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個人事業主が利用できる融資制度とは?事業資金調達をするための基礎知識をFPが解説

個人事業主が利用できる融資制度とは?事業資金調達をするための基礎知識をFPが解説

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棚田 健大郎

棚田 健大郎

行政書士、国土交通大臣指定 マンション管理士、ファイナンシャルプランナー

大手人材派遣会社に正社員として入社。 主要取引先であったJASDAQ上場(当時)の株式会社エイブルへ出向。 その後ヘッドハンティングされ、完全に移籍。およそ3,000人の社員の中で、トップセールスを記録するなどして活躍。 その後管理職として複数年勤務後、独立。 行政書士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得し、棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

この記事のポイント

  • 日本政策金融公庫は個人事業主にも積極的に融資を行っている。
  • 民間の金融機関では、信用金庫、信用組合、地方銀行などが個人事業主でも比較的利用しやすい。
  • 事業計画書を作成する際には、経営革新等支援機関に認定されている税理士に相談するとよい。

この記事は約8分で読めます。

個人事業主の方が新規事業を立ち上げる際に1つの課題となるのが、事業資金の調達です。個人事業主は法人に比べると融資が受けにくく審査が厳しいというイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。

そこで本記事では、個人事業主が融資を利用する際のポイントや利用できる融資制度などについて詳しく解説します。

 

個人事業で必要になる事業資金の目安

個人事業で必要になる事業資金の目安

個人事業主として事業をするにあたり必要となる事業資金は、営もうとする事業体によって大きく異なります。ここでは、およその目安について解説したいと思います。

 

ネットを活用したビジネス

ネット通販やyoutuberなど、インターネット環境を活用したビジネスを行う場合、規模にもよりますが事業資金は比較的低く抑えられます。

最近では自宅を事務所として開業届を出す個人事業主の方も多いので、家賃というランニングコストがかからなければ、調達しなければならない事業資金は大幅に抑えられるのです。

目安としては、従業員等を雇用せずにフリーランス的な形で始めて徐々に拡大していくという場合であれば、50万円前後あれば十分でしょう。

 

飲食店などの店舗経営

飲食店などのショップを開業する場合は、個人事業主とはいえそれなりの事業資金が必要になります。店舗の場所や規模によって調達すべき事業資金の金額は変わってきますが、目安となるのが見込み年商です。

飲食店やショップを経営する場合は、当初見込んでいる年商つまり年間の売上のおよそ50%程度の資金は調達しておかないと、途中でキャッシュフローが回らなくなる恐れがあります。

飲食店などの店舗経営

 

両者の違いは、運転資金にかかるコスト

両者の決定的な違いは、運転資金にかかるコストです。自宅開業系でのネットビジネス系であれば、設備投資としてパソコン台やネット環境に多少のコストがかかるものの、その後の運営については自分の人件費を除けばごく少額に抑えることができます。

万が一自分が倒れて寝込んだとしても、収入が減少しても支出自体が少なく抑えられるので、キャッシュフローが困窮する心配はあまりありません。場合によっては、しばらくの間休業することも簡単です。

対して店舗経営については、常に家賃という大きな固定費がのしかかるため、昨今のような新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が出されたりすると、途端に収入はゼロになるだけでなく、非常に重いランニングコストがかかってくることになります。

そのため、店舗経営を個人事業主として始めたい方は、できる限り余裕のある事業資金を確保してから始めることをおすすめします。

同じ個人事業主でも調達すべき金額には大きな差が出てきます。まずは自分自身の思い描いている事業を実現するために、どの程度の事業資金の調達が必要になるのかについて検討しましょう。

 

おすすめの融資制度

おすすめの融資制度

ここからは個人事業主の方におすすめしたい融資制度について詳しく解説していきます。法人で事業資金を借入するよりもなかなか条件が厳しい面もありますが、反対に個人事業主にやさしい融資制度もありますのでぜひ活用しましょう。

  • 日本政策金融公庫
  • 信用金庫
  • ビジネスローン系
  • 多目的ローン

 

 

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、政府系の金融機関で財務省が所管している金融機関です。経済の発展などを目的として設立されていることから、個人事業主など通常だと融資が受けにくい属性についても積極的な融資を行っています。

日本政策金融公庫には複数の融資制度がありますが、中でも個人事業主の方におすすめしたいのが次の2点です。

日本政策金融公庫

 

新規開業資金

その名の通り個人事業を新規で開業しようとする人を対象とする融資です。個人事業主の場合、開業してある程度の実績ができてからであれば、他の金融機関でも融資が受けられたりしますが、全くのゼロから開業する場合は資金調達にとても困ります。

新規開業資金なら新規開業する個人事業主はもちろんのこと、開業後おおむね7年以内であればすでに開業している方でも利用することが可能です。

融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
融資期間:20年以内

金利も低めでとてもおすすめの融資制度ですが、1つだけ注意点があります。融資期間は20年以内となっていますので、金利が低くても毎月の返済額が多めになる傾向があるため、事前にキャッシュフローのシミュレーションをしておくことをおすすめします。

 

一般貸付

通常の融資で事業を営んでいる人に広く対応している融資制度です。

融資限度額:運転資金、設備資金4,800万円、特定設備資金7,200万円
融資期間:運転資金5年以内、設備資金10年以内、特定設備資金20年以内

このように用途に応じて限度額や期間が異なります。新規開業に限らず、事業途中での融資に利用しやすいです。

また、税務申告を2期以上行っている場合、担保や保証人なしで利用できる融資制度もあります。個人事業主でも原則として無担保、保証人不要で、しかも2%以下の低金利で融資を受けることが可能です。

ただし、税金関係に未納がある場合は利用できません。個人事業主の場合、資金繰りが危うくなると所得税等の支払いが遅れてしまうこともありますが、税金の未納があると利用できないため注意しましょう。

 

信用金庫

地域にある信用金庫も比較的個人事業主に対する融資に積極的な傾向があります。ドラマの半沢直樹でもありましたが、主人公半沢の両親の工場が銀行からの融資を断られた後に手を差し伸べたのが信用金庫だったそうです。

信用金庫は地域のお金を個人や中小企業に対して融資することで、地域を発展させることに存在意義があるとされているので、都市銀行系に比べると個人事業主でも利用しやすいといわれています。

 

信用金庫の金利などの特徴

信用金庫は日本政策金融公庫のように、数千万円単位の融資には非常に慎重ですが、反対に1,000万円以下の資金調達であれば審査が下りやすいです。

よって、比較的事業規模の小さいビジネスであれば信用金庫を利用してもいいかもしれません。金利については、日本政策金融公庫よりも高くなる可能性がありますが、それでもノンバンクなどに比べればマシな方です。

ただし、公共性の高い日本政策金融公庫とは違い、民間の金融機関なので審査については多少ハードルが上がります。

また、最大のネックは立地です。信用金庫は地元の中小企業事業者への融資を目的としているため、事業を始める地域にそもそも信用金庫の支店がないと利用することはできません。

 

信用組合や地方銀行はどうなの?

基本的には信用金庫と傾向は同じで、大企業ではなく中小企業や個人事業主に対する融資に積極的です。金利や貸し付け条件もおおむね同じで、近隣に信用組合がある場合に利用できます。また地方銀行についても、傾向としてはおおむね同じです。

 

ビジネスローン系

各金融機関が扱っている、ビジネス全般に利用できる融資で、金融機関によって貸し付け条件が異なります。審査が非常に早いので、臨時で運転資金が必要な場合などに向いていますが、反面金利が6%以上と非常に高く返済期間も短いものが多いので、濫用はおすすめできません。

1度に借入できる金額も300万円程度と少額なので、あくまで一時的にキャッシュフローを補うような目的に使うこととし、設備投資についてはできるだけ日本政策金融公庫や信用金庫などを利用したほうが金利面でお得です。

 

多目的ローン

今すぐに資金が必要という時に便利なのが、クレジットカードなどでも利用できる多目的ローンです。多目的ローンとは使途を限定しないローンで、ウェブ上の手続きだけで200万円程度の資金であればすぐに借りられます。

ただし、金利が高いので早めに返済しないと資金繰りを圧迫する可能性があります。金融機関から融資を受けられない方は、多目的ローンを使って繰り上げ返済していくか、実績を作った後に金利の低い金融機関と借り換えをするとよいでしょう。

 

残高スライド元利定額返済方式に注意

カードローン系を利用する時に注意したいのが、残高スライド元利定額返済方式です。最近の個人のカードではこの返済方式になっているものが多く、便利な側面がある一方で思わぬ落とし穴もあります。

残高スライド元利定額返済方式とは、借入する際に月額返済額を定めて、債務残高が減少していくと段階的に減っていく返済方式です。

例えば、設定金額10万円で100万円を借入した場合、翌月に追加で20万円借入しても月額返済額は10万円のままです。つまり、返済負担を一定に保つことで借入しやすくしているのです。

これだけ聞くととても便利な返済方式に聞こえるかもしれませんが、借入を追加しても毎月の返済額に大きな変化がないので、返済自体は可能でもその間にどんどん借入残高が貯まっていってしまうのです。

つまり、返済が全然進んでいかないので、気が付いた時にはすごい額の借入になっていたということも珍しくありません。

個人事業主の方にとって非常に利用しやすいというメリットはありますが、使いすぎると返済ができなくなる恐れがありますので借入残高には十分注意しましょう。

 

借入条件の注意点

借入条件の注意点

個人事業主の方が事業資金を借入する際には、次の点について注意が必要です。

 

金利を低く抑える

住宅ローンや不動産投資ローンとは違い、個人事業主が使う事業ローンは金利が割高になる傾向があります。金利が高いと返済効率が悪くなるので、たとえ借りられたとしてもあまりおすすめできません。

特に1,000万円以上の融資を希望する場合については、日本政策金融公庫などできるだけ金利が低い金融機関を利用することをおすすめします。

 

 

融資を受けやすくする方法

融資を受けやすくする方法

個人事業主で融資を受けやすくするためには、金融機関を納得させられるだけの資料を準備することがとても大切です。新規開業であれば事業計画書、すでに営業中であれば前期の実績などの資料を金融機関に提出することで、融資を受けやすくなります。

 

事業計画書は誰に相談する?

事業計画書が重要といわれても、いままで作ったことがないという方がほとんどではないでしょうか。自分で作るスキルや経験がある方であればよいのですが、そうではない場合はぜひ税理士に相談してみてください。

個人事業となると日々の記帳から確定申告まで全部自分でやらなければなりませんが、実際に事業を始めてみると本業に集中しなければならないので、そういった経理関係の業務に時間を割くことができません。

そこで事業計画書と顧問契約をセットで税理士に依頼することで、資金調達の問題と開業後の経理の問題を同時に解決することが可能です。

 

経営革新等支援機関ってなに?

税理士に相談する際におすすめなのが、経営革新等支援機関に認定されている税理士です。経営革新等支援機関とは、財務局長および経済産業局長が認定する機関で、財務経営や資金調達のいわばスペシャリストとして認定された機関という位置づけです。

何より頼りになるのが、事業計画書作りです。金融機関によっては、経営革新等支援機関が事業計画書の作成支援を行った場合に金利を優遇してくれる場合もあるようです。

経営と資金調達に長けているので、単に事業計画書を作成するだけではなく、金融機関の印象が良くなる事業計画書を作成してくれます。

税理士以外にも認定を受けている機関はありますが、個人事業主の場合は開業後の税務についてもまとめて依頼したほうがよいので、経営革新等支援機関に認定されている税理士が心強いでしょう。

経営革新等支援機関は、中小企業庁のホームページで一覧を見られますので税理士選びの参考にするとよいでしょう。

 

個人事業主の融資に関するまとめ

今回は個人事業主の資金調達について解説してきました。個人事業主が融資を受けるとなると、法人よりもハードルが高いというイメージがあるかもしれませんが、日本政策金融公庫や信用金庫などをうまく活用すれば、意外と資金調達はスムーズにできます。

ノンバンクや多目的ローンなどについては、すぐに使えるという強みがある一方で、高金利で返済が進みにくいという落とし穴がありますので、あくまで臨時で必要な場合に利用はとどめましょう。

設備投資などまとまった資金の調達については、できるだけ低金利で借りられるところを選ぶことが大切です。

資金調達は借りることが目的ではありません。借りたお金で事業を成功させるためには、その先にある事業計画がとても重要です。

事業が初めてという方は、経営革新等支援機関に認定されている税理士などに相談して、事業計画書の作成や資金調達についてコンサルティングしてもらうことをおすすめします。

 

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