- 普段確定申告をしない方は、ワンストップ特例制度を利用すれば確定申告不要でふるさと納税ができる。
- ワンストップ特例制度を利用すると、確定申告は不要でもワンストップ特例制度の申請手続きは必要。
- ワンストップ特例制度の申請手続きの期限は翌年1月10日までと確定申告より早い。
- ワンストップ特例制度は便利だが、確定申告をしてしまうと無効となる。申請手続きミスにも注意が必要。
公開日:2019年12月24日
年末になり、「ふるさと納税をどうしようか?」とお考えの方も少なくないのではないでしょうか。
その中でサラリーマンの方等、普段は年末調整にて税金の手続きを済ませている方だと、ワンストップ特例の利用を検討されていらっしゃる方も多いかと思います。
そこで、今回は当該制度の利用を検討中の方向けに制度の概要、手続きの流れや利用中の注意するポイントについて記載したいと思います。
目次
当該制度は、寄付先の市区町村が5つまでの方であれば確定申告を不要でふるさと納税を実施できる制度です。5つ以下とは、「納税先が5市区町村以下」を指します。すなわち、同じ市区町村なら2回以上申込しても計算上は1つです。
ですので例えば、すでに4つの市区町村に申し込んでいたら、もう1つの市区町村に季節ごとに年に4回申し込むことは可能です。
一言でいえば、確定申告をする必要のない方が対象です。ですので、たいていのサラリーマンの方であれば特例を利用することが可能です。反対に利用ができない方のうち代表的な方は以下の通りです。
ワンストップ特例制度の利用の流れは下記の3ステップです。それぞれのポイントをまとめていますので、ご確認下さい。
欲しい返礼品を提供している対象自治体を選んで申し込みをします。
寄付すると、特例の利用を申請する申請書が寄付先の市区町村から送られてくるので、この申請書が寄付先の市区町村からどのタイミングで送られてくるのか、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
また、特例を利用することは申込時に申し出る必要があります。
寄付先の市区町村から送られてきた申請書に記入します。書類の宛先は寄付先の市区町村です。
手続きの期限は翌年1月10日までとタイトです。ですので、なるべく早めの手続きを行う必要がある点が通常の確定申告との大きな違いであると言えます。なお、この手続きは1件1件の申し込みのたびに必要です。
特例を活用したふるさと納税では全額住民税からの減税となります。所得税からではありません。住民税は前年の所得に応じて課税されるので、減税が反映されるのは翌年度の税金額からです。
サラリーマンの方であれば、翌年6月頃にお勤め先で配布される住民税決定通知書で控除される住民税額を確認できます。所得税と違い減税額が還付されるわけではありません。
通常のふるさと納税と特例を利用した場合との違いは主に以下の通りです。
特例を利用する方が手続きも減税額の確認もシンプルに行うことができるので、サラリーマンの方等の普段確定申告をしない方であれば、利用する価値があると考えることができると思います。
この理解は申請の手続きのミスを防ぐためにも必要ですので、2つをしっかり区別して下さい。
大きな違いは主に以下の3点です。
通常のふるさと納税 | 特例利用のふるさと納税 | |
---|---|---|
減税となる税金 | 所得税と住民税 | 住民税のみ |
確定申告の要否 | 必要(翌年3月15日まで) | 不要(※申請書提出を翌年1月10日までに行う必要はあり) |
手続きの回数 | 年に1回(確定申告書等の提出) | 納税を行う度に必要(申請書の提出) |
減税となる税金の書類は違いますが減税額は同額なので、どっちがお得ということはなく差はありません。ただ、金額の確認のしやすさは特例を利用したふるさと納税の方がわかりやすいです。
通常のふるさと納税では所得税は還付金として返ってくる一方で、住民税は翌年の税金から減額になるという形になり、減税の仕組みが複雑です。特例利用では住民税一本の減税なのでそうとはなりません。
双方の違いから特例を利用するメリットとデメリットをまとめると以下の通りです。プラスの側面が強調されがちですが、マイナスの側面もあるのでその点についても気をつけて下さい。
メリット | 税金の申告手続きが簡単。
減税額の確認もシンプルに行うことができる。 |
---|---|
デメリット | ふるさと納税実施ごとに書類を市区町村に送付する必要がある。
申告の締め切りが1月10日までと確定申告より早く行う必要がある。 |
特例の申請時には、申請書、個人番号確認書類、本人確認書類の3つが必要です。提出先は支援した全ての市区町村です。
個人番号確認書類は通知カード等が該当し、本人確認書類は免許証等です。なお、手続きは同じ自治体に複数回寄付してもその都度必要になる点も注意が必要です。以下、それぞれの書類の書き方や用意の仕方について記載します。
申請書の記載項目はさほど多くなく書き方はシンプルです。各市区町村のホームページにて記入例も掲載されていますので、参考にしてみるとよいでしょう。
なお、印鑑は漏れがちな点なので記入後の最終確認で忘れずにチェックして下さい。また、個人番号の記入も必要ですので、書類に記入する前からマイナンバーカード等がお手元にあることを確認しましょう。
ご参考に記入見本のサンプルを以下掲載します。
出典:武蔵野市ホームページ
申請書を記載した後に引っ越しをするなど記載事項に変更があった場合には、変更の申請書の送付もそれぞれの市区町村に行う必要がある点は注意が必要です。この変更申請書の提出期限も翌年度の1月10日までです。
この書類の記入例も各市区町村のホームページにて掲載されています。こちらもご参考に記入見本のサンプルを以下掲載します。
出典:武蔵野市ホームページ
当該申請書には、個人番号確認書類と本人確認書類を添付する必要があります。本人確認書類には顔写真があり、氏名、住所、生年月日の記載があることが必要です。
ですので例えば、免許証を利用するときに住所変更等で裏面の記載もあるときは、裏面のコピーも忘れないようにして下さい。また有効期限も切れていないかも念のため確認しましょう。
個人番号確認書類がマイナンバーカードであれば、本人確認書類としても有効ですが、通知カードであればそうではなので、別途の書類が必要です。
個人番号確認書類がマイナンバーカードの場合 | マイナンバーカードの両面をそれぞれコピーして送付。 |
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個人番号確認書類が通知カードの場合 | 通知カードのコピーに加えて顔写真付きの本人確認書類(免許証等)をコピーして送付。 |
再発行を住所地のある各市区町村に依頼するのが一番ですが、急ぎであればマイナンバーありの住民票を発行する方がスピーディーです。締め切りが迫っているケースでは、この書類を通知カードの代わりに使用することも可能です。
申請書は支援した市区町村から郵送される場合もありますが、各市区町村や総務省のホームページからダウンロードすることも可能です。今年分の締め切りは後わずかなので、お手元にない場合はダウンロードして書類を入手しましょう。
ワンストップ特例制度を利用しようと思っていても使えなくなる条件は以下の2つです。いずれも後から有効にするということはできないので、事前に必ず確認するようにして下さい。
翌年の1月10日までに特例の利用申請をできなかったり、申請を忘れてしまった場合には、通常通りに確定申告をすることが必要です。特例を利用しないからといってペナルティがあるわけではありません。
ただ、普段確定申告しない方が確定申告書を作成するのはかなり手間がかかるので、期限内に手続きが完了するようにスケジュールを意識しましょう。
特例の利用の手続きが完了したものの、その後に所得税の確定申告(還付申告を含む。)を行った場合、特例申請は不適用(無効)となります。この場合、申告特例控除額等が「なかったもの」として計算されるので注意しましょう。
ワンストップ特例を利用する場合に間違えやすく注意が必要な点は主に以下の8つです。言われてみたら当たり前に感じることもあるかもしれませんが、年末の慌ただしい時期にはやってしまいがちな事例なのでぜひ確認してみて下さい。
特例を利用するつもりで手続きをしていても、年末に医療費控除等が利用できることに気がついて「うっかり」確定申告をしてしまうケースもあり得ます。
ふるさと納税以外に所得控除を利用する可能性があるかどうかは、できればふるさと納税を行う前に確認しておいた方が無難です。
あらかじめ検討して所得控除を利用する可能性がないことがわかれば、安心して特例を利用することができます。
ワンストップ特例の利用も確定申告も、税金に関する手続きが必要になる点は変わりません。そのため、両方の制度が頭のなかで「ごっちゃ」になってしまいがちです。
しかし、特例の利用は確定申告とは手続きの方法が異なります。確定申告のように翌年3月15日までではなく翌年1月10日までである点も間違えないようにしましょう。
ふるさと納税に関連したサービスを提供する民間業者のウェブサイトから特例の申請に必要な書類を入手することができる場合もあります。
ただ、これはあくまで手続きに必要な「書類の入手」であって、「手続き」そのものとは別個のものです。申請書類はご自身で支援先の市区町村に郵送しなければなりません。
ふるさと納税を行うとそこでホッとしてしまい、その後支援先の市区町村より送付される寄附金受領証明書を確認しないケースもあります。郵送後、未確認な場合に加え不要な書類だと勘違いし破棄してしまう場合もあり得ます。
手続きの期限が年始の慌ただしい時期になっているため、期限ギリギリになって証明書を探していて提出遅延も考えられます。ふるさと納税実施後は証明書のチェックまでしっかり確認するようにしましょう。
特例による申請書の送付は支援した全ての市区町村に行う必要があります。さらにいえば、同じ自治体に複数回寄付した場合にも、必ずふるさと納税の回数に応じた書類が必要となります。
複数のふるさと納税を行った方は注意して下さい。(1件の寄付につき1枚必要です)
住宅ローン控除は所得税から減税され残額があれば住民税から減税されます。このとき少なくとも住民税が全額差し引かれることはありません。一方で特例による所得減税は全額住民税から行われます。
ですので、住宅ローン控除で所得税が0円になっても、ふるさと納税を利用することでさらに減税効果を期待できます。
両者の減税の仕組みの詳細は下記記事を御覧下さい。
欲しい返礼品があると、その返礼品がもらえる金額までふるさと納税を行ってしまい、「うっかり」ふるさと納税の上限金額をオーバーしてしまうケースもあります。
オーバーしたとしても返礼品は受け取ることが可能ですが、もちろん、減税額は少なくなります。ふるさと納税は返礼品選びから始めるのではなく、まずは所得控除の上限額から確認するようにしましょう。
上限額の目安は、総務省のウェブサイトにて確認可能です。
出典:総務省 ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税は減税されるわけですので、そもそも税金がかかっていない方や専業主婦の方など収入のない方は、当然ながら所得控除されることはありません。
元々、旦那様の名義で手続きするところを「うっかり」奥様名義で手続きしてしまうケースがありがちな失敗例ですので、ご家庭のある方は誰の名義でふるさと納税を行うかも注意して下さい。
ふるさと納税を利用する場合、ワンストップ特例制度を利用することで確定申告することなくシンプルに税金の手続きができます。しかし、手続きそのものは必要ですし、他の所得控除と混同することでかえって混乱してしまうケースもあり得ます。
本年度の期限が迫っていますが、ポイントを押さえて一つ一つ確実に手続きを進めていきましょう。
ふるさと納税をこれから初められる方には、ネットでカンタンにふるさと納税が行えるCMでもお馴染みの「さとふる」がおすすめです。
自身の利用できる限度額の計算ができる控除額シミュレーションや、確定申告・ワンストップ特例制度の仕組みなどもわかりやすく解説されていて初心者の方でも利用しやすいです。