- iDeCo(イデコ)では、金融機関ごとに口座管理手数料が異なる
- 口座管理手数料は積み立て時には毎月かかる
- コストは運用成果にプラスに作用しないので、安い方がベターと考えられる
- 主要な金融機関のコストは同様に最低水準になっており、その中から選択すればどこを選んでも同じ
公開日:2019年2月12日
目次
本記事では、iDeCo(イデコ)を取り扱っている10の金融機関を比較しつつ、金融機関の選び方や注意ポイントなどを考察します。比較する金融機関は、楽天証券・SBI証券・松井証券・マネックス証券・ろうきん・イオン銀行・みずほ銀行・りそな銀行・野村證券・十八銀行の10種類です。
※本記事は特定の金融機関を推奨・斡旋・勧誘するものではありません。数値や名称等は記事執筆時点のものです。
idecoに関する基本的な情報は「iDeCo(イデコ)とは?わかりやすく簡単に解説!知って得する税制優遇制度!」をご覧下さい。
最初に注意したいのが、コスト(各種経費)についてです。
投資におけるコストとは、どのようなものでしょうか?結論を先に書きますと、投資におけるコストとは、「実質的な運用成果を押し下げるだけのもの」です。
一般的なコストのイメージは、かければかけるほどに「良いもの」が出来上がるイメージではないでしょうか。例えば、住宅です。普通に考えれば1千万円の住宅よりも、1億円の建築費をかけた方が「良い住宅」になると考えられます。これが一般的なコストのイメージです。
ただし、投資の世界では必ずしもそうとはいきません。いえ「市場が効率的だとした場合(※1)」の理論上、コストは単純に「実質的な運用成果を押し下げるだけのもの」だと考えられます。いったい、どういうことでしょうか。
(※1)効率的市場仮説:市場の参加者が割安な株式を買い、割高な株式を売るのであれば、株式市場などの株価はおおむね適正価格だと考えられるもの
まず、基本的に株式市場や債券市場の主役は金融機関などのいわゆるプロです。これが全体の9割程度を占めていると言われています。そして彼らは「おりこさん(難しく言うと効率的)」です。すると、どのようなことが起こるでしょうか?「おりこうさん」ばかりの世界ですと、誰かがコストをいくらかけても良い成果に結びつきません。
それは、「おりこうさん」ばかりの平均が大変に優れている(効率的)からです。これは「おりこうさん」が優れていればいるほど、そして「おりこうさん」が増えれば増えるほど、平均が優れていく(効率的になる)ことを意味します。この、いわゆる平均と呼ばれるものが「国内株式・国内債券・先進国株式・先進国債券」などの市場平均を指しています。
そのため理論上は、長期で見た場合、むしろコストをかければかけるほどに市場平均を下回ってしまう成績になるのだと考えられます。
実質的な運用成果を求める式としては、大変にシンプルに表すことができます。
このようになりますので、コストが低い方が実質的な運用成果が上がります。また、コストが高ければ、実質的な運用成果が押し下げられます。さらに別の言い方をしますと、運用成績を改善するには、コストを下げることが必要です。
そのため、投資におけるコストとは、「実質的な運用成果を押し下げるだけのもの」と考えられます。
(※2)実質的な運用成果:一般的な証券会社の口座で行う投資では、利益に税金がかかるので、より正確にはさらに実質的な運用成果が押し下げられる。しかし、iDeCo(イデコ)では、運用益が非課税で再投資され、かつ所得控除や受け取り時の税制優遇まである。一言でいうと「積み立て投資においては、非常にお得な制度」だと思われる。
それでは、iDeCo(イデコ)でのおすすめ金融機関を見る前に、現役時代(※3)において積み立て投資をする場合、金融機関では、iDeCo(イデコ)口座にどのようなコストが発生するのか見てみましょう。
手数料名 | 手数料(税込み) |
---|---|
①加入時(または移管時)の初期手数料(初回のみ) | 2,777円 |
②口座管理手数料(毎月かかる) | ※金融機関によって異なる |
このうち、①の加入時(または移管時)の初期手数料は、どこで行っても2,777円かかります。最初だけかかります。そのため、ポイントは②の口座管理手数料です。本記事ではそこに着目して見てみます。
(※3)現役時代:原則として受け取りは60歳以降。受け取り時にも手数料がかかる。また、その他にも還付手数料(多く払いすぎたりした場合、お金を戻してくれる際に発生する手数料)や移管手数料(iDeCo(イデコ)口座を他の金融機関に移すときに発生する手数料)がある。
ちょっと脇道にそれるように感じるかもしれませんが、ある金融機関でiDeCo(イデコ)を開いたとして、その金融機関が破たん・倒産してしまったら、どうなるのでしょうか?
実は、運用資産は、運営管理機関(例:○○証券など)で管理していません。信託銀行と呼ばれる場所で管理しています。
そのため、金融機関が破たん・倒産しても、私たちの資産は安全です。ただ、信託銀行もボランティアではありませんので当然コストがかかります。また、国民年金基金連合会でも費用が発生するものがあります。そのため、コストを考える場合は、トータルで考えることが重要です。
上記の「口座管理手数料(毎月かかる)」とは、トータルで毎月かかるコストを表しています。
確定拠出年金の運用資産は信託財産として信託銀行で管理されていますので、運営管理機関が破綻した場合も、ご安心ください。預金商品又は保険商品を提供する金融機関が破綻した場合は、預金保険機構又は生命保険契約者保護機構の取り扱いに準じます。各運用商品の具体的な保護内容は、運営管理機関にお問い合わせください。
それでは金融機関での毎月かかるトータルコストにあたる「口座管理手数料(毎月かかる)」について見てみましょう。
金融機関のHPでは「iDeCo(イデコ)での運営管理料がゼロ円」と表示されている金融機関もあります。ただ上記にすでに記しましたように、トータルでの口座管理手数料としていくらかかるのか?が重要です。見てみましょう。
※表は各社のHPを参考に筆者作成 名称などは執筆時点の内容に基づく
金融機関名 | 積み立て投資を行う場合の毎月かかる口座管理手数料 |
---|---|
楽天証券 | 167円 |
SBI証券 | 167円(セレクト・オリジナル両プランとも) |
松井証券 | 167円 |
マネックス証券 | 167円 |
ろうきん(中央労働金庫) | 472円 |
イオン銀行 | 167円 |
みずほ銀行 | 167円 |
りそな銀行 | 通常年額3,792円とHPに記載、月換算316円と推定(個人払い込みの場合) |
野村證券 | 167円(残高100万円以上) |
野村證券 | 450円(掛金1万円未満かつ残高100万円未満) |
十八銀行 | 617円 |
※十八銀行のみHPより手数料確認できず、数値はモーニングスターのサイト参考
上記比較結果より、トータルでの口座管理手数料が低い「楽天証券・SBI証券・松井証券・マネックス証券・イオン銀行・みずほ銀行・野村證券」がおすすめと判断することができます。
上記10社の金融機関の理論上のおすすめ商品については、こちらの記事をご覧いただければ幸いです。
また、その商品がなぜ重要なのか?なぜその選び方なのか?については、非常に重要なポイントです。長期分散投資の中核を理解することにもつながります。ご興味のある方は、こちらの関連記事も併せてご覧いただければ幸いです。
コストと運用成績には相関性は基本的に「ない」または「はっきりと認められない」と考えられます。ですので、投資信託のコストにせよ、金融機関にかかるコストにせよ、安い方がベターだと考えられます。
一例ですが、毎月167円かかり、40年間(480カ月)行った場合はいくらかかるでしょうか。結果は80,160円です。また、コスト高い金融機関では600円近くかかることもあります。仮に毎月600円かかった場合は、40年間(480カ月)で288,000円となります。
ただ、上記で見ましたように、競争が働いていますので主要な金融機関では同様に最低水準になっています。その中から選択すれば、どこで行っても同様です。より大切なのは、何を選ぶか、どう組み合わせるか、どう運用するか、ではないでしょうか。