- 税法上の扶養と健康保険法の扶養は一緒でなくてもよい。
- 16歳未満の子供も、所得税は扶養でなくても住民税では扶養にできる。
公開日:2021年1月21日
夫婦共働き世帯の数は年々増え続けています。お子様がいる場合は、扶養親族とすることで税金の負担を減らすことができますが、夫にも妻にも収入がある場合はどちらの扶養に入れるのがお得なのでしょうか?
税金面だけではなく、健康保険においてもメリットがある扶養控除の条件やルールについて解説します。
「扶養」には、「税法上の扶養」と「健康保険法上の扶養」の2種類の意味があります。扶養について検討する際は、それぞれを分けて考えなければいけません。なお、税法上の扶養でも、「所得税」と「住民税」でポイントとなる点が異なります。
また、「社会保険上の扶養」というものもありますが、これは年金や健康保険を考える上での扶養のことです。今回の記事では子どもの扶養に限定し、健康保険法上で見ていきます。
共働き夫婦の場合、なんとなく子どもを夫の扶養に入れているケースが多いのではないのでしょうか。実は、扶養をどちらに入れるかは自分たちで決めることができます。
扶税法上の扶養、社会保険法上の扶養は、必ずしも両方を同じ人に入れなくてはならないという決まりはありません。つまり、税法上の扶養と社会保険法上の扶養は別々でも構わないのです。それぞれどちらの扶養に入れるのがよいかを考えて、お得になる方を選ぶとよいでしょう。
税法上の扶養とは、所得税法の扶養控除制度のことをいいます。「扶養」という言葉を聞くと、一般的に浮かぶのがこちらの所得税法の扶養ではないのでしょうか。
子どもを税法上の扶養に入れることで、親の所得税・住民税の節税ができる「扶養控除」を受けられます。子どもの年齢によって、控除される所得税・住民税の金額が異なります。扶養控除制度について、以下で詳しく見ていきましょう。
扶養控除制度とは、扶養親族のうちその年12月31日現在の年齢が16歳以上の人は、「控除対象扶養親族」として年間38万円を控除できるというものです。さらに、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人は、「特定扶養親族」として年間63万円を控除できます。
年齢16歳以上のお子様がいる場合は、収入が多い方の扶養に入れるとよいでしょう。なぜなら、所得税は「累進課税制度」となっているためです。
所得税は、所得が多くなるほど税率が高くなる仕組みとなっています。所得税の税率は5%から45%です。所得によって節税額が大きく異なり、所得が多い方の扶養に入れることで税金を減らす効果が高くなります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
住民税の扶養控除は、所得税の扶養控除とは控除額が異なります。16歳以上19歳未満の一般の扶養親族の場合は33万円、19歳以上23歳未満の特定扶養親族は45万円の扶養控除となります。
毎年11月下旬ごろの年末調整では、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が配られます。住民税の扶養控除を受けるためには、この書類の下部にある「住民税に関する事項」の欄に親族の情報を記載しましょう。
「児童手当」の支給対象となる16歳未満の年少扶養親族は、所得税上では扶養控除の対象になりません。この場合、「夫と妻のどちらが扶養控除を受けても一緒」と思っていませんか。
確かに所得税法上においては、どちらの扶養に入れても所得税には一切影響がありません。しかし、住民税においては、16歳未満の年少扶養親族でも扶養控除の対象になります。
共働きで同じような収入であれば、所得税と同様にどちらの扶養に入れても大きな影響はありません。ただし、共働きの夫・妻いずれかの年収が「非課税限度額」よりも低い場合は注意が必要です。
住民税には、扶養控除制度とは別に「非課税限度額」という制度があります。所得が非課税限度額以下の場合、子どもを扶養とすることで住民税を「ゼロ」にすることができます。
個人住民税の非課税限度額については、お住まいの自治体のホームページにて確認できます。年収が非課税限度額を超えるかどうか、一度計算してみるとよいでしょう。
健康保険法上の扶養は、扶養に入れたからといって支払う保険料が安くなるわけではありません。扶養に入れる目的は、子どもが親と同じように健康保険を利用できるようにすることです。扶養に入れると、大人1人分の保険料だけで子どもも2〜3割負担で医療を受けられます。
共働きの場合、原則は収入が多い方の扶養に入れます。ただし、生活の実態上「年収が低い方の収入で養っている」といえる場合は、年収が低い方の扶養に入れることが認められるケースもあります。
また、夫婦が同程度の収入であれば、健康保険の給付が手厚い方の扶養に入れることをおすすめします。
健康保険には、一般中小企業の社員が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」と、大企業の社員が加入する「健康保険組合」があります。「健康保険組合」は高額療養費の給付が手厚かったり、差額ベッド代や予防接種の費用の補助が出たりすることがあります。
社会保険の被保険者の扶養に入るための手続きは、扶養に入る本人ではなく、社会保険の被保険者が行います。具体的には、事業主を経由して日本年金機構へ「被扶養者(異動)届」を提出します。
特定扶養親族がいる場合、所得税法上は収入が高い方の扶養に入れているかと思います。住宅借入金特別控除を夫・妻の両方が受けている場合は、それで問題はありません。しかし、夫だけが住宅借入金特別控除にて全額還付を受けている状態ならば注意が必要です。
住宅借入金特別控除は扶養控除の所得控除(※1)とは異なり、税額控除(※2)となります。所得控除後の課税される所得を確認し、特定扶養控除の63万円がきちんと活用されているかを確認してみましょう。
活用されていない場合、住宅借入金特別控除を受けていない妻が特定扶養控除を受けることで、一歩踏み込んだ節税ができるかもしれません。住宅借入金特別控除が終われば、収入が高い方に扶養を戻すとよいでしょう。
所得控除は、税額を計算する前の所得から控除が適用されます。所得税額は、所得から所得控除を差し引いた金額に税率をかけて計算します。そのため、所得控除の金額がすべて税額から差し引かれるわけではありません。
また、所得税は所得の金額に応じた累進税率を採用していることから、それぞれ適用される税率が異なり、結果的に控除される金額も変わります。
税額控除は、所得控除を差し引いた後の課税所得金額に税率をかけて計算した税額から、直接控除が適用されます。そのため計算された所得税額を限度として、控除の金額がすべて税額から差し引かれます。
所得(①+②) | |
課税される所得(①) | 所得控除(生命保険料控除、扶養控除、社会保険料控除等)(②) |
所得税額(①×税率) | 税額控除(住宅借入金等特別控除等) |
今回は共働き夫婦の子どもの扶養について解説しました。記事で説明した通り、扶税法上の扶養と社会保険法上の扶養は別々にすることが可能です。どちらの扶養に入れるべきかを夫婦で検討し、お得になる方を選びましょう。
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