- パートで働いても年収103万円までは所得税がかからない。
- 主婦のパート年収が150万円を超えると夫の配偶者控除額が減る。
- 主婦も年収130万円を超えると自分で社会保険に入らなければならない。
- 目先の損得にとらわれず長期的な資産形成を目指すことも大切。
公開日:2019年12月12日
主婦の方の中には、「夫の扶養内で働きたい」と考えている人も多いのではないでしょうか?パートで働く場合、いくつかの年収の壁があり、壁を超えてしまうと働き損になると言われます。
本記事では、パート主婦の賢い働き方を説明しますので、損しないために知識を身につけておいてください。
目次
家事や育児と両立するために、短時間の勤務を選ぶ主婦の方も多いと思います。お金を稼ぐと、所得税や住民税といった税金がかかります。税金がかかると手取りが減ってしまうことを意識しておかなければなりません。
働いてちょっとでもお金が入れば、必ず税金を払わなければならないわけではありません。収入が一定の金額に達するまでは、税金はかからないしくみになっています。
所得税は、収入から差し引きされる金額を控除した課税所得に対してかかります。給料をもらっている人は、収入から少なくとも給与所得控除として65万円、基礎控除として38万円を差し引きできます。
つまり、年間の収入が103万円に達するまでは、課税所得がゼロになるので、所得税はかかりません。
住民税の計算方法は自治体によって変わります。住民税の場合には、給与所得控除の65万円と非課税限度額の35万円を合計した100万円までが非課税になるのが通常です。
パートで働く場合、年間の収入を100万円以内におさえれば、所得税も住民税もかかりません。
給与所得者の場合、所得税は自分で税務署に納めるわけではなく、源泉徴収により毎月の給料から天引きされます。パートであっても、原則として給料から源泉徴収が行われます。
非課税になるケースでは、年末調整があれば年末調整により、年末調整がなければ確定申告により税金が還付されます。
なお、給料が月額8万8,000円未満の場合には、源泉所得税が0円となり、給料天引きはありません。年末調整や確定申告の手間もいらず、給料を丸々手にすることができます。
手取り額を減らしたくないという理由で、税金がかからない範囲内で働きたいと考える人も多いでしょう。103万円の壁を超えない限り、所得税はかかりません。
ただし、103万円を超えても急激に手取りが減るようなことはないので、あまり気にしすぎない方がよいでしょう。
税率は5%なので、税額を計算すると
となります。年間の収入が7万円増えても税金は3,500円かかるだけですから、働いた方が得とも考えられます。
上記の計算は他の所得控除を考慮していない場合です。実際には社会保険料控除や生命保険料控除が受けられ、税額がゼロになることもあります。
妻が働くと、夫の税金にも影響します。家族の収入を増やすには、夫婦で負担を減らすことを考えなければなりません。夫が配偶者控除を受けられる要件を知っておきましょう。
配偶者控除とは、妻がいる夫が受けられる所得控除です。対象となる妻の要件は、次のようになっています。
上記1~4の要件をみたす妻がいる場合、夫の年収が900万円以下なら、38万円の控除が受けられます。夫の年収が900万円を超えると控除額は減り、1,000万円を超えると控除は受けられません。
(※夫と妻が逆のケースもあります。)
年間所得38万円は、給与所得控除の65万円を加えた103万円です。つまり、夫が配偶者控除が受けられる妻の年収は103万円以下になります。
なお、令和2年分からは、妻の年間の合計所得金額の要件が48万円以下に引き上げになりますが、同時に給与所得控除が55万円に引き下げになるため、103万円が基準になることには変わりはありません。
配偶者特別控除は、配偶者控除が受けられない夫が、所得に応じて段階的に受けられる控除です。
夫の年収が900万円以下の場合、控除額は次のとおりです(令和元年分まで)。
配偶者の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
38万円超85万円以下 | 38万円 |
85万円超90万円以下 | 36万円 |
90万円超95万円以下 | 31万円 |
95万円超100万円以下 | 26万円 |
100万円超105万円以下 | 21万円 |
105万円超110万円以下 | 16万円 |
110万円超115万円以下 | 11万円 |
115万円超120万円以下 | 6万円 |
120万円超123万円以下 | 3万円 |
夫の年収が900万円を超えても、1,000万円以下なら、段階的に控除が受けられます。
配偶者特別控除でも、妻の年間所得が85万円以下なら、最大である38万円の控除が受けられます。所得85万円は年収150万円なので、配偶者控除は150万円が壁になると考えられています。
なお、令和2年以降は、妻の合計所得金額の要件が一律10万円ずつ引き上げになりますが、給与所得控除は10万円引き下げになるため、基準になる年収は変わりません。
上の表からもわかるように、150万円の壁を超えても控除額がゼロになるわけではありません。夫は段階的に控除が受けられるので、いきなり税金が上がるようなこともないということです。
パート主婦の場合、年間の収入が一定金額を超えると、自分で社会保険に加入しなければならなくなります。
会社などに雇われて働くときに問題になるのが、社会保険(健康保険、厚生年金保険)です。
社会保険に加入すれば、保険料を払わなければなりません。保険料の半分は会社が負担してくれますが、残りの半分は自己負担となり、給与から天引きされます。
専業主婦のほか、パートでも比較的稼ぎが少ない妻は、会社員である夫の被扶養者となることができます。夫の被扶養者となれば、妻は自分で保険料を払わなくてもかまいません。
社会保険に入らなければならない年収については、106万円と130万円の2つの壁があります。
106万円が壁になるのは、次のような人です。
上記1~3のすべてに該当する場合、1か月の賃金が8万8,000円以上になれば、社会保険の加入義務が生じます。月8万8,000円は年間の収入にすると約106万円なので、106万円の壁と呼ばれます。
妻が夫の被扶養者になれる年収には上限があります。被扶養者として認定されるには、次の1、2の要件の両方をみたさなければなりません。
つまり、パートの主婦の場合、年間の収入が130万円を超えると、夫の被扶養者になれないことになります。
106万円の壁の要件をみたさない人でも、130万円を超えると自分の勤務先の社会保険に加入するか、国民健康保険・国民年金に入る必要があります。
「夫の扶養内で働く」というときには、年間の収入を130万円以内に抑えることを意味することが多くなっています。
社会保険料は、健康保険の種類や地域によって異なりますが、給料に対し13~14%程度を自己負担しなければなりません。たとえば、年収が140万円の場合でも、保険料の自己負担額は18~19万円くらいになります。
保険料が天引きされると手取りが大きく減るので、損していると感じることもあるでしょう。
手取りが減ると困る場合、勤務先の相談して給料の額を調整してもらうことを考える人もいるかもしれません。けれど、パートで働く場合、目先の損得にとらわれないようにしましょう。今働き損に感じても、今後は得することがあります。
簡易な計算ですが、パート主婦の年収別の手取り額は次のようになります。
年収 | 所得税 | 住民税 | 社会保険料 | 手取り |
---|---|---|---|---|
1,000,000 | 0 | 0 | 0 | 1,000,000 |
1,100,000 | 3,500 | 17,000 | 0 | 1,079,500 |
1,200,000 | 8,500 | 27,000 | 0 | 1,164,500 |
1,300,000 | 13,500 | 37,000 | 0 | 1,249,500 |
1,400,000 | 18,500 | 47,000 | 182,000 | 1,152,500 |
1,500,000 | 23,500 | 57,000 | 195,000 | 1,224,500 |
1,600,000 | 28,500 | 67,000 | 208,000 | 1,296,500 |
この表からわかるように、年収130万円を超えると手取り額が大きく減ります。年収140万円になると、年収130万円と比べて手取りは10万円近く減っているので、働き損のように感じるでしょう。
手取りを回復させるには、150万円以上は稼がないといけないことになります。
パート主婦の方は、社会保険に加入して手取りが減るとデメリットしか感じないかもしれません。しかし、社会保険に加入することには次のようなメリットがあります。
健康保険には傷病手当金の制度があります。傷病手当金とは、病気やケガで3日以上会社を休んだとき、給料の3分の2の手当金を最長1年6か月の間もらえる制度です。パートを休んでも収入が途絶える心配がないというのは、大きなメリットでしょう。
主婦も自分で厚生年金に加入すると、将来の年金受取額が増えます。厚生年金は生きている限り受け取れる終身年金なので、厚生年金に加入して年金額を増やしておけば、将来の不安を軽減することができます。
住宅購入資金、子供の教育費、老後の生活費など、ライフプランを実現するためにはお金が必要です。妻もしっかり働いて世帯収入を増やすことは、ライフプランの実現のため有効な手段になります。
長い人生の間には何が起こるかわかりません。想定外の離婚や死別という事態も起こり得ます。夫に依存するのではなく、女性も自らが働いて稼ぐ力を身につけておくことは、大きな安心感につながります。
年収の壁や扶養の範囲内にこだわらず、女性も積極的に収入を増やして自らの資産形成を目指すことが、これからの女性の賢い働き方と言えるでしょう。
パート主婦の場合、社会保険加入義務が生じると、手取りが減ってしまいます。保険料を負担するのは損のように感じるかもしれませんが、長い目で見れば得する結果になります。
働くことのメリットは、お金だけではありません。年収の壁を意識し過ぎることなく、生きがいになるような仕事を見つけましょう。好きなことをやって収入を増やせるのがいちばんです。
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