- 日本では母子家庭の半数以上が貧困。
- シングルマザーは思うように働けず、十分な稼ぎにならないことがある。
- 元夫から養育費をもらっていないこともシングルマザーの貧困の原因。
- シングルマザーも困ったら周りに助けを求めることが大事。
公開日:2019年9月11日
「離婚をしたいけれど、経済的に苦しくなってしまうのが心配…」という女性は多いのではないでしょうか?シングルマザーの貧困は、社会問題にもなっています。
本記事では、シングルマザーがなぜ貧困になってしまうのか、その原因について分析し、母子家庭が抱える問題を解決する方法について考えてみたいと思います。
目次
日本のシングルマザーの貧困は、思いのほか深刻です。母子家庭の貧困率がどれくらいなのかを知っておきましょう。
貧困世帯の割合を知る手がかりになるのが、「相対的貧困率」という指標です。
貧困には絶対的貧困と相対的貧困があります。大まかに言うと、絶対的貧困は人間として最低限の生活を維持するのが困難な状態、相対的貧困はその国の経済的・文化的水準を考えたときに困窮している状態になります。
日本の相対的貧困率を知れば、日本の標準的な生活水準に満たない世帯の割合を知ることができます。厚生労働省が行っている国民生活基礎調査(平成28年度)によると、日本全体の相対的貧困率は15.7%となっており、7人に1人が相対的貧困の状態です。
国民生活基礎調査(平成28年度)では、子供がいる現役世帯のうち大人が1人の世帯、すなわち、ひとり親家庭(母子家庭・父子家庭)の相対的貧困率は50.8%という結果が出ています。
ひとり親家庭の約85%は母子家庭ですが、母子家庭に限った場合には、さらに比率は高くなることが推測されます。母子家庭の半数以上が貧困に陥っているのが日本の現状です。
OECD(経済協力開発機構)では、2000年代半ばまでの加盟国の相対的貧困率を公表しています。これによると、日本の相対的貧困率は小さい順から並べたときに30か国中27位で、先進国の中でも相対的貧困率が高い国であることがわかります。
特に、日本におけるひとり親家庭の相対的貧困率は、30か国中最も高いという結果が出ています。
母子だけで生活していくためには、住む場所を確保し、家賃や光熱費を払わなければなりません。
しかし、貧困に陥っていれば、家賃等を払ってしまうと使えるお金がほとんどなくなり、ご飯もろくに食べられないことになってしまいます。値段の安いジャンクフードばかりを食べてしまい、健康を損ねることもあるでしょう。
貧困に陥ると、子供を高校や大学へ進学させるのも困難です。母子家庭では、子供も中学や高校卒業後、早い時期から働かなければならくなってしまいます。子供も十分な教育を受ける機会を逃してしまい、貧困の連鎖を起こしてしまうのです。
シングルマザーが貧困に陥る原因としては、いろいろな要素が絡み合っています。シングルマザーの多くが貧困という事実から、女性の働き方や貧困の連鎖など、解決しなければならない問題が浮き彫りになってきます。
次項から、シングルマザーの貧困の原因について分析してみます。
働く女性が増えたとはいっても、職場における女性の待遇はまだまだ男性並みとは言えません。特に子供を産んだ後、女性は働きにくくなってしまいます。シングルマザーが貧困になってしまうのは、思うように働けないという理由もあります。
シングルマザーが子供を預けて働くには、子供の預け先が必要です。実家を頼ることができるシングルマザーはごく一部ですから、子供を保育所に預けなければなりません。日本ではそもそも保育所が不足している状態なので、入れる保育所がすぐに見つからないことがあります。
子供を保育所に預けられたとしても、夕方決まった時間までにはお迎えに行かなければなりません。子供の病気の際には、仕事を休んで看病しなければならないこともあるでしょう。
シングルマザーは、代わりにお迎えに行ってもらったり子供の看病をしてもらったりする人がいないことがあります。職場に迷惑がかかるおそれがあるため、シングルマザーは正規雇用では採用されにくいのです。
子供を預けられる時間が限られていれば、短時間のパートやアルバイトでしか働けません。パートやアルバイトでは、親子で暮らしていくのに十分な収入にならないことが多いはずです。
結婚していて共働きの間はパートやアルバイトでも何とかなったかもしれませんが、シングルマザーになると、生活費は全部自分の収入でまかなわなければなりません。切り詰めても生活が苦しいということになってしまいます。
シングルマザーになっても、子供の父親が元気で働いていれば養育費をもらうことができます。しかし、現実には養育費をもらっていないシングルマザーが大半です。
離婚しても父親と子供の関係は変わりません。父親は子供と別居していても、養育費を払って子供を扶養する義務があります。離婚後のシングルマザーは、元夫から養育費をもらうことができれば生活も随分楽になるでしょう。
日本では養育費を父親側から強制的に徴収するような制度はなく、夫婦間の取り決めにゆだねられています。しかし、実際には取り決めができていなかったり、取り決めしていても養育費が払われなかったりするケースが多くなっています。
平成28年度に厚生労働省が行った「全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯のうち養育費を継続的に受け取っている世帯の割合は25.4%となっています。
今の日本では、シングルマザーになっても、4人に1人しか養育費を受け取っていないのが現状です。自分が働いて得られる収入だけでは、子供を育てていくのに十分ではないでしょう。養育費を受け取っていないことも、シングルマザーの貧困の原因と言えます。
シングルマザーの中には何もかも一人で抱え込んでしまい、身動きできなくなっている人もいるはずです。周りの人にSOSを出すことができなければ、どんどん深刻な事態に陥ってしまいます。
現代の子育ては、たとえ離婚しなくても孤独なものになっています。大家族で暮らしていた昔と違って、今は子育てを助けてもらう親や親戚が身近にいないことが多いでしょう。
近所付き合いもなく、近くに友人・知人もいなければ頼れる人が誰もいません。離婚すれば夫を頼ることもできず、ますます孤独になってしまいます。
シングルマザーは困っていても人に相談しにくいことがあります。今の日本では、大部分の人が離婚に対してネガティブな印象を持っています。シングルマザーというだけで偏見を持つ人も少なくありません。
「離婚は自分の責任だから、困っても自分で何とかすべき」という自己責任の風潮もあり、人に相談すること自体を躊躇してしまうシングルマザーも多いのです。
誰にも助けを求められなければ、どんどん状況は悪化してしまいます。そしてひとたび貧困になってしまうと、なかなか抜けられないことになるのです。
シングルマザーの貧困の現状を知ると、離婚を迷ってしまう人も多いと思います。シングルマザーが貧困に陥らないためには何に気を付けておけばよいのでしょうか?
女性が離婚後に貧困に陥らないようにするためには、経済的に自立できる力を持っておくことが何よりも大切です。離婚の準備をするなら、安定した仕事を確保することを最優先にしましょう。
あまり働いた経験がない人や、結婚してからのブランクが長い人は、好条件の仕事が見つからないかもしれません。しかし、最初は条件が悪くても未経験から少しずつスキルアップし、収入を増やしている可能性もあります。
時給だけを見て短期や単発のアルバイトで当座のお金を稼ぐよりも、長く安定して働ける仕事を探した方がよいでしょう。
貧困にならないためには、できるかぎり円満離婚をすることも大切です。養育費についても、きちんと話し合って取り決めおきましょう。どうしても顔を合わせて話し合いができない場合には、離婚調停を申し立てる方法があります。
養育費をきちんと払い続けてもらうためには、子供と父親との関係が良好であることが欠かせません。離れている父親にも子供の成長を喜んでもらえるよう、積極的に面会の機会を設けましょう。
シングルマザーになっても、何もかも一人で頑張る必要はありません。母子だけで生活するなら、困ったときに頼れる人がたくさんいることがとても大切になってきます。友人や知人を大事にし、実家などを頼れるなら頼りましょう。
人に頼ることは悪いことではありません。迷惑をかけた分は後で返すことができます。人に助けてもらうことで感謝の気持ちを持ち、自分も人のためにできることをしてあげようという気持ちになるはずです。
たとえ父親がいなくても、たくさんの人に見守られていれば子供はのびのびと成長します。自分のためにも、子供のためにも、ネットワークを広げておきましょう。
母子家庭になったけれど生活が苦しいという場合、決して一人で悩まないようにしましょう。母子家庭向けの支援制度もあります。役所に相談し、今、何をすべきかを整理することが大切です。
自治体等で、シングルマザーが受けられる支援制度が用意されています。受けられる支援制度がないか確認してみましょう。
シングルマザー向けの支援制度は、自分で請求・申請しなければ受けられません。ホームページを確認したり、自治体の窓口に相談したりして、自分で情報収集をしましょう。
シングルマザーが受けられる手当や支援制度については、こちらの記事をご参照ください。
離婚のときに養育費の取り決めをしていなくても諦める必要はありません。未成熟子を養育している場合、離れている父親に対してはいつでも養育費を請求できます。
直接養育費を請求しにくい場合には、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てることも可能です。
シングルマザーの貧困は社会問題にもなっているので、どこの自治体でもひとり親家庭向けの相談窓口を設けています。困ったとき、どこに相談に行ったらよいかわからないときには、まずは役所に聞いてみましょう。
シングルマザーの場合、食べていくだけで精一杯で、子供の教育までお金をかけられないという人が多いと思います。けれど、子供を貧困にしないために教育は重要です。
貧困は連鎖すると言われています。貧困の連鎖とは、親が貧困であると子供も貧困になってしまうということです。
母子家庭では、お金がないからという理由で子供の進学を諦めることもあるかもしれません。けれど、貧困を理由に教育を受ける機会を逃した子供は、十分な収入を得られる仕事につけず、将来的にも貧困になってしまう傾向があります。
進学費用が用意できない場合には、奨学金を利用するという方法があります。奨学金は借金なので敬遠する人もいますが、子供自身に学ぶ意欲があるのなら、進学を前向きに検討するのがおすすめです。
奨学金の中には返還不要の給付奨学金もありますから活用しましょう。2020年度からは日本学生支援機構の給付奨学金制度が拡充され、対象の大学や専門学校に進学する際に、より多くの学生が給付奨学金をもらえるようになります。
たとえば、住民税非課税世帯から私立大学に自宅通学させる場合、要件を満たせば月額3万8,300円の給付奨学金がもらえます。教育の重要性を認識し、母子家庭であっても子供にはしっかりと学ぶ機会を与えましょう。
一人で子供を育てるシングルマザーは、パートやアルバイトでしか働けず、十分な収入が得られないケースが多くなっています。養育費をもらえなければ、生活費が足りずに貧困になってしまうのも無理はないでしょう。
生活が苦しくてどうしようもないなら、一人で悩まず誰かに助けを求めることが大切です。これから離婚を考えている人も、自立できる仕事を探すと同時に、ネットワークを築いておくことを重視しましょう。
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