- 年末調整とはその人の1年間の収入に対する本来の税額と、差し引かれた税額を比較して本来の税額に調整する手続きのこと。
- 過不足額が生じる原因となる項目がいくつかあるため、年末調整にミスがあったという見方ではなく原因を探る必要がある。
公開日:2019年11月13日
毎年、年末調整と聞くと還付金がいくらなのかを楽しみにしている人が多いように、還付されることが当たり前のようなイメージがあるのではないでしょうか?
しかし年末調整とは、1年を通して勤務先で差し引いた所得税額を正しい税額に精算する手続きのため、還付額が発生するだけではなく、過不足額といって逆に税金を追加で徴収される場合もあります。
このため給料明細が還付金というプラスの項目でなく、過不足額というマイナスの金額で計算されても一概に間違いであるとは言い切れません。それでは過不足額が生じる原因・理由は何があるのでしょうか?この記事では詳細について紹介していきます。
目次
一般的に給与が毎月支給される場合は、それに伴って源泉の控除額が発生しています。それではそもそも給与から所得税が差し引かれるのはなぜでしょうか?ここではその理由について解説していきます。
上記でも少し触れましたが、給与から所得税が控除されるのはなぜでしょうか?考えられる理由として、一般的に国としては税金をなるべく先に徴収したいという考え方であると言われています。
そのため個人の方全員の所得税を確定申告で処理する形になってしまうと、少なくとも翌年になるまで所得税を徴収できない形となってしまうので、所得税を徴収する時期がだいぶ遅くなってしまいます。
また個人の方全員が所得税を年末以降に確定申告によって納付する形では、個人の方々の手続きも煩雑になってしまいます。
そこで法人や個人事業主などの事業所に勤務している人については、原則として会社で毎月源泉税として所得税を納付してもらう形をとることが国としては望ましい形となります。
ただこの形でもやはり事務手続きが煩雑になってしまうため、特例として従業員の人数などの要件を満たすことによって、毎月の源泉税を毎月納付ではなく、半年に1回源泉税を納付すればよいという納期の特例が認められています。
このように事前に給料から所得税が差し引かれることによって、毎月1回や半年に1回所得税を納めてもらうことができれば、国としては所得税の税収の確保が楽になります。一方個人の方々にとっても確定申告をするほどには手間はかかりません。
こうして考えてみると給与からの所得税の控除は、国にとっても個人の方にとっても双方にメリットがある仕組みになっていると言えます。
上記で法人や個人の事業所で所得税を差し引いて、毎月1回や半年に1回まとめて源泉税として国に納付するという話を解説しました。それでは、よく聞く年末調整とはどのような手続きなのでしょうか?
年末調整のやり方としては、個人の1年間の1月から12月までの収入に対する本来の税額を計算し、同時にその人の1月から12月までに給与から差し引かれた税額を集計します。
次に、本来の税額と差し引かれた税額の2つの税額を比較します。その際、本来の税額が差し引かれた税額よりも少なければ還付となり税金が戻ってきます。
一方、本来の税額が差し引かれた税額よりも多ければ、税金に過不足が生じている形となり所得税が追加で徴収されます。
このように年末調整とは、個人の1年間の収入に対する本来の税額を計算し、最終的にその人の1年間の給与から差し引かれた税額を本来の税額に調整する手続きのことをいいます。
なお年末調整については下記の記事でも詳細を紹介しています。
それでは年末調整の際、所得税額に過不足金が生じる原因とはなんでしょうか?ここでは考えられる原因について解説していきます。
過不足金が生じる原因の1つとして、単純に収入に対して源泉徴収された金額が少ないことが考えられます。例えば法人や個人の事業所のその年の業績が良かった場合、賞与などの支給によって従業員に還元されることがあります。
その場合、賞与が支給されたために1年の合計の収入が上がってしまい、支給時に源泉徴収された金額では少なくなってしまうことがあります。
このような場合に年末調整の計算をすると、源泉徴収された金額が本来の税額より少なくなってしまうため過不足金が生じてしまうのです。
過不足金が生じる原因として、扶養親族の人数が変更になった場合を挙げることができます。よくあるパターンとしてはご主人と奥様が共働きの場合、収入によっては控除額が減ってしまう形になるため税額に影響してきます。
一例として配偶者控除を例にすると、ご主人の年収が1,120万円で奥様の年収が103万円以内であれば、配偶者控除の範囲なので扶養の範囲という形となります。
一方別の例として、子供がアルバイトなどで年収103万円を超えてしまった場合は、扶養から外れてしまう形になります。
上記のように年収の要件によって、扶養親族の人数が変更になってしまう他、子供が一人暮らしをするために出て行ってしまったといった場合も扶養親族の人数が変更になってしまうこともあります。
このように過不足金が生じる様々な原因があるため、上述した通りマイナスになっているからといって年末調整が間違っているわけではないのです。
過不足金が生じる原因として考えられるものが、前年の条件と今年の条件が異なっている場合が挙げられます。この中で大きいのが社会保険料の支払額ではないでしょうか。
社会保険料の控除額は支払金額がそのまま控除できるのですが、例えば前年には支払を忘れていた国民健康保険料や国民年金保険料などを余分に納めていたが、今年は就職も決まり、社会保険料は事業所で加入したという方がいたとします。
この場合は前年の社会保険料の支払額が、今年の社会保険料の支払額を上回っている可能性があるため、結果として社会保険料の控除額が少なくなるということが考えられます。
以上のような場合も年末調整で過不足額が生じることが考えられます。
また民間の生命保険などの契約を変更した場合も、もちろん過不足額が生じる原因となります。
保険料控除については計算の上、最大12万円を控除することができますが、何かの契約を見直してその保険を解約してしまったという場合は、最大で取れる控除額が少なくなってしまう可能性が当然あります。
このように年末調整では還付が当たり前ではなく、いくつかの過不足が発生するケースも考えられるので、過不足になったからといってすぐにミスがあるとは考えないで原因を探ってみることをおすすめします。
年末調整で処理できない項目は、ほとんどの場合、最終的には自分で確定申告をしなければいけません。
例として初年度の住宅ローン控除が挙げられますが、年末調整で処理できると勘違いしやすいけれど、実は年末調整では処理できない項目には他に何があるでしょうか?
ここでは年末調整で処理できない項目について簡単に紹介していきます。
初年度の住宅ローン控除については、年末調整では処理できないため確定申告をしなければいけません。
住宅ローン控除の確定申告については必要書類も多いため、できれば税理士などの専門家に依頼することをおすすめしますが、2年目からは年末調整で処理できるため、手続きとしては楽になります。
なお住宅ローン控除の年末調整については下記の記事で詳細を紹介しています。
ふるさと納税の控除についても、年末調整では処理することができません。主な理由として該当年の12月31日までに、ふるさと納税として寄附された1年間の総額が対象となるためです。
そのためふるさと納税の控除を受けるためには、自分で確定申告をする方法や、ワンストップ特例制度を利用する方法などがあります。
医療費控除の処理についても年末調整では処理することができません。こちらも主な理由として、該当年の12月31日までに医療機関などを利用した1年間の医療費の総額が対象となるためです。
このため医療費控除についても、自分で確定申告をする方法や、医療費控除の特例にあたるセルフメディケーション税制を利用する方法などがあります。
災害などで予期せぬ支出があった場合、内容によっては雑損控除という控除が認められる場合があります。こちらも年末調整では処理できないため、自分で確定申告をして処理する必要があります。
以上のように年末調整は、言い換えれば簡易的な確定申告のようなものなので、処理できない項目も多くあります。年末調整で処理できない項目の多くは、自分で確定申告をするのも煩雑になってしまいがちです。
もし自分で確定申告するのは難しいと思うようなら、多少の費用を覚悟しても専門家への依頼を検討することをおすすめします。
確かに費用はかかってしまうかもしれませんが、本来確定申告を自分でした場合にかかる時間の節約ができると考えると費用以上のメリットがあるのではないでしょうか。
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今回の記事では、年末調整で過不足額が生じてしまう理由について紹介しました。上述した通り、年末調整のイメージとして還付されることを考えてしまう人が多いかと思いますが、年末調整の条件によっては過不足額が生じてしまうこともあります。
還付されるのを楽しみにしていたにもかかわらず、過不足額が生じて逆に徴収になってしまうと、何か年末調整にミスがあったのではないかと疑ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、意外にもちょっとしたことで過不足額が生じてしまう場合もあります。今回の記事を参考に、まずは過不足額が生じた原因を探っていただければと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。
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