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母子家庭になると、自分で働いて子供を養っていかなければなりません。生活費の中でも特に大きな負担となるのが家賃ですが、住宅手当が受けられると心強いはずです。
本記事では、母子家庭の受けられる住宅手当について説明します。離婚したら住宅手当がもらえるのかどうか、もらえる場合には金額はどれくらいになるのかを知っておきましょう。
子供を連れて離婚したシングルマザーには、子供と一緒に暮らす住居が必要です。シングルマザーの住居の状況はどうなっているのでしょうか?
厚生労働省が行っている「全国ひとり親世帯等調査(平成28年度)」によると、母子世帯の住居所有状況は次のようになっています。
母子世帯のうち、持家に住んでいる人の割合は全体の35.0%です。ちなみに、本人名義の持家に住んでいる人の割合は全体の15.2%なので、他人名義の家に住んでいる人が多いことになります。また、親などと同居している人の割合は13.2%です。
残りの約半数は民間の賃貸住宅、公社・公団住宅、公営住宅に住んでいます。つまり、シングルマザーの2人に1人は家賃を払いながら生活していることになります。
家賃を払って家を借りる場合、公営住宅に入ることができれば家賃負担は抑えられます。公営住宅とは、都道府県営住宅や市町村営住宅です。主に低所得者層を対象にしているため、収入などの条件が設けられています。
公営住宅の家賃は、どの人も同じではなく収入によって変わります。公営住宅なら無理のない家賃額が設定されるので、住居費の負担が軽くなります。
自治体によっては公営住宅の入居希望者の数が多く、入居できるかどうかは抽選になるところもあります。ただし、母子家庭は公営住宅に優先的に入居できる取り扱いをしている自治体も多くなっています。
自治体が直接運営している公営住宅と違い、公社・公団住宅は公的な団体・組織が運営している賃貸住宅です。公営住宅の場合には低所得者を対象としているので所得が一定額以下という基準がありますが、公社・公団住宅は通常、一定額以上の所得がある人でなければ入れません。
なお、公社・公団住宅では公営住宅のように家賃が所得に応じて変わるということはなく、入居する部屋に応じて決まった家賃を払います。
公営住宅に入れない場合には、民間の賃貸住宅を探さなければなりません。また、公営住宅が近くにないなどの事情で、民間賃貸住宅に入らざるを得ないこともあると思います。
民間の賃貸住宅に入る場合には家賃負担が大きくなってしまいます。母子家庭だからと言って、大家さんが家賃を安くしてくれるということは通常ありません。
家賃の相場は地域によって異なります。また、間取り、築年数、駅からの距離など様々な条件によって左右されます。
家探しに慣れていない人は、賃貸住宅の家賃の相場がわかりにくいと思います。離婚する前から不動産情報サイトなどで物件情報を検索し、相場感覚を掴んでおくようにしましょう。
会社によっては、福利厚生の一環として従業員に住宅手当を支給しているところもあるでしょう。離婚して自分で家賃を払うようになると勤務先から住宅手当がもらえることがあります。
離婚した後にどれくらいの生活費がかかるのかは人それぞれです。自分の場合にはいくら生活費がかかるのかをあらかじめしっかり見積もっておき、それを賄えるだけの収入が得られるよう生活設計することが大切です。
シングルマザーの生活費については、以下の記事をご参照ください。
賃貸住宅の家賃を自分で払うシングルマザーは、「住居費の支援がないか?」と考えることがあるでしょう。住んでいる地域によっては、住宅手当や家賃補助が受けられることがあります。
母子家庭に対しては、生活の安定と自立の促進のため、法律にもとづき自治体から児童扶養手当が支給されます。児童扶養手当は全国共通の制度です。
一方、住宅に関しては、母子家庭向けの全国共通の手当、助成金、給付金、補助金などはありません。
母子家庭が受けられる児童扶養手当や児童手当などの支援や援助、優遇制度については、以下の記事をご参照ください。
母子家庭に対しては全国共通の住宅支援制度はありませんが、各自治体で独自に住宅支援を行っている場合があります。支援の内容は自治体によって異なりますが、住宅手当、家賃補助、住宅費助成金などとして、一定額が支給されるのが一般的です。
母子家庭向けの住宅手当や家賃補助の内容は、自治体によって違います。自分の住んでいる自治体で住宅支援が受けられないか、受けられる条件はどうなっているかを確認しておきましょう。
母子家庭向けに住宅手当や家賃補助を行っている自治体でも、家賃の全額を補助してもらえるわけではなく、援助してもらえるのは家賃の一部です。ただし、単に母子家庭であれば支援してもらえるのではなく、所得が一定額以下という所得制限があります。
なお、その自治体に一定期間以上住んでいることを要件にしている自治体も多いので、引っ越してすぐに住宅手当をもらえるとは限りません。
生活保護を受給しているシングルマザーは、母子家庭を対象とした住宅手当や家賃補助は受けられません。生活保護では、住宅扶助として家賃分が支給されるからです。
母子家庭の生活保護については、以下の記事をご参照ください。
自治体によっては、毎月の家賃だけでなく、賃貸借契約締結時に保証会社を利用した場合の保証料について一部を助成してもらえるところもあります。(例:埼玉県蕨市、兵庫県神戸市など)
ひとり親家庭(母子家庭・父子家庭)に向けた住宅支援制度を設けている自治体は少なくありません。特に、家賃の高い関東では多くの自治体が住宅支援を行っています。ここでは、支援を行っている自治体をいくつかピックアップしてご紹介します。
武蔵野市では「ひとり親家庭等住宅費助成制度」として、ひとり親家庭に助成金を支給しています。
助成金の額 | 月額1万円(家賃が1万円以下の場合は支払家賃相当額) |
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要件 | ・20歳未満の児童がいるひとり親家庭
・武蔵野市に6か月以上居住 ・民間の賃貸住宅を借りて家賃を払っている ・所得制限あり |
東久留米市には「ひとり親家庭住宅手当」の制度を設けています。
手当の額 | 月額3,500円 |
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要件 | ・18歳未満の子供と同居するひとり親家庭
・民間賃貸住宅を借りて家賃を払っている ・所得制限あり |
東京都国立市では、民間賃貸住宅に住むひとり親家庭の住宅費の助成を行っています。
助成額 | 家賃の3分の1の金額(上限1万円) |
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要件 | ・国立市に3年以上居住
・18歳未満の子供がいるひとり親家庭 ・児童扶養手当の全部支給の所得制限未満 |
浦安市では「ひとり親家庭住宅手当」として、母子家庭等に住宅手当を支給しています。
手当の額 | 家賃1万円を超えた額に対し、月額1万5,000円を限度として支給 |
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要件 | ・20歳未満の児童がいるひとり親家庭
・自分名義の賃貸借契約を結んでいること(貸主が3親等以内の親族や元配偶者の場合は不可) ・所得制限あり |
厚木市には「母子家庭等家賃助成」制度があります。
助成金額 | 家賃月額に応じて1,300円から1万円 |
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要件 | ・18歳になった次の3月31日までの子供と同居しているひとり親家庭
・家賃月額が1万円以上5万円以下 ・所得制限あり |
鎌倉市では「ひとり親家庭等家賃助成制度」により、母子・父子家庭の家賃の一部を助成しています。
助成金額 | 家賃から1万5,000円を控除した額(上限額9,000円) |
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要件 | ・20歳未満の子供がいるひとり親家庭
・鎌倉市に1年以上居住 ・家賃1万5,000円~8万円の民間賃貸住宅に居住 ・所得制限あり |
大和市では、「ひとり親家庭等家賃助成」として、ひとり親家庭の家賃の一部を助成しています。
助成金額 | 月額家賃から2万4,000円を控除した額で、上限1万円 |
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要件 | ・大和市に1年以上居住
・20歳未満の子供がいるひとり親家庭 ・家賃月額が2万4,000円を超えている ・所得制限あり |
埼玉県蕨市では、「ひとり親世帯民間賃貸住宅家賃助成」として、民間の賃貸住宅に入居している母子家庭・父子家庭の家賃の一部を助成しています。
助成金額 | 家賃1万円以上3万円未満の場合6,000円、家賃3万円以上6万円以下の場合1万円 |
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要件 | ・蕨市に1年以上居住
・前年度の市民税が非課税 ・月額1万円以上6万円以下の家賃を払っている |
神戸市では、公営住宅の抽選に落選したひとり親世帯を対象に補助金を支給する「ひとり親世帯家賃補助制度」が実施されています。
補助金額 | 月額1万5,000円 |
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要件 | ・18歳になった次の3月31日までの子供がいるひとり親家庭
・世帯全員の所得合算額が市営住宅の収入基準をみたしている ・住宅要件あり ・2020年1月31日までの期間で予算件数に達するまで |
武雄市では平成30年度より「ひとり親家庭等の家賃助成事業」を開始しており、児童扶養手当等の新規認定から6か月間、家賃の一部を助成しています。
助成金額 | 家賃月額から市で定める額等を差し引いた額の2分の1(1,000円未満切り捨て)で上限10,000円 |
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要件 | ・児童扶養手当等の新規認定を受けた
・民間賃貸住宅に居住 |
母子家庭の場合、住んでいる自治体から住宅手当や家賃補助といった住宅支援が受けられることがあります。特に、家賃が高いと言われる関東地区ではひとり親家庭向けの住宅支援制度を設けている自治体が多いので、離婚する前にあらかじめ確認しておきましょう。
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