- 会社員・自営業者・専業主婦(主夫)など区分によって公的年金の受給額平均は大きく異なる。
- iDeCoの掛け金上限は1.2万円~6.8万円(加入者区分により異なる)。
- iDeCoの掛け金は「年単位拠出」も可能。
公開日:2019年8月14日
本記事では、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金の愛称)における掛け金の上限金額について考察します。会社員や自営業者・主婦などの毎月の「掛け金上限の一覧」も載せておりますのでご確認いただければ幸いです。
※数値や制度の内容は取材時点の内容です。
iDeCoでは、毎月出せるお金のことを掛け金(または拠出額)と呼びますが、この掛け金の上限は働き方によって異なります。もう少し具体的に言うと、自営業者・会社員・公務員・専業主婦(夫)などで異なります。
いったいなぜ、働き方によって異なっているのでしょうか。まずはiDeCoの概要と私たちを取り巻く環境の変化から理解しましょう。そうすることで掛け金が異なる理由が良く分かります。また、私たち個人が資産形成を行うことの本当の意味も見えてきます。
iDeCoの掛け金額の上限は働き方によって異なる
まずiDeCoとは個人型確定拠出年金の愛称です。iDeCoの特徴は次のような内容です。
詳しくは以下記事をご覧ください。
同じような制度に、つみたてNISAという制度があります。似ている部分もある税制優遇制度ですが、主な違いを比較すると次のようになります。
運用益にかかる税金 | 所得控除 | 引き出せる時期
解約 |
拠出可能期間 | |
---|---|---|---|---|
iDeCo | 非課税 | あり | 原則として60歳まで引き出せない | 原則20歳から60歳 |
つみたてNISA | 非課税 | なし | いつでもできる | 2018年~2037年 |
どちらも税制面で優遇されています。老後の資産形成のための制度ですので、両方への加入も可能です。
iDeCoもつみたてNISAも税制面で優遇されている投資制度
あくまでも税制面だけで見た場合、iDeCo(個人型確定拠出年金)の方が有利という見方ができます。それは、つみたてNISAには所得控除がないからです。所得控除を乱暴に言いますと、所得に本来かかるはずの税金が控除され、税金が少し返ってくることを意味します。
ただ、iDeCoは原則60歳まで引き出すことができません。人によってはつみたてNISAの方が使いやすい、という人もいます。筆者はできるだけ両方を併用することが、老後の資産形成のためには良いと考えています。
iDeCoもつみたてNISAも優れた制度なので併用も検討の価値あり
公的年金は老齢期に受給ができる制度ですが、誰しもが一律のお金をもらえるわけではありません。
それは基本的に会社員の場合は、「国民年金+厚生年金」に加入していたり、自営業者の場合は「国民年金」のみであったりと、加入者の区分が異なるからです。
また、それぞれの加入者の加入期間や収めた額などによっても将来受け取れる年金額が変化します。平均ではいくら受給できているのか、見てみましょう。
区分 | 月額受換算 受給額の平均 |
---|---|
夫婦とも会社員勤め | 29万円 |
夫会社員 妻専業主婦 | 21万円 |
妻会社員 夫専業主夫 | 16万円 |
夫婦とも会社員以外 | 10万円 |
独身男性 会社員 | 18万円 |
独身女性 会社員 | 11万円 |
独身男性 会社員以外 | 5万円 |
独身女性 会社員以外 | 5万円 |
参考:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書:「高齢社会における資産形成・管理」
参考文献:東大がつくった高齢社会の教科書:東京大学高齢社会総合研究機構
平均では上の図表のようになりました。これはあくまでも平均ですので、人によって異なります。もっと多い人もいますし、少ない人もいる、ということです。
公的年金の受給額は平均だけで見ても働き方によって大きな幅がある
上記の図表で、読者の方の平均受給額はいくらになっていたでしょうか。
厚生労働省の出している高齢期夫婦の平均的なモデルの生活費は月額26万円です。老後にゆとりある生活を送る場合には月額36万円の出費が必要となっています。
読者の方の状況により大きく異なりますが、もしご自分の将来の受給額が26万円を下回りそうな場合は、会社員・自営業者を問わずに早めの資産形成に着手した方が良いと筆者は考えています。
ちなみに会社員以外の「自営業者」などの場合は何もしなければ老後に受給できる公的年金は「国民年金」のみです。その場合、図表にありますように、平均受給額で5万円と低い金額になっています。自営業者の方は早めに資産形成について考えることが重要ではないかと思います。
老後にもらえるお金はある程度想定可能。不足しそうな人こそ、早めに備える
上記のように、会社員・自営業・主婦などの加入者の区分によって老後の年金受給額が異なります。そしてiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金(積立額)もそれぞれ加入者の区分によって異なります。
なぜでしょうか?筆者の個人的な考えで恐縮ですが、これは税制面などでのバランスをとるためではないかと考えています。つまり、誰しもが公平な掛け金(積立額)では、会社員の人が「年金も多い上に、所得税の控除額が多い。結果として節税額も多くて不公平」ということになってしまいます。
これを防ぐために、会社員よりも自営業者の方が年間の掛け金(積立額)の上限が高く設定されているのではないでしょうか。
それではiDeCo(個人型確定拠出年金)の毎月の上限金額の確認方法を見てみましょう。iDeCo公式サイトで掛け金(積立額)の上限を確認をすることができます。
とは言え、一覧を載せておく方が親切だと思いますので、以下に一覧表を載せます。
加入者区分 | 月額上限掛け金額
(積立額) |
月額最低掛け金額
(積立額) |
年間上限金額 |
---|---|---|---|
自営業者 | 6.8万円 | 5千円 | 81.6万円 |
公務員など | 1.2万円 | 5千円 | 14.4万円 |
会社に企業年金がない会社員 | 2.3万円 | 5千円 | 27.6万円 |
企業型確定拠出年金に加入している会社員 | 2万円 | 5千円 | 24万円 |
確定給付企業年金(厚生年金基金)・企業型確定拠出年金に加入している会社員 | 1.2万円 | 5千円 | 14.4万円 |
確定給付企業年金(厚生年金基金)のみに加入している会社員 | 1.2万円 | 5千円 | 14.4万円 |
専業主婦・主夫 | 2.3万円 | 5千円 | 27.6万円 |
上図のように、iDeCo(個人型確定拠出年金)の最低掛け金は月5千円です。上限金額の掛け金(積立額)まで千円単位で設定可能です。
ここまででiDeCo(個人型確定拠出年金)の毎月の掛け金(積立額)の上限がわかりました。つまり基本的にiDeCoでは、毎月定額の掛け金を出していきます。これがいわゆる「積み立て投資」です。
ところで、掛け金を一年間の単位で考えて「まとめて掛け金を出す」ことはできないのでしょうか?じつは平成30年1月より、ルールが変わって「まとめて掛け金を出す」ことができるようになりました。
iDeCo(個人型確定拠出年金)にまとめて掛け金を出すことを「年単位拠出」と呼びます。まとめて出せる掛け金は前述の加入者区分の上限までです。
名称が「年単位拠出」となっていますが、年間二回に分けてまとめて掛け金(積立額)を出すことなども可能です。
例えば、毎月の収入に余裕がない方の場合、毎月掛け金(積立額)の上限までお金を出すことが難しいことがあります。しかし、ボーナス時期には余裕があることも考えられます。
そんな時に、例えば6月・12月がボーナス時期の場合はその時期だけまとめて年間の掛け金(積立額)の上限までお金を出すことができる場合も考えられます。
任意の時期にまとめて掛け金を出すことが可能
年単位拠出を行う場合は、手続きが必要です。「加入者月別掛け金額登録・変更届(K-030)」を記入し設定する必要があります。
年単位拠出を行うには事前に手続きが必要
iDeCo(個人型確定拠出年金)は運用益が非課税になったり、掛け金(積立額)が全額所得控除になったりと、お得な一面があります。
ただ、加入者の区分により、毎月の掛け金の上限が異なります。それは、見方を変えると老齢期に受給できる公的年金の多い少ないに比しているとも見えます。
現役時代は、日々の生活費に子育て費用・住居費用と毎月高額のお金がかかります。そのため、iDeCoやつみたてNISAに毎月出せるお金がないという場合もあるかと思います。
しかし、その一方で資産形成は長期間行うことで効果をより強く発揮できる可能性があります。できる範囲でいいので、少しずつ資産形成を行うことが重要ではないでしょうか。本記事が読者の方の資産形成の一助になれば幸いです。
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