- iDeCo(イデコ)そのものは原則として解約できない。
- iDeCo(イデコ)の一時金を受け取るには5つの条件がある。
- 掛金を出すのを「休止」したい場合は「運用指図者」になる方法があるが、デメリットもある。
公開日:2019年10月7日
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金のことです。趣旨としては、老後の資産形成のための「自分による、自分のためのもう一つの年金」です。
本記事では
に焦点を当てて記します。
iDeCoに関する基本的な知識は以下をご覧ください。
目次
まず、大事なことを先に確認しておきます。
iDeCo(イデコ)内の資産は、原則として60歳以降にならないとお金を引き出すことができません。
これは、あくまでも老後のための資金として使うためです。
そして、ここが本記事の最初のポイントですが、加入後にiDeCo(イデコ)そのものを解約することはできません。つまり、原則として60歳になるまでは、お金を受け取ることができないのです。
ただ、以下に示しますように、3つの例外があります。
順に見てみましょう。
上記のように、基本的には解約できないのですが、脱退一時金を受け取れる例外があります。
脱退一時金を受け取るためには、以下の5つの条件を満たすことが必要です。
①国民年金保険料の納付を免除されていること(※)
②確定拠出年金の障害給付金の受給権者ではないこと
③通算拠出期間が3年以下(注1)、又は個人別管理資産が25万円以下であること
④最後に企業型確定拠出年金(企業型年金)又は個人型年金の資格を喪失した日から2年以内であること
⑤企業型年金の加入者資格喪失時に脱退一時金を受給していないこと
※障害基礎年金裁定通知を受けた方及び国民年金法第89条第3号の施設に入所している方は除きます。
と、上記のようになっています。
自分が上記条件に当てはまるかどうかは、iDeCo(イデコ)ポータルサイトで確認ができます。
ですが、現実的には多くの人は上記条件に当てはまらないのではないかと思います。
筆者もかつて(ファイナンシャルプランナーになる以前)、転勤を期にiDeCo(イデコ)そのものを解約できないかと行動をしてみたことがありますが、当時、条件にはあてはまらずに断念したこと記憶があります。
その時の筆者は解約はできなかったものの、掛け金の拠出を「休止」して、「運用指図者」になりました。「休止」と「運用指図者」については、後述します。
ただ、これらの措置は「嫌がらせ」で多くの人に引き出せないようにしているのではない、と感じます。
人には「資産効果」というものがある、と言われています。これはどのようなものかと言いますと、「お金がたくさんあると、気持ちが緩んでつい使ってしまう」というような効果です。
つまり、あくまでもiDeCo(イデコ)は、老後の資産形成のための制度ですから、逆に「中途解約して脱退一時金を受け取りやすい」と老後に困る人が多くなる、だから中途解約が多くの人にとってできにくいようになっている、という親切心と捉える方が適切かもしれません。
原則として、60歳未満で転職した場合はどうなるのでしょうか?
このケースについては、関連記事に記しておりますので、興味のある方は、そちらの記事をご覧ください。
あまり考えたくないことですが、iDeCo(イデコ)加入者が死亡した場合は、遺族が請求することで一時金を受け取れます。
この一時金とは、積み立てて運用・形成した資産のことです。
また、原則として60歳以降の受け取り期間中に亡くなった場合も、遺族が請求することで残りのお金を受け取ることができます。
課題として、直接的なケースでは筆者は経験がありませんが、しばしば耳にするケースで「遺族がiDeCo(イデコ)のことを知らなかった・残額を把握していない・どこの金融機関で行っているか知らない」などの状況が発生することがあるようです。
iDeCo(イデコ)に加入している人は、
などの対策をすることが重要かと感じます。せっかくiDeCo(イデコ)で積み立てたお金が「知らなかった」で受け取れないともったいないですから。
iDeCo(イデコ)の加入者が70歳になる前に、傷病によって一定以上の障害状態になった場合、障害給付金が受け取れることがあります。これは、傷病から一定期間(1年6カ月)経過後の請求により支給される給付金を指します。
障害給付金は、自分で今まで積み立てて運用・形成したお金です。これを60歳にならなくても受け取れます。
ここで「70歳になる前」となっているのは、どういうことかと言いますと、原則として、iDeCo(イデコ)への加入は60歳まで、かつ、受け取りは60歳以降ですが、受け取りの申請期限は70歳になる誕生日の2日前までです。
つまり、原則としては60歳から70歳の間に年金形式か一括受け取りかを選択します。ちなみに、70歳を超えた場合は、一括で受け取ることになります。
これは別の言い方をすると、70歳まで受け取らないでも良いということです。そのため、障害給付金に関しては期間が「70歳になる前」ということになります。
障害状態にならない場合、気になるのが70歳になるまで受け取らない方が「得か・損か」です。しかし、これはその人の経済状態や、ライフプラン(人生計画)などによります。
投資信託という値動きリスクのある金融商品で運用している場合は、景気や社会情勢によっても「いつ受け取るのが良いと考えられるのか」が変わってきます。
もちろん「年金形式で受け取るか・一括で受け取るか」も、本人が自分で考えて、自分で決定しなくてはいけません。
一定以上の障害状態になった場合には、その他にも、障害年金や各種制度が適応されることがあります。しかし、筆者の経験から申しますと、それら制度の申告方法は一般的に複雑です。
これも「嫌がらせ」で複雑にしているのではなく、あまり簡単に申請できると「悪意のある人・不要な人」が多く申請してしまう、だからあえて複雑にしている、という社会的な背景があるようです。また、あまり知られていない重要な制度もあります。
しかし、社会保険労務士などのお話を専門家の勉強会などで聞いておりますと「それらの制度が本当に必要な人ほど制度のことを知らない・お金に余裕がない人ほど専門家に相談しないので利用できない」という現状が見えてきます。
逆に言うと、お金に困っていない人ほど、税理士や弁護士、社会保険労務士などを上手に利用しているので、お金に関してより有利に付き合える、という一面があります。もちろん、悪いことではありません。
ただ、もしも困った事態になった場合は、その時こそ、各種専門家の手助けを受けるのが長い目で見ると重要かと思います。
専門家ならではの豊富な知識により「そんなの知らなかった・相談して本当に助かった」というケースもあります。一般的には知られていない、複雑な制度や申告方法もあります。だからこそ、専門家がいます。困った時にはぜひ相談してみてください、
iDeCo(イデコ)加入者は、上記で見ましたように、原則として60歳までお金を引き出すことができません。また、基本的に途中で解約することはできません。
それでも、加入はしたものの、毎月のお金が「出せない・出したくない」場合は、どうしたら良いでしょうか。見てみましょう。
iDeCo(イデコ)では解約はできませんが、事実上の「休止」をすることができます。それは、運用指図者になることを意味します。
個人の希望により運用指図者になることで、毎月の掛け金を出すことを中止することができます。
運用指図者になる場合は、iDeCo(イデコ)口座を開いている金融機関に問い合わせましょう。
運用指図者とは、掛け金の拠出を行わずに、文字通り(これまでに出したお金の)運用の指図をする人のことを指します。
「解約・一時金の受け取り」などはできない人でも、運用指図者になることで、事実上、毎月お金を出すことを止められます。
ただ、口座管理費などのコストが引き続き発生するなどのデメリットもあります。
最初の掛け金設定を高くし過ぎて、中止するほどではないものの「掛け金を減らしたいな」と困っている人もいるかもしれません。
生活に支障が出るようなら、掛け金を減額する手段も考えてみましょう。
iDeCo(イデコ)の最低掛け金は月額で5,000円です。
「iDeCo(イデコ)の掛金の変更」については、詳しくは関連記事をご覧ください。
本記事のおさらいです。
いまの生活が苦しい場合は、確かにあります。筆者にも転退職などで生活が苦しい時期がありましたので、経験的に分かります。そして、本当に苦しい時は誰にも相談ができませんし、できたとしても近視眼的な、その場しのぎの対応をしがちです。これは長い目で見ると損なことが多いです。
生活が苦しい時、iDeCo(イデコ)加入者は、毎月の掛け金の拠出が重荷となり、解約や休止をしたくなるでしょう。
ただ、未来はもっと苦しいかもしれません。そうならないように、できるだけ早い段階から準備をしておくことが大切かと思います。
最低掛け金が毎月5,000円というのは確かに高額ですが、それだけに、将来の自分を助けるお金に育つかもしれません。
もちろん本当に、いまが厳しく苦しい状況だとしたら、ためらわずに休止の手続きをすることも重要かと思います。そして、できるだけ多くの人に相談をしてみてください。あまり知られていない公的なセーフティネットや各種のサービスがあるかもしれません。
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