動金利選択:▲1.55%
当初型 0.66%
(年2.36%)
▲0.70%
ソニー銀行 当初型 年0.58%〜1.03%
(年1.93%)
▲0.60%
イオン銀行 当初型 年0.69%〜0.99%
(年2.90%)
▲0.10%〜▲1.60%
じぶん銀行 全期間型 年1.54%
(年2.54%)
▲1.00%
当初型 年0.59%
(年2.54%)
▲0.80%

※基準金利(店頭金利)からの金利引き下げ幅

 

固定35年金利

固定35年についてはネット銀行の金利が特に低いとは言えず、資金力のあるメガバンクなどが比較的低金利のローンを提供しています。

 

固定35年型住宅ローン金利相場

2019年8月時点の長期固定35年の金利の相場は年1%〜2%程度となっています。

固定35年型住宅ローン金利(2019年8月適用金利・新規)
三菱UFJ銀行 年1.49%
みずほ銀行 ネット住宅ローン 年1.155%〜1.58%
フラット35(買取型) 年1.026%〜1.83%
新生銀行 長期固定金利 年1.30%
ステップダウン金利 年1.30%→年0.65%
住信SBIネット銀行 ネット専用住宅ローン 年1.38%〜2.43%
ミスター住宅ローンREAL(対面契約) 年1.38%〜2.63%
フラット35(買取型) 年1.17%〜1.61%
ソニー銀行 年1.365%〜1.515%
イオン銀行 フラット35(買取型) 年1.17%〜1.37%
じぶん銀行 年1.68%〜2.22%

※手数料タイプや各種割引、審査結果により金利には幅があります。

 

ネット銀行が最安とは限らない

あなたの希望する借入条件にその銀行が強みを持っているか、それが銀行を選ぶ際の重要なポイントです。必ずしもネット銀行の金利が最安とは限りません。特定の条件で優位性があっても、別の条件では違う結果となることもあるため、必ず望する借入条件で比較することが大切です。

 

住宅ローンにかかる金利以外のコスト

住宅ローンにかかる金利以外のコスト

金利以外にかかるコストも住宅ローンの負担に影響します。これらのコストは同じ借入条件でも銀行によって大きく違うこともあり、金利差が小さければ銀行を選ぶ決め手ともなります。

 

 

保証料・事務手数料

金利以外のコストとして金額が大きいのが、保証料・事務手数料です。

 

従来型の銀行では保証料がかかる

メガバンクなど従来型の銀行では保証会社からの保障を受けるため、住宅ローン利用者は「保証料」を負担するのが一般的です。

保証料の支払い方法には、契約時に一括で支払う「一括前払い型」と金利に上乗せして支払う「利息組入型」があります。一括前払い型の保証料の相場は借入期間35年で借入金額の2%程度

借入金額が3000万円であれば約60万円、審査結果次第では200万円を超えることもある大きな負担です。

 

ネット銀行では事務手数料がかかる

ネット銀行やフラット35では保証会社を利用せず、審査も自ら行うため一般的に保証料はかかりません。その代わりにかかるのが「事務手数料」。「融資手数料型」を導入して、保証料の代わりに事務手数料を徴収する従来型の銀行もあります。

ネット銀行の事務手数料の相場は借入金額の2%程度であり、借入期間35年の場合の保証料と大体同じ負担となります。一定の事務手数料が発生します。

 

借入期間が短いとネット銀行が不利になるリスクも

保証料は借入期間に応じて決まり、借入期間が短くなるほど保証料は下がります。おおよその相場としては借入期間が20年であれば借入金額の約1.5%程度、借入期間が10年であれば借入金額の約0.8%程度となります。

繰り上げ返済などで返済期間が短くなれば差額分の保証料は戻ってきます。

一方事務手数料は借入金額に応じて決まり借入期間によって変わらないため、借入期間が短いと保証料よりも事務手数料のほうが割高になりやすく、ネット銀行が不利になるケースが増えます。

借入期間による保証料例(みずほ銀行の場合)
借入期間 保証料
10年 85,440円〜299,090円
20年 148,340円〜519,280円
30年 191,370円〜669,820円
35年 206,110円〜721,470円

借入金額1,000万円、借入期間30年、元利均等返済方式

 

主な銀行の保証料・事務手数料

保証料・事務手数料(2019年8月1日現在)
支払方法 保証料 事務手数料(税込)
三菱UFJ銀行
(ネット専用)
一括前払方式 借入金額・借入期間により決まる(*1) 32,400円
利息組入方式 借入金利+年0.2%
みずほ銀行
(ネット専用)
一括前払方式 借入金額・借入期間により決まる(*1) 32,400円
利息組入方式 借入金利+年0.2%
新生銀行 0円 定額 54,000円〜162,000円(*2)
住信SBIネット銀行
(ネット専用)
0円 融資金額×2.16%
ソニー銀行 0円 【変動セレクト/固定セレクト住宅ローン】
借入金額×2.16%
【住宅ローン】
一律 43,200円
イオン銀行 0円 【定額型】
108,000円
【定率型】
借入金額×2.16%
(最低 216,000円)
じぶん銀行 0円 借入金額×2.16%

*1借入期間による保証料例がおよその目安
*2借入金額、借入期間によらず利用するパックにより決まる

 

手数料の定額型と定率型 どちらが有利?

借入金額に一定の手数料率をかけて手数料を計算する「定率型」と、借入金額によらず手数料が一定の「定額型」、両方の手数料タイプを取り扱っている銀行もあります。

借入金額が大きければ定率型のほうが手数料は多くなりますが、通常は定率型の適用される商品のほうが定額型が適用される商品よりも金利が低く設定されるため、利息負担は定額型のほうが大きくなります。

そのため、どちらの手数料タイプが有利になるかは、利息と手数料をあわせた負担で比較して判断しなければなりません。

 

定額型と定率型の比較

ソニー銀行の場合、手数料定率型が適用される商品(変動セレクト住宅ローン)の金利は年0.457%、手数料定額型が適用される商品(住宅ローン)の金利は年0.757%となっています(いずれも変動金利・自己資金10%以上・一般団信付・2019年8月1日現在)。

借入金額を3,000万円として上記2つのソニー銀行の住宅ローンを利用した場合、総支払額は借入期間が13年以上になると、金利の低い定率型のほうが有利になります。借入期間35年では総支払額に約109万円の差が生じます。

手数料定額型・定率型比較(ソニー銀行の場合)
借入期間 (A)
変動セレクト住宅ローン
手数料定率型
金利年0.457%
(B)
住宅ローン
手数料定額型
金利年0.757%
差額
(A-B)
事務手数料(税込)
648,000円
(借入金額×2.16%)
43,200円
(一律)
総支払額(元金+利息+手数料)
10年 31,352,636円
(内利息 704,638円)
31,216,110円
(内利息 1,172,910円)
136,526円
13年 31,561,874円
(内利息 913,874円)
31,566,623円
(内利息 1,523,423円)
▲4,749円
35年 33,124,947円
(内利息 2,476,947円)
34,215,651円
(内利息 4,172,451円)
▲1,090,704円

借入金額3,000万円・ボーナス返済なし・返済期間中金利変動がなかったと仮定した場合

 

団体信用保険料・保障内容

銀行の住宅ローンでは原則、団体信用生命保険(団信)への加入が条件となっています。団体信用保険料を別途支払う商品もありますが、金利に含まれる商品が主流となっています。

団体信用生命保険(団信)
住宅ローン返済期間中に債務者(住宅ローン利用者)に万一があった場合に備える保険で、万一の場合には保険金によってローン残金が精算され債務(ローン)が免除されます。

 

保障内容は銀行・商品により差がある

団信では死亡や高度障害状態の保障が基本です。銀行、商品によっては、がんなどの重大疾病を保障対象に含めるなど、保障の上乗せを選択できる場合もあります。

金利に含まれる保障範囲はどこまでなのか、金利を上乗せして保障を手厚くすべきなのか、その場合に金利はどうなるのか。住宅ローンを比較検討する際にはこれらのポイントを考慮しなければなりません。

また万一には生命保険や医療保険などで備える方法もあり、すでに加入している保険があれば保障の重複などにも注意が必要です。

団信保障内容と上乗せ金利(2019年8月適用金利・新規)
死亡・高度障害保障 上乗せ保障
三菱UFJ銀行 基本金利に含む 7大疾病保障
基本金利+年0.3%
みずほ銀行 基本金利に含む 8大疾病保障
年齢・借入条件等により個別計算
ガン団信
基本金利+年0.2%
新生銀行 基本金利に含む 介護保障
金利上乗せなし(安心パック利用の場合のみ保障)
住信SBIネット銀行 基本金利に含む 全疾病保障
ガン診断給付金(女性限定)
金利上乗せなし
ソニー銀行 基本金利に含む 【生活習慣病団信】
【3大疾病団信】
基本金利+年0.2%
【がん団信100】
基本金利+年0.1%
【がん団信50】
金利上乗せなし
イオン銀行 基本金利に含む 8大疾病保障
基本金利+年0.3%
ガン保障
基本金利+年0.1%
じぶん銀行 基本金利に含む 【11疾病保障団信】
基本金利+年0.3%
【がん100%保障団信】
基本金利+年0.2%
【がん50%保障団信】
金利上乗せなし
フラット35
(機構団信)
*取扱各行共通
基本金利に含む 【3大疾病保障】
基本金利+年0.24%
【夫婦連生団信】
基本金利+年0.18%

 

繰上返済や借り換えにかかるコスト

繰上返済や借り換えにかかるコスト

住宅ローンの契約後にも、繰上返済や借り換えを行う場合に手数料がかかります。

 

 

繰上返済手数料

インターネットでの繰上返済ができる場合、一部繰上返済についてはほとんどの銀行で手数料は無料です。

住宅ローンの借り換えなどで一括繰上返済を行う場合の手数料は基本的に有料ですが、無料としている銀行もあります。

繰上返済手数料(2019年8月現在・税込)
一部繰上返済 一括繰上返済(完済)
ネット 電話・窓口 ネット 電話・窓口
三菱UFJ銀行 0円 5,400円 16,200円 21,600円・
32,400円
みずほ銀行 32,400円 32,400円
新生銀行 原則0円(*1)
住信SBIネット銀行 0円・32,400円(*2)
ソニー銀行 0円
イオン銀行 54,000円
じぶん銀行 0円・32,400円(*2)

*1 安心パックWの契約で5年以内の完済では162,000円(税込)
*2 変動金利期間0円・固定金利特約期間中32,400円

保証会社を利用している場合、借り換えに伴う一括繰上返済には、上記のほかに保証会社への手数料が1万円程度かかります。

 

ネット銀行の住宅ローンの審査は厳しい?

ネット銀行の住宅ローンの審査は厳しい?

ネット銀行の住宅ローンは基本的に書類審査で行われるため、対面契約の場合に比べ審査基準が厳しくなっています。対面での契約であれば金利を調整するなど、個別の事情に配慮した柔軟な対応も期待できますが、ネット銀行ではそれが期待できません。

ネット専用住宅ローンであれば、従来型の銀行でも同様のことが言えます。

 

ネット銀行の住宅ローンのメリット

ネット銀行には以下のようなメリットがあります。

 

金利が比較的低い

ネット銀行のほうがメガバンクなどの従来型の銀行に比べ金利は低い傾向にあります。

とはいえネット専用住宅ローンなどでは従来型の銀行とネット銀行の差は小さくなっています。

借入条件によっては従来型銀行のほうが有利な金利となることもあり、先入観を持たず比較してみることが大切です。

 

来店不要で契約できる

ネット銀行の住宅ローンはインターネット、郵送で申込から契約までを行うため銀行まで出向く手間がかかりません。ただし郵送によるやりとりで書類などに不備があった場合、審査に時間がかかってしまうこともあります。

 

団信の保障が比較的手厚い

団信の保障範囲は死亡・高度障害状態が基本ですが、一部のネット銀行では保障範囲の広い団信を金利の上乗せなしで提供しています。

 

ネット銀行の住宅ローンのデメリット

ネット銀行の住宅ローンのデメリット

ネット銀行には以下のようなデメリットもあります。

 

審査が比較的厳しい

ネット銀行の審査は基本的に書類審査で行われるため、従来型の銀行に比べると審査は厳しい傾向があります。

 

対面での相談・サポートが受けられない

金利タイプや返済計画の立て方、審査などについて、対面で相談やサポートが受けられないことはネット銀行のデメリットと言えます。

この点についてはイオンモールなどに店舗のあるイオン銀行のほか、相談窓口を設けて対面相談や契約に対応する住信SBIネット銀行ソニー銀行など、選択肢は拡がっています。

 

ネット銀行の住宅ローンに関するまとめ

従来型の銀行がネット専用住宅ローンを扱い、ネット銀行が対面相談を行うなど、従来型銀行とネット銀行の垣根は小さくなっています。ネット銀行だから金利が低いといった先入観は捨てましょう。従来型の銀行を含めた幅広い選択肢から、金利以外の要素も考慮した上で最も条件のよい銀行を選ぶことが大切です。

 

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