- 個人事業主本人は、厚生年金に加入ができない。
- 個人事業主は一定の要件を満たした場合、従業員を厚生年金に加入させなければならない。
- 個人事業主は国民年金基金や個人年金、付加年金などを活用する方法がある。
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個人事業主と会社員では年金制度に違いがあり、個人事業主のほうがもらえる年金額が少ないということはなんとなく知っているけれど、詳細はわからないという人は多いのではないでしょうか。
個人事業主でも従業員を一定以上雇用している場合は、義務として厚生年金への加入が必要になる可能性があるため注意が必要です。そこで本記事では、個人事業主と会社員の年金制度における大きな違いである厚生年金について詳しく解説します。
目次
厚生年金とは、第2号被保険者といわれる会社員や公務員が加入する年金のことで、一般的には受け取る年金が高いといわれています。これは、厚生年金で受け取れる年金がすごく高いというよりも年金制度の構造によるのです。
そもそも会社員の場合は、国民年金に加入した上で、さらに上乗せで厚生年金や厚生年金保険基金に加入しているので、将来的に受け取れる年金額が多くなります。
対して、個人事業主の場合は第1号被保険者に分類され、国民年金のみに加入することになるので、将来的に受け取ることができる年金額が会社員に比べて少なくなってしまうのです。
では、個人事業主でも厚生年金に加入できるのでしょうか。
厚生年金は任意で加入できる事業所と、強制的に加入しなければならない事業所に分かれます。株式会社などの法人登記されている事業所については、事業内容に関係なく厚生年金への加入が義務付けられていますが、個人事業主の場合はそうとは限りません。
個人事業主は任意適用事業所に該当しない業種のうち、常に5人以上の従業員を雇用している場合、強制的に適用されることとなります。
厚生年金に加入はできるけれども強制ではない事業所のことを任意適用事業所といいます。任意適用事業所は、従業員の半数以上が同意した場合において厚生年金に加入することが可能です。
常時雇用している従業員の人数が5人未満の事業所が対象ですが、次の業種については5人以上でも任意適用事業所となります。
よって、これらに該当しない事業所は厚生年金への加入が義務付けられている強制適用事業所に該当するので、たとえ個人事業主だったとしても加入手続きをしなければなりません。
厚生年金に加入することが可能な被保険者は、次のように4つの種類に分けられます。
適用される事務所にいつも雇われている70歳未満の人。
適用される事業所以外で雇われている70歳未満の人で厚労大臣から認可を受けた人。
70歳以上で適用される事業所で働いている人、または適用される事務所以外で事業者と厚労大臣の認可を受けた人。
アルバイトまたはパートは厚生年金の被保険者になります。
このように、個人事業主の場合でも適用される事務所に該当すれば、上記の人について厚生年金に加入させる必要があります。
ただし、これらはすべて個人事業主本人のことではなく、個人事業主に雇用されている人たちの厚生年金への加入についてです。では、個人事業主本人は厚生年金に加入できるのでしょうか。
ここまでは個人事業主が従業員を雇用した場合の、厚生年金の取り扱いについて解説してきました。雇用されている従業員は厚生年金に加入することができますが、個人事業主本人については残念ながら厚生年金に加入することができません。
ただ、そうなると老後の年金が心配です。どうにか個人事業主で厚生年金に加入する方法はないのでしょうか。
個人事業主本人が厚生年金に加入したい場合は、法人化して加入するしかないようです。法人化して厚生年金に加入すれば、加入期間がたとえ1年だけだとしても、加入期間が存在すれば年金を受け取ることができます。
会社法が改正されて以降、資本金1円でも法人化が可能になったので、ある程度の利益がある個人事業主であれば、老後を見据えて厚生年金に加入できる株式会社に変更する選択肢もありでしょう。
法人化すれば経費にできる範囲も広くなるほか、配偶者や家族を役員にして配当を出すことによって、所得を分散して所得税を節税することも可能です。
個人事業主が従業員を厚生年金に加入させるためには、加入要件を満たすこととなった事実が発生した段階から5日以内に、住所地を管轄している年金事務所に新規適用届を提出する必要があります。
書類を持参する方法のほか、郵送やインターネットによる届出も可能です。法人の場合は会社謄本を提出しますが、個人事業主の場合は個人事業主本人の住民票の原本の添付が必要になります。
また、厚生年金への加入義務がない個人事業主が任意で加入する場合は、同じように新規適用届を提出するほか、任意適用申請書も一緒に提出が必要です。ただし、任意の場合は厚生年金への加入について従業員の過半数以上が同意していることが前提となります。
個人事業主が支払った保険料や掛け金は、残念ながら経費として計上はできませんが、社会保険料控除によって確定申告の際に控除することが可能です。また、あわせて健康保険料も控除の対象になります。
加入している従業員が出産などで休業する場合、産前42日、産後56日のうち妊娠や出産が理由で仕事ができなかった期間について、厚生年金保険料が免除されます。
厚生年金保険料は被保険者と事業主で折半して支払いますが、当該事項によって保険料が免除になると、被保険者と事業主の両方が免除される点が大きなメリットです。当該免除を受けるためには、事業主から年金事務所に対して産前産後休業取得者申出書を提出する必要があります。
しかも、この期間は保険料の支払いが免除されるだけでなく、年金額の計算をする際に保険料を支払ったこととして扱われるという非常にありがたい制度なのです。
出産後、従業員が育児休業を取る場合、満3歳未満の子の育児休業であれば厚生年金保険料の支払いが同じように免除されます。この場合も被保険者および事業者ともに免除されるのです。また、年金額の計算においては保険料を支払ったものとして扱われる点も同様です。
よって、個人事業主で妊婦さんを雇用している方は、積極的に産休や育休を取得させることをおすすめします。
個人事業主は結論として厚生年金に加入することができませんが、適用事業所に該当する場合は、自分が加入できなくても従業員を加入させる必要性が出てくる点に注意が必要です。実は、この点を理解していない個人事業主の方がたくさんいます。
確かに、自分自身が加入できないわけですから、「個人事業主は厚生年金に加入することはない」と思い込んでいても無理はありません。
ただ、個人事業主でも従業員を雇用すれば雇用主としての責任が発生するので、一定の要件を満たしている場合は速やかに加入手続きを取らなければなりません。
将来受け取る年金額を上げる方法として、国民年金基金や個人年金、付加年金などもあわせて検討してみるとよいでしょう。
どうしても自分自身が厚生年金に加入したいのであれば、法人化した上で年金事務所に届け出る必要があります。
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