公開日:2019年9月9日
国民年金の保険料は、原則として20歳から60歳までの40年間において、日本に住んでいるすべての方が納めなければならないことが法律(国民年金法)で決まっています。
つまり、国民年金には納付義務があることを意味しますが、仮に国民年金を納めない場合、実のところ、老後の年金問題だけに関わらない数多くのデメリットが生じてしまいます。
そこで本記事では、国民年金を払わないデメリットを中心に解説を進めていきます。
目次
国民年金保険料を払わない主なデメリットとして、滞納者および未納者本人が障害や死亡といった状態になった場合において、国民年金から支払われる障害基礎年金や遺族基礎年金の支給が受けられない懸念が生じます。
また、原則として65歳から支払われる老後生活資金にあたる老齢基礎年金も支払われない懸念が生じるため、国民年金保険料を払わないことに対するメリットは一切なく、デメリットしかありません。
令和元年度(平成31年4月~令和2年3月まで)における国民年金の保険料は、1ヶ月あたり16,410円となっており、無職の人や低所得の人からしますと、国民年金を納めるのが義務だと分かっていても、中々納められない人も多いのが現状です。
実際、国民年金の納付について滞納や未納がある場合、日本年金機構から督促状が郵送で送付されたり、日本年金機構から委託を受けているアイヴィジットという会社から自宅へ電話が来たりします。
国民年金保険料を滞納や未納にしている場合、日本年金機構(年金事務所)から督促状やアイヴィジットから電話が来ることをお伝えしましたが、これらの場合の対応方法をそれぞれ紹介します。
日本年金機構(年金事務所)から督促状が届いた場合は、督促状に書かれている内容を一度確認し、必ず年金事務所に電話連絡をするようにして下さい。
この時、時間を設けて一度年金事務所へ足を運ぶことになる場合もありますが、重要なのは、なぜ未納や滞納になっているのか理由を説明した上で、国民年金の納付免除手続きを取ることです。
なお、国民年金保険料の免除制度につきましては後程解説を進めます。
アイヴィジットから電話が来た場合、電話が来た時点で日本年金機構(年金事務所)に電話連絡を済ませているのであれば、すでに電話連絡をして今後の対応について相談することになっている旨を伝えることで足ります。
日本年金機構(年金事務所)とアイヴィジットの情報伝達にはタイムラグが生じるため、すでに日本年金機構(年金事務所)に電話連絡を済ませた後であったとしても、重複して同じ内容の問い合わせが来ることも多々あります。
そのため、とても不快な思いをしてしまうことも十分考えられますが、冷静に対応しておくようにしたいものです。
国民年金保険料の免除制度とは、無職や低所得をはじめ、勤務先の倒産や解雇などによる失業によって、国民年金の保険料を納めるのが経済的に難しい場合に行う手続きです。
国民年金保険料の免除制度を活用しますと、国民年金の保険料が滞納や未納といった取り扱いにはならず、納付が免除される取り扱いになり、以下のようなメリットが得られます。
日本年金機構(年金事務所)から国民年金保険料の滞納や未納に対する督促やアイヴィジットからの催促などによる電話連絡は、あくまでも国民年金保険料の滞納や未納がある場合となります。
したがって、国民年金保険料の免除制度を活用したことによって、これまでの年金納付履歴に未納期間がない場合は、これらの連絡が来ることはありません。
国民年金保険料の免除制度を活用しますと、国民年金が免除された期間について受給資格期間に反映されるメリットがあります。
受給資格期間とは、年金の支給を受けるために必要な期間のことです。一例として、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金が支給されるために必要な国民年金保険料の納付要件について、以下に紹介します。
なお、納付要件の紹介において、国民年金保険料の免除に関するものだけを紹介し、すべての納付要件ではないことをあらかじめ申し添えておきます。
前項の解説より、国民年金の免除期間は受給資格期間に反映されるため、仮に老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金が支給されるための要件を満たした場合にお金を受け取ることができます。
その一方で、国民年金保険料の免除申請をせず、国民年金保険料の滞納や未納をしていた場合、その期間は受給資格期間に反映されないため、免除申請を行っていた方が得策であることが分かります。
実のところ、国民年金の免除期間は将来受け取る年金額に反映されることになっており、具体的には、原則として65歳から支給される老齢基礎年金を受け取る際に、2分の1が受け取れる仕組みになっています。
大まかな例となりますが、仮に20歳から60歳までの40年間において、すべて全額免除の取り扱いとなった場合、1年間に支給される老齢基礎年金は、年額390,100円(令和元年度)となります。
なお、滞納や未納は年金額に反映されません。
これまで国民年金保険料の免除制度について解説を進めましたが、国民年金の滞納や未納を防ぐための制度として、免除制度のほかに国民年金保険料の納付猶予制度があります。
国民年金保険料の納付猶予制度とは、年齢が20歳から50歳未満の人で、本人と配偶者の前年の所得が一定金額以下の場合、申請をすることによって、国民年金保険料の納付が猶予される制度のことを言います。
国民年金保険料の納付猶予制度が承認される一定金額には計算式が定められており、以下の計算式によって計算した金額の範囲内であれば、国民年金保険料の納付猶予が承認されます。
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
なお、計算式にある扶養親族等の数とは、源泉徴収票や確定申告書に記載されている扶養控除を適用した人数のことを指しており、いわゆる税法上の扶養人数となります。
したがって、0歳から15歳までのいわゆる年少扶養親族は、扶養親族等の数に含まれない点に注意が必要です。
こちらは、国民年金保険料の納付猶予制度における注意点となりますが、仮に国民年金保険料の納付猶予制度を活用した場合、納付猶予を受けた期間について、受給資格期間に反映されるものの、将来受け取る年金額に反映されません。
次項で解説を進めますが、納付猶予を受けた期間は追納と言って、免除などの承認を受けた期間の国民年金保険料を後から納付しなければ、将来の年金額に反映されることはありません。
国民年金保険料を払わない場合、基本的に将来支給される年金額も増加しないため、このような事態を避けるために、免除や納付猶予を受けた期間の国民年金を後から納付することができる追納制度が設けられています。
実際に追納をするためには、年金事務所に対して追納の申請手続きをする必要があり、この手続きを行うことによって後日納付書が自宅へ郵送され、その納付書で国民年金を納付する流れとなります。
国民年金の保険料を追納する際の注意点として、追納することができる期間が10年以内の期間に限られていることが1つ目の注意点として挙げられます。
たとえば、平成30年4月の国民年金保険料を追納する場合の期間は、令和10年4月末日までといったイメージです。
2つ目の注意点として、3年度目以降に追納をする場合、追納するべき国民年金保険料に時間が経過したことによる加算額が上乗せされることが挙げられます。
これによって、本来納めるべき国民年金よりも多くのお金を納付しなければならなくなるため、早めに追納されることが望ましいと言えます。
国民年金の追納を申請し、郵送された納付書で国民年金を納めた場合、その納めた金額は、所得税や住民税を計算する上で控除される社会保険料控除として適用できます。
たとえば、平成30年度に免除を受けた国民年金保険料が60,000円あったとし、この60,000円分の国民年金保険料を令和元年に追納したとします。
この時、令和元年度の年末調整や確定申告時に60,000円分の社会保険料控除が適用でき、これによって納めるべき所得税や住民税が軽減されるメリットが得られます。
通常、毎年秋ごろになりますと、日本年金機構より社会保険料控除証明書が自宅へ郵送され、1年間に支払った国民年金保険料の金額などが記載された葉書を受け取ります。
これを年末調整や確定申告の際に添付して社会保険料控除の適用を受けますが、仮に年末(12月31日)近くなど、すでに社会保険料控除証明書が届いてからの追納は、同証明書に追納後の金額が反映されていません。
そのため、このような場合は追納後に受け取る納付書の控えを添付することで、適用忘れをすることなく社会保険料控除が受けられることになるため、いつ追納しても大丈夫だと言えるでしょう。
これまで、国民年金の保険料を払わないデメリットと滞納や未納を回避するための方法として、国民年金保険料の免除制度および国民年金保険料の納付猶予制度、追納制度について解説を進めました。
本記事で解説した様々な制度があることによって、情報が上手く整理できない場合も考えられるため、以下、それぞれの制度を活用した場合における国民年金の受給資格期間と年金額の反映効果についてまとめます。
年金の種類 | 老齢基礎年金 | 障害基礎年金 | 遺族基礎年金 | |
---|---|---|---|---|
反映効果 | 受給資格期間の反映 | 年金額への反映 | 受給資格期間の反映
(年金額の反映はありません) |
|
全額納付 | 〇 | 〇 | 〇 | |
全額免除 | 〇 | 〇 | 〇 | |
一部免除 | 〇 | 〇 | 〇 | |
納付猶予 | 〇 | × | 〇 | |
滞納・未納 | × | × | × |
前項の表を見ると、国民年金保険料を滞納や未納のままにしておくデメリットは一目瞭然であることが確認できます。
国民年金は、老後生活資金にあたる老齢基礎年金だけではなく、障害や死亡といった場合に一定要件を満たすことで支給が受けられる障害基礎年金や遺族基礎年金もあり、年金を払わない効果は、国民年金で保障が受けられるすべての年金に対してデメリットしか与えないことが分かります。
国民年金保険料を滞納や未納にしている場合は、できるだけ速やかに年金事務所へ相談をし、国民年金の免除制度や猶予制度が適用できないか対応をすることが得策です。
一時的に免除や猶予の対応を受け、お金に余裕ができた時に少しずつ追納していくことが、将来の老後資金対策や配偶者および子供のためになることをしっかりと理解しておくことが極めて重要であると言えます。
国民年金保険料を払わないデメリットは数多くあります。
実際のところ、それぞれの人が置かれている状況は全く異なりますが、例えば既婚の場合における未納のデメリットは大きいと考えられ、配偶者や子供がいる状態での障害状態や死亡といったリスクを生活保障の面で支える働きが国民年金にはあります。
国民年金は、老後生活資金だけに特化したものではありませんので、広い視野で将来のお金や物事を考え、どうしても年金を納めることができない場合は、免除申請や納付猶予といった制度を上手に活用するようにしたいものです。
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