- iDeCoのメリットの一つは所得控除で実質減税になること。
- あなたの所得控除のメリットはいくら?年収・掛け金別一覧でまる分かり!
- iDeCoで大事なのは所得控除だけじゃない。iDeCoで未来の自分を助けよう。
公開日:
本記事ではiDeCoの所得控除について考察します。記事の中ほどに「年収などの違いによってどのくらい減税の効果があるのか」分かりやすい一例の一覧表を作成しましたので、ご覧いただければ幸いです。
目次
iDeCoは老後のための資産形成の制度です。大きなメリットが3つあります。
この中でも今回は1の「掛け金が全額所得控除になる」について見てみましょう。
iDeCoへの掛け金の全額が所得控除になる。
iDeCoの所得控除の仕組みを簡単に言うと「iDeCo口座に毎月(あるいはまとめて)お金を出していくと、税金の負担が減少しますよ」ということです。
もう少し詳しく言いますとiDeCoに出した掛け金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。個人事業主や所得のある専業主婦などは確定申告が必要です。
そして、iDeCoの所得控除の減税メリットを受けられる人は、会社員・公務員・自営業者などの「課税される所得のある人」です。
答え:ありません。
所得税・住民税が課税されない人の場合には、所得控除による減税メリットはありません。
ただ「減税メリットがないからiDeCoをする理由がない?」かというと、そうではありません。理由は後述します。
答え:ありません。
家族の掛け金を負担しても、減税メリットは得られません。
それでは具体的に、iDeCoの所得控除のメリットによる減税効果がどのくらいなのか一例を見てみましょう。
注意点:以下は毎月掛け金を出した場合です。途中で課税所得や掛け金の変更がない前提です。こちらの一例は「イデコ公式HP かんたん税制優遇シミュレーション」を使用して出しています。実際とは異なることがあります。
共通の条件として、20歳で加入して60歳まで40年間続けた場合です。
ちなみにiDeCoに出せるお金の毎月の限度額は「加入者区分」によって異なります。
以降のシミュレーション一例では、以下のパターン(月/5,000円・12,000円・23,000円・68000円)で見てみましょう。
iDeCoの「限度額」や「いくら出すべきなのか」については下記関連記事をご覧いただければ幸いです。
掛け金/月 | 1年の軽減額 | 40年の合計軽減額 |
---|---|---|
5,000円 | 9,000円 | 360,000円 |
12,000円 | 21,600円 | 864,000円 |
23,000円 | 41,400円 | 1,656,000円 |
68,000円 | 83,340円 | 3,333,600円 |
上記を見ると掛け金に応じて軽減額が大きくなることが分かります。
掛け金/月 | 1年の軽減額 | 40年の合計軽減額 |
---|---|---|
5,000円 | 9,000円 | 360,000円 |
12,000円 | 21,600円 | 864,000円 |
23,000円 | 41,400円 | 1,656,000円 |
68,000円 | 122,400円 | 4,896,000円 |
自営業者の上限68,000円のケース以外では①と同じ数値です。
掛け金/月 | 1年の軽減額 | 40年の合計軽減額 |
---|---|---|
5,000円 | 9,000円 | 360,000円 |
12,000円 | 21,600円 | 864,000円 |
23,000円 | 41,400円 | 1,656,000円 |
68,000円 | 122,400円 | 4,896,000円 |
このケースでは②と全く同じです。
掛け金/月 | 1年の軽減額 | 40年の合計軽減額 |
---|---|---|
5,000円 | 12,000円 | 480,000円 |
12,000円 | 28,800円 | 1,152,000円 |
23,000円 | 55,200円 | 2,208,000円 |
68,000円 | 143,350円 | 5,734,000円 |
③より減税金額が大きくなってきました。
掛け金/月 | 1年の軽減額 | 40年の合計軽減額 |
---|---|---|
5,000円 | 12,000円 | 480,000円 |
12,000円 | 28,800円 | 1,152,000円 |
23,000円 | 55,200円 | 2,208,000円 |
68,000円 | 163,200円 | 6,528,000円 |
こちらは④と68,000円のところだけが異なります。
掛け金/月 | 1年の軽減額 | 40年の合計軽減額 |
---|---|---|
5,000円 | 18,000円 | 720,000円 |
12,000円 | 43,200円 | 1,728,000円 |
23,000円 | 82,800円 | 3,312,000円 |
68,000円 | 205,660円 | 8,226,400円 |
やはり年収が上がるほどに所得控除の減税メリットが大きくなってくることが分かります。
これより高い年収でシミュレーションをされたい方は、イデコ公式HPの「かんたん税制優遇シミュレーション」で試算していただければ幸いです。
さて上記のシミュレーション一例をご覧になって、どのような感想を抱かれたでしょうか。
などと思われた方もいらっしゃるかと思います。その一面は確かにあります。
ただ、iDeCoは所得控除のメリットを受けられるだけの制度ではありません。その本質は「老後のためのもう一つの年金」にあります。どういうことでしょうか。
2019年8月27日に厚生労働省より「公的年金の財政検証」が発表されました。これは簡単に言うと、「公的年金の健康診断」のようなものです。
5年に一度のペースで公表されます。今回のポイントはいくつかありますが、少しだけ見てみましょう。
筆者にとって(そしておそらく読者の方にとっても)印象的なのは次の点でした。
ということでした。
現在定年の多くは60歳ですので、実に8年9か月長く働かなくてはいけません。
※ちなみにこれは今後「日本経済が良かった場合」の楽観的なシナリオです。現実はもっと悪くなると筆者は考えています。
ちなみに30歳以降が今の65歳と同水準の年金を受給するには、次の年齢まで働かないといけないことが数値上算出されています。
ここだけ見ても、何となくiDeCoやつみたてNISAを利用しての資産形成の重要性が見えてきます。
将来、年金を現在と同水準もらうには、現在よりも(短くて)6年~8年4か月働かないといけない可能性がある。
また公的年金制度の「健康診断(財政検証)」では、所得代替率の低下についても触れられていました。
所得代替率:ざっくり言うと、現役世代の今の私たちの手取り収入に対する年金額の割合。低いほど受け取れる年金額が少ない。
いま(2019年度)は所得代替率が61.7%です。
しかし「健康診断(財政検証)」では6つある、どのシナリオでも将来の所得代替率は低下しています。
ちなみにこれは賃金が上がり続けるという前提のお話です。しかし直近5年間で賃金が上昇したのは2016年の一年だけでした。
筆者の個人的な考えでは、一番悪いシナリオよりも将来は悪くなる(もらえる公的年金は減る)のではないかと考えています。
その理由は少子高齢化です。公的年金は現役の世代が高齢者にお金を「仕送りする+積立金を上乗せしている形式」です。そして、今の現役世代が年金受給資格を得るころには、ますます若い人が減っていると思われます。
つまり、「未来の私たちに仕送りをしてくれる人が減っている」わけです。そのため、将来のもらえる年金額は構造上減ってしまうと考えられます。
ちなみに6つのシナリオの一番悪いものでは2052年には国民年金の「積立金が枯渇する」ということになっています。つまり「仕送りする+積立金を上乗せしている形式」の「積立金を上乗せしている」部分がなくなって、単純な「仕送り形式(正式には賦課方式という)」になることを意味しています。
早い話が受け取れる年金がさらに減る可能性があります。ちなみに公的年金を受給開始後も、加齢とともに所得代替率は下がる見通しです。
嫌なお話ばかりですが、だからこそiDeCoの所得控除のメリット以外について考えてみることが重要かもしれません。
将来もらえる年金の所得代替率は今61.7%だが、36%~38%(あるいはそれ以下)に下がる可能性がある。
iDeCoのメリットの一つに「掛け金が全額所得控除になる」というものがあります。
税制面でとても優遇されているのがiDeCoの特徴です。
本文内のシミュレーション一例で見ましたが、基本的に年収・掛け金が大きいほど所得控除のメリット金額が大きくなっていきました。
ただ、iDeCoの本質は所得控除のメリットだけではないと筆者は考えています。
記事の最後の方で触れましたが、これからは若い人ほど、公的年金だけでは老後の生活が成り立ちにくくなると考えられます。
そこで出てくる考え方が「自助努力(自分の老後のお金は自分で形成する)」です。
人によってはiDeCoの所得控除のメリットがない・少ないことがあり、魅力的に見えないかもしれません。ですがiDeCoの本質はそこではないのではないでしょうか。
本記事が読者の方の合理的な資産形成の一助になれば幸いです。
iDeCoを始めるには口座を開設する必要があります。銀行や証券など多くで投資信託の取扱いがございますが、おすすめはSBI証券か楽天証券です。業界屈指の格安手数料や、豊富なサービス・商品ラインナップを誇るネット証券業界最大手の2社です。