- 離婚の際の財産分与割合は原則として2分の1ずつ。
- 退職金は近い将来もらえるものでも財産分与の対象になる。
- 住宅ローンの残っている家については、家の売却代金がローン残高を上回れば財産分与ができる。
- 財産分与で財産を受け取った側には税金はかからないが、財産を分与した側に税金がかかることがある。
- 財産分与を請求する権利は放棄することもできる。
公開日:2018年10月15日
離婚する際に、夫婦間で話し合うべき事項に「財産分与」があります。財産分与とは、そもそも何のために行うのでしょうか?また、財産はどんなふうに分けるのでしょうか?
本記事では、家や退職金など離婚の際の財産分与について、知っておきたい基本的な事項をご紹介します。
その他の離婚に関する手続きについては以下記事を参考にどうぞ。
目次
離婚の際の財産分与について、まずは法律的な性質や対象となる財産を知っておきましょう。
離婚時の財産分与には、結婚している間に夫婦が一緒に築いてきた財産を夫、妻それぞれの財産に分けるという意味があります。
日本では、結婚している夫婦の財布は1つと考えられているため、夫婦の一方が稼いだお金で買った財産でも、夫婦の共有財産です。離婚すれば夫婦ではなく他人になりますから、財産分与を行って、共有財産を各人の財産に分ける必要があります。
財産分与では、夫婦それぞれが財産形成に貢献した度合い(貢献度)で分けるのが基本です。ただし、貢献度は収入に比例するわけではありません。
たとえば、夫が外で働いて給料を得るために、妻が家事に専念して夫を支えることはありますから、夫の得た収入には妻の貢献も入っているのです。
こうしたことを考慮し、財産分与では、たとえ専業主婦であっても、原則として2分の1の財産をもらう権利があるとされています。
財産分与では、プラスの財産(資産)だけではなく、マイナスの財産(負債)も対象になります。財産分与の対象となるのは、夫婦が共同生活を送るために生じた負債のみです。
たとえば、生活費が足りなくなってカードローンで借りたお金や、夫婦で使う車を購入するために組んだローンなどは財産分与の対象になります。
一方、ギャンブルに使うための借金、友人のためにした借金などは、夫婦の共同生活には関係ないため、財産分与の対象にはなりません。
負債も原則として財産分与しますが、夫婦の財産をトータルして資産よりも負債が上回る場合には、財産分与の対象とはならないと考えられています。債務超過で残る借金は、債務者である側が支払うことになり、他方が負担する必要はありません。
夫婦間で借金の負担について取り決めすることはできますが、債権者に対してはあくまで債務者である側が支払う必要があります。
夫婦が共同で購入した家は、財産分与の対象になります。ただし、離婚時に住宅ローンが残っていれば、財産分与できないこともあります。
家については、売却して処分する、もしくは一方が引き継ぐという2通りの選択肢がありますが、どちらを選ぶかで財産分与方法も変わってきます。
住宅ローン返済中でない家は、財産分与ができます。財産分与方法は、次のようになります。
売却して得られた代金を夫婦で分ける形で財産分与を行います。
家を引き継ぐ側が、他方に対し、家の価値の半分の清算金を支払うことで財産分与します。
たとえば、妻が家を引き継ぐ場合、家の売却価格(査定額)が2,000万円であれば、妻から夫に1,000万円を支払うことになります。
住宅ローン返済中の家は、家の売却価格よりも住宅ローン残高が少ない場合(アンダーローンの場合)に財産分与が可能です。
家はローンを完済しなければ売却できませんが、アンダーローンなら売却代金でローンを完済できるため、売却が可能です。
ローンを完済して残ったお金は、夫婦間で財産分与ができます。
家を売却せず、一方が引き継ぐ場合には、家の売却価格(査定額)から住宅ローン残高を差し引いた額の2分の1を他方に対して支払う形で財産分与できます。
なお、住宅ローン返済中の家は、金融機関の承諾がなければ名義変更ができないので、名義人でない方が家を引き継ぐのは困難な場合があります。
離婚後も別れた配偶者名義の家や共有名義の家に住み続けると、トラブルが起こる可能性が高くなります。
家を引き継ぎたい側の単独名義にできない場合には、専門家に相談して対処するのがおすすめです。
家の売却価格よりもローン残高の方が大きい場合(オーバーローンの場合)、家には資産価値がないと考えられるため、家は財産分与の対象になりません。
オーバーローンの場合、家を売ってもローンを完済できないため、差額分を用意しない限り、通常の方法では家の売却ができません。
任意売却という方法によれば家を売却できることがありますが、借金は残ってしまいます。
オーバーローンの家は売却ができないので、通常は住宅ローン債務者である側が引き継ぎます。金融機関の承諾を得て名義変更ができれば、名義人でない方が家を引き継ぐこともできます。
会社を退職するときにもらう退職金は、給料の一部を会社から後払いしてもらうものと考えられています。
結婚している間の夫の給料は、妻と共同で得たものですから、夫のもらう退職金についても、妻は財産分与を受ける権利があります。
まだ退職金を受け取っていなくても、近い将来受け取れる可能性が高い場合には、その退職金も財産分与の対象になると考えられています。近い将来とは、判例では、概ね10年以内とされています。
将来の退職金については、前もって立て替えてもらうのでない限り、支払いも先になってしまいます。退職金をもらった時点できちんと支払いが行われるよう、離婚時に約束した内容を公正証書にしておくとよいでしょう。
財産をもらうとなると、気になるのが贈与税などの税金です。財産分与で税金が課されることがあるかどうかを知っておきましょう。
無償で財産を取得したら、贈与税の課税対象になります。財産分与は夫婦の財産関係の清算で、無償で財産を取得しているわけではありませんから、贈与税は課税されません。
ただし、財産分与というには多すぎるような場合には、多すぎる部分に贈与税が課されることがあります。
有償・無償にかかわらず、不動産を取得したときにかかる税金が不動産取得税です。財産分与で不動産をもらった場合、通常の清算的な財産分与であれば、不動産取得税はかからないことになっています。
慰謝料がわりに不動産をもらった場合などには、不動産取得税が課税されることがあります。
譲渡所得税とは、不動産などの財産を譲渡した際の譲渡所得に対して課税される税金です。
不動産の財産分与を行った場合、不動産の価格が購入時よりも値上がりしていれば、分与した側に譲渡所得が発生しているとみなされ、譲渡所得税が課税されます。
なお、居住用財産の譲渡に関しては3,000万円の特別控除が受けられるため、課税対象となるケースでも、実際には税金が発生しないこともあります。
財産分与は離婚時に必ずしなければならないわけではありません。財産分与をせずに離婚することも可能です。
財産分与は、通常、財産を持っている側に対して他方から請求することになります。財産分与請求ができる期間は、離婚のときから2年以内とされています。
何もせずに放っておけば、2年経過した時点で財産分与請求できなくなるということです。
離婚するときに、財産分与を放棄する意思を表明しておくことも可能です。財産分与を放棄すれば、2年経過するまでもなく、財産分与請求はできなくなります。
ただし、財産分与の放棄はあくまで本人の意思で行うものですから、相手に対して財産分与請求しないよう要求することはできません。
なお、財産分与を放棄するときには、後で言った言わないでもめることのないよう、離婚協議書にその旨を明記しておきましょう。
財産分与は、夫婦が婚姻中に共同で築いた財産を半分ずつに分けるものです。家など今ある財産だけでなく、借金や将来の退職金も財産分与の対象になります。
家の財産分与については、住宅ローンの関係で、特に注意が必要です。当事者だけで決めるのではなく、専門家に相談して対処方法を考えるようにしましょう。
親権や養育費・慰謝料など、離婚問題でお悩みの場合は法律のプロに相談することをおすすめします。でも、どうやって法律のプロを探せばよいのか戸惑う方も多いはず。。
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