- 育児中に、国などから受給できる給付金について分かります。
- 「育児休業給付金」は、パートタイマーでも受給できることがあります。
- 「児童手当」は、産後すぐ申請しないと受給額が減ることがあります。
- 給付金の振り込みスケジュールを実例で解説します。
公開日:2019年9月27日
出産や育児を控えた家庭では、収入が減る、出費が増えるといった不安要素が多くなります。今回は、育児に関する「給付金」、育児手当とも呼ばれるものを取り上げます。どんな給付金があるか?いつ、いくら貰えるのか?安心して育児をスタートするために、事前に確認しましょう。
目次
手当の名称 | 申請先 |
---|---|
育児休業給付金 | ハローワーク |
児童手当 | 市区町村 |
児童扶養手当 | 市区町村 |
手当ごとに、金額や要件を詳しく解説します。
「育児休業給付金」は、育児をするために仕事を休んだ場合に、減った給与の一部を補償する給付金です。
対象者 | 雇用保険の被保険者であり、次の条件を満たすもの
①1歳(最長で2歳)に満たない子を養育するため、休業をしている ②休業を開始した日前2年間に「みなし被保険者期間」が通算して12カ月以上ある |
---|---|
金額 | 休業開始時賃金日額×67%(休業開始から180日)
休業開始日賃金日額×50%(休業開始から181日以降) |
期間 | 育児休業期間中(原則1歳、最長で2歳) |
所得制限 | なし |
支払日 | 申請してから数カ月後に、原則として2カ月分ごと支払われる |
手続き方法 | 勤務先を通して、ハローワークへ申請 |
それぞれの条件を、具体例で考えてみます。
計算のもとになる給与は、休業を開始する前6カ月間の給与(保険料や税金を引く前の金額)を合計し、180で割って、1日あたりの賃金の平均を計算します。これが「休業開始時賃金日額」です。
育児休業に入る前に、月給30万円で引き続き勤務していた
(30万円×6カ月)÷180=10,000円 |
10,000円×67%=6,700円
6,700円×30=月額201,000円(最初の180日まで) |
10,000円×50%=5,000円
5,000円×30=月額150,000円(181日以降) |
なお、事業主が、休業期間中も給与を支払っている場合は、育児休業給付金の一部が減額されます。本来の給与の80%以上を受け取っている場合は、給付金は受給できません。
厚生年金保険・健康保険といった「社会保険」に加入している場合、普段の給与からは約15%の「社会保険料」が天引きされています。
育児休業期間中は社会保険料は免除になるので、「手元に入ってくる金額が67%に減る」わけではないのです。この場合、以前の手取り額の約8割ほどが収入になります。(181日以降は約6割ほど)
育児休業給付金は「雇用保険」から支払われます。「雇用保険」は、法律で決まっている条件を満たせば、事業主が必ず加入の手続きをとらないといけません。
毎月の給与明細を見ると、”雇用保険料”あるいは”労働保険料”という名前で保険料が天引きされていませんか?この保険料をもとに、育児休業給付金は支払われています。
休業前の2年間を1カ月毎に区切り、その24カ月のうち、給与を受けて働いている日が11日以上の月が12カ月以上あるかということす。
この「月」は、カレンダーでの1カ月ではありません。休業を開始した日の前日からさかのぼって、1カ月ごとに区切って考えます。例えば、2月15日から育児休業を開始したのであれば、1月15日から2月14日が1カ月です。
育児休業給付金は、育児休業終了後に復職することを前提に受給できます。出産・育児を機に退職するという場合には、受給することができません。
また、正社員だからといって、必ずしも育児休業が取得できるわけではありません。次の場合は、事業主が育児休業を認めないこともできるのです(ただし労使協定に定めた場合のみ)。
筆者の周囲でも実際にあるケースが、転職してすぐ妊娠が分かった場合、育児休業給付金を受け取れなかったというものす。産前産後休業を取得し、健康保険から出産手当金を受給することはできるでしょう。それでも、育児休業は取得できず、給付金も受け取れない…という場合があるのです。
育児休業が始まるのは、母親の場合「産前産後休業」が終わってからになります。例えば、4月1日に出産した場合、5月27日までは「産前産後休業」5月28日からは「育児休業」となります。
一方父親が取得する場合は、出産日から休業が取得できます。長期の休暇を取る必要はなく、育児休業1日や1週間でも構いません。
保育園に入園できず、いわゆる「待機児童」になったため復職できなかった場合は、育児休業の期間が延びることがあります。1歳になっても保育園に入れなかった場合は1歳6か月まで、1歳6カ月になっても保育園に入所できなかった場合は2歳まで休業を取得できます。
父母が、1日以上同時に育児休業をする場合は、1歳2カ月まで休業期間を延長できる特例もあります。「パパ・ママ育休プラス」と呼ばれています。ただし、産後休業を含めて1年間が限度なので、この制度を利用しても、母親が産後継続して1歳2カ月まで休業することはできません。
初回の給付金の申請手続きは、育児休業を開始した日から4か月を経過する日の属する月の末日です。申請期限に4か月半ほどの余裕があるので、会社がいつ申請したかによって、振込日は異なってくるのです。
ちなみに筆者が出産したときは、下記のように口座に振り込みがありました。勤務先が早めに申請手続きをしてくれた例です。
2月 | 3月 | 4月分 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 |
---|---|---|---|---|---|---|
出産 | 出産手当金
1回目 |
出産手当金
2回目 |
育児休業給付金
3,4月分 |
育児休業給付金
5,6月分 |
普段、会社に勤務していると、毎月決まった日に給与の振り込みがあります。ですが育児休業期間中は、収入が補償されるとはいえ、原則2カ月おき、それも2カ月も3カ月も遅れて振込があります。
生活費の支払いが滞らないか、事前に目途をつけておくことが必要です。出産のタイミングでは、転居したり、車を買い替えたり、ベビー用品を買い足したり、大きな出費が重なることもあります。
現在は、労働者が希望する場合は、1カ月毎の支給も可能になりました。「希望する場合」のため、申請をする勤務先に事前に伝えましょう。
勤務先と休業時期などを打合せしていれば、特段伝えなくても、勤務先が給付金の申請をしてくれることが多いです。ただし、今まで育児休業を取得した人がいない会社では、担当者も手続きについて詳しく知らない場合があります。
勤務先任せにしておくのではなく、育児休業給付金の手続きをお願いします、と一言伝えておきましょう。スムーズに職場復帰をするためにも勤務先とのコミュニケーションは大切です。
続いて「児童手当」について解説します。
対象者 | 中学校卒業までの児童を養育している人 |
---|---|
金額 | 3歳未満…15,000円
3歳以上~小学生…10,000円(第3子以降は15,000円) 中学生…10,000円 |
期間 | 15歳になった日の年度末(中学校卒業)まで |
所得制限 | あり |
支払日 | 6月、10月、2月に、前月までの4カ月分
何日に振込があるかは市区町村によってばらばら |
手続き | 受給権者(父母など)が市区町村に申請 |
第1子、第2子といった数え方は、きょうだいの人数ではありません。養育している児童のうち、高校卒業までの子供(18歳の誕生日の年度末までの子)の何番目かということです。
19歳 大学生 | 支給なし | ー |
---|---|---|
17歳 高校生 | 支給なし | 第1子 |
11歳 小学生 | 10,000円 | 第2子 |
10歳 小学生 | 15,000円 | 第3子 |
このように、第3子以降は、小学校を卒業するまで15,000円に増額されます。
子供1人あたり、0歳から15歳までに受け取れる金額は最低でも197万5千円。生まれ月やきょうだいの有無によっては、さらに増額されます。
大学4年間にかかる教育費は、国立大学でも約539万円が平均です。児童手当を貯金や積立投資に回せば、教育資金の一部として準備できます。
注意したいのは、児童手当の申請期限が短いことです。最短で15日です。
月の前半に生まれた場合 | その月の末日まで |
---|---|
月の後半に生まれた場合 | 出生日の翌日から15日以内 |
申請が遅れると、原則として遅れた月の手当は受給できなくなります。1カ月分の支給額が減ると、15,000円分が受給できなくなります。
子供の名前などを届け出る「出生届」の提出期限が、出生日から14日以内です。出生届と児童手当の申請は期限が同じぐらいですから、併せて手続きするといいでしょう。
必要な書類は市区町村によって違います。筆者の住んでいる松山市の例を参考に記載します。
添付書類が全て揃っていなくても、申請書だけで一旦受け付けてくれる場合もあります。繰り返しますが、申請が遅れないことが大切です。
申請後は毎年、6月上旬ごろに「現況届」という書類が届きます。前回の申請時点から、家族の状況に変更があったかを申し出る書類です。提出期限は6月末です。
現況届自体は、記入欄はそう多くはありません(署名・捺印・該当欄にチェックなど)。添付書類として、受給権者(児童の父もしくは母など)の健康保険証のコピーが必要になります。書類を揃えて、市区町村の窓口に持っていきましょう。無事に手続きが完了したら、10月の受給日前に、支給が決定した旨の通知書が届きます。
市区町村をまたいで引っ越した場合は、転居後の市区町村で再度児童手当の請求を行う必要があります。期限は出生した時と同じです。転入したのが月の前半であれば当月末日まで、月の後半であれば15日以内に申請します。忘れていると、申請が遅れた分の手当は受け取れなくなります。
申請期限どおりに手続きをすれば、出生日の翌月分から支給されます。ただし、すぐには振り込まれません。年3回、6月・10月・2月に、前月までの4カ月分がまとめて支払われます。
2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 |
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誕生
申請 |
3~5月分
支給 45,000円 |
6~9月分
支給 60,000円 |
年収が高い場合は所得制限があります。原則、父母のうち所得の高いほうで判定します。
扶養親族等の数 | 所得制限限度額(万円) | 収入額の目安(万円)
給与収入のみの場合 |
---|---|---|
0人 | 622 | 833.3 |
1人 | 660 | 875.6 |
2人 | 698 | 917.8 |
3人 | 736 | 960.0 |
4人 | 774 | 1002.1 |
5人 | 812 | 1042.1 |
所得制限額以上の収入がある場合は、代わりに特例給付が支給されます。金額は年齢にかかわらず、児童1人あたり月額5,000円です。
「児童手当」とよく似た名前の給付金に「児童扶養手当」があります。誰でも受給できるわけではなく、父または母がいないなど、次の理由に該当する家庭に受給資格があります。
申請先は市区町村です。児童1人の場合、42,910円~10,120円(平成31年4月の月額)が支給されます。所得制限があり、所得にが上がるのに応じて段階的に支給額が減ります。
各市区町村のホームページに情報が掲載されていることもありますが、細かい要件を記載していないところもあります。お住いの市区町村の窓口に問い合わせて確認してみましょう。ひとり親家庭には、児童扶養手当に限らず、医療費の無償化など様々な支援が準備されていますので、併せて確認しましょう。
勤務先やお住いの自治体によっては、法律で決まった給付と別に、独自で手厚い給付を準備していることもあります。
「情報不足で申請出来ていなかった…」「もらえないと思い込んでいた…」といったことがないように、市区町村の窓口や勤務先などに電話で問い合わせたり、足を運んで情報収集してみましょう。
条件を満たせば、申請するだけで受け取れる給付金を紹介しました。これらの給付金は、受給するメリットはあってもデメリットはありません。
出産後は忙しくなるものです。慌ただしい中でも申請できるように、給付金を含めた必要な手続きは事前にリストアップすることをお勧めします。
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