- 住民税と所得税の大きな違いは納付先と控除額の違い。
- 住宅ローン控除を利用すると所得税から節税される。
- サラリーマンと個人事業主では納税のタイミングが異なる。
公開日:2020年1月5日
今回は住民税と所得税の違いに関して解説していきます。税金という意味では同じですが、日頃言葉として使う事があまり無いので、区別がつきにくいかもしれません。
そこで今回、中身や制度、計算方法等どんな差があるのかを詳しく解説していきますので、最後までお付き合い頂ければと思います。
目次
本文を読み進めるに当たって、先に住民税と所得税の詳細について解説していきたいと思います。ここでは税の種類もそうですが、関係性や特徴などご理解いただければと思います。
先に結論から言いますと、住民税は地方税、所得税は国税に分類されます。似たような名前で、所得から計算される点では同じです。しかし税金としての使い道等は異なりますし納税先も異なりますので、詳細は後程詳しく解説する事にします。
次に住民税と所得税についてどんな内容なのか、詳細などを解説していきましょう。
先に住民税について解説していきます。
住民税はその年の1月1日時点で住民票が置いてある自治体に納税する税金です。分類は地方税に該当します。
前年の所得を元に課税される所得割、一律で課税される均等割の合算を都道府県と市区町村にそれぞれ納税する事になり、これら全てをひっくるめて住民税と呼びます。納税の期間は6月から翌年5月までの期間内で納める事になります。まとめたものが次の表です。
市町村民税 | 都道府県民税 | 合計 | |
---|---|---|---|
所得割 | 6% | 4% | 10% |
均等割 | 3,500円 | 1,500円 | 5,000円 |
住民税の所得割部分に対する税率の話ですが、全国で10%が標準課税となっています。県や市など各自治体で税率を変更する事も可能です。
以前に税率など詳しく書いた記事がありますので、ご興味のある方は過去記事をご覧ください。
住民税を納める方法として2つあり、1つは特別徴収と呼ばれ、主にサラリーマン等企業にお勤めされてある方が対象となります。
毎月のお給料から住民税の金額が天引きされる事になり、企業が代行して自治体に納税するものです。特別徴収では12カ月に渡って天引きされる様になります。
もう1つは普通徴収といって、個人事業主等確定申告を行う方が対象になります。住民税の計算が終わったら、毎年6月に納付書が送付され、4期(6月、8月、10月、1月)に渡って自分で納税する仕組みです。
また一括でも納税する事ができますので、この点は特別徴収と異なる点ではあります。
次に所得税について詳しく解説していきますね。
住民税同様に個人の所得に対して課税されるもので、分類は国税に該当します。いつの所得に対して計算されるかというと、その年の所得に対して計算されます。住民税は前年度の所得でしたね。この点も違いになりますね。
所得税の税率に関しては超過累進税率という7段階に分けた税率により区分されており、所得が高くなれば当然税金も上がっていく仕組みです。ここで用語解説を挟んでおきたいと思います。
超過累進税率とは、課税される対象が増えるほど高い税率をかける制度の事です。一般的な対象は所得税、相続税、贈与税などが挙げられます。
住民税は10%の標準課税でしたが、下図の様に所得に応じ控除額も異なり税率も変更する仕組みです。
出典:https://www.nta.go.jp/index.htm
納税の方法に関してですが、サラリーマンと個人事業主とで異なります。サラリーマンの場合は源泉徴収制度といい、給与を支払う企業が代行して納税する仕組みです。ここで用語を解説しておきます。
源泉徴収制度とは、サラリーマン等給与所得者の納税額の精算に関わる手間を簡略化するために、所得を発生させる源泉から一定の税率を差し引き所得税を納税させる為の制度です。この制度によって確定申告を不要する事が出来る為、企業内部は大変ではありますが、従業員は何も気にする事はありません。
毎月の給料から所得税も住民税同様に天引きされている事になります。この天引きは大まかな計算でなされており、最後の12月に1年間の総所得が計算される事になります。この12月の年末調整によって、しっかりと計算され差額の徴収、還付が行われるわけです。
対して個人事業主は翌年の2月16日~3月15日までの期間内に確定申告を行い、税金を納めなければなりません。
この場合申告期限である3月15日までに現金で納付するか、振替納税といって口座から引き落とす場合は4月20日前後(暦によって日付が異なります)の引落に間に合う様に準備しておかなければなりません。
ここまでは住民税と所得税について解説を行ってきました。一旦ここまでを纏めてみたいと思います。
名称 | 税区分 | 税率 | 申告期間 | 納付期間 |
---|---|---|---|---|
所得税 | 国税 | 5%〜45% | 2月16日〜3月15日 | ・現金納付は3月15日まで ・振替納付は4月20日まで |
住民税 | 地方税 | 一律約10% | 2月1日〜3月15日 | ・6月、8月、10月、1月の4期 ・場合によって12ヵ月 ・6月中に一括納付も可能 |
上の表のようになります。税率の違いや納付先も違いますね。次にその違いについて触れていきますね。
さて住民税と所得税について解説してきましたが、ここからは大まかな違いについて触れていきたいと思います。税金で身近なもので直ぐに思い出せるのは「消費税」でしょう。その他にはガソリン税や酒税、たばこ税等、生活の中に税は関連しています。
税は国民皆さんの生活サービスや医療、福祉、公共事業等様々な事に使われています。税金無くして生活は豊かになる事はありません。その税の中でも、意外にも身近な住民税と所得税について解説を進めます。どんな違いがあるのでしょう?
住民税と所得税では税金を納める先が異なります。住民税は地方税ですので、お住いの都道府県、市区町村に納税しなければなりません。対して所得税は国税です。納付先は税務署、つまり国に納税する事になります。この違いもあり、次の使い道の点でも違いが生まれます。
住民税と所得税は税金という意味では同義ですが、細かく言うと、住民税は地方税で、所得税は国税に該当します。
よく耳にするのは県が管理している、国が管理しているといった事を聞きますが、住民税は自治体管理の分野で利用され、所得税は国が管理している分野で使い分けられる事になります。
大きな金額になれば、国がいくら使って、県や市がいくら使うといった事をイメージして頂ければ分かりやすいでしょう。
前述しましたが、住民税と所得税はサラリーマンの場合は毎月のお給料からの天引きとなりますので、大きな違いはありません。しかし個人事業主となると納付期限が違います。
住民税は6月からの支払いに対し、所得税は申告期限である3月15日まで、若しくは4月20日前後の振替納税期日までとなっております。所得税の方を先に納税し、後に住民税の徴収が始まると憶えておいて下さい。
1年間の所得に対して課税される事は変わりはありませんが、所得税と住民税では対象期間が異なります。ここではサラリーマンの場合を対象に解説しておきます。
所得税は、所得が発生すれば早速課税される仕組みとなっていまして、裏を返せば所得が無ければ課税される事はありません。対象期間は収入が発生した月からと憶えておけば問題ありません。源泉徴収され、年末調整で整えられる事を憶えておきましょう。
対して住民税は、前年の所得に対して課税され、翌年の6月より天引きが開始される事になります。昨年まで収入が無ければ、翌年は課税される事はありません。
また年末調整等で還付が受けられるといった性質はありません。課税額が決まったら必ず天引きされる事になりますので、この点も憶えておいて下さい。
住民税と所得税は共に所得控除というものが存在します。これは課税額を導き出す過程において、所得に応じて控除されるもの、既婚者か独身者で使える控除枠が違うなど、いたるところで違いは出てきますが、計算過程の控除額の違いについて解説をしていきます。
所得控除の内訳は次の通りです。
上記4つの控除は控除額が住民税、所得税共に変わらないものです。次に挙げる控除は控除額が異なるものになります。
これまで挙げた14の所得控除を使い課税所得を計算します。
先程解説した、控除額の異なる10の控除の一覧がこちらになります。
控除 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
基礎控除 | 38万円 | 33万円 |
配偶者控除 | 38万円 | 33万円 |
配偶者特別控除 | 38万円 | 33万円 |
扶養控除 | 38万円 | 33万円 |
勤労学生控除 | 27万円 | 26万円 |
障害者控除 | 27万円 | 26万円 |
寡婦・寡夫控除 | 27万円 | 26万円 |
生命保険料控除 | 最大12万円 | 最大7万円 |
地震保険料控除 | 5万円 | 2万5000円 |
寄附金控除 | 控除対象の寄付金額は 総所得の40%まで |
控除対象の寄付金額は 総所得の30%まで |
見方として、左側が所得税についての控除額で、右側が住民税の控除額となっており、例えば基礎控除で見て見ると、所得税控除は38万円ですが、住民税となると33万円と控除額が低くなっている事が分かります。
この様に、皆さんの使える控除額は各ご家庭で異なりますので、上記の表を参考にして頂ければと思います。
先程の控除の違い等も含め、住民税、所得税の額を比較してみたいと思います。
次の事例で計算してみます。
上記条件で試算した結果、住民税が163,514円 所得税が81,757円となりました。このケースでは住民税の方が高い事が分かります。
では上記の事例で年収を800万円に上げた場合はどうなるか計算してみました。年収が800万円の場合は住民税が426,380円、所得税が425,260円の結果となりました。年収が約2倍になるとご覧の様に税金がかなり跳ね上がる事が分かります。
では年収が1,000万円の場合ではどうでしょうか?試算の結果住民税が584,844円、所得税が742,189円となり、所得税額の方が住民税よりも大きくなりました。先程解説しました、超過累進税率の効果が大きく反映されている事になりますね。
ここでは税額控除を利用したケースで試算してみます。税額控除について解説しておきます。
税額控除とは、所得税、住民税の課税額が算出された後に、その金額から更に控除を受けられる制度。所得控除とは異なり、計算の最終段階で控除される事になります。主な控除は住宅ローン控除があります。
では先程の家族構成は変えず、年収、住宅ローンがあるという事で次のケースで試算してみます。
上記の条件で試算の結果住民税は65,000円、所得税は非課税となりました。先程事例①でご紹介したケースと比較すると、住民税では98,514円節税されており、所得税に至っては81,757円が節税された事になります。
このケースで考えた場合、住宅ローン控除がかなり大きく作用している事がよく分かります。
では先程の事例②に住宅ローンを組み込んだ場合どうなるでしょう?年収が800万円になっています。住宅ローンの残高を3,000万円に変更してみます。
試算の結果、住民税は先程の試算と変わらず426,380円、所得税が125,260円になりローン残高の1%の節税効果が発生致しました。この様に、住宅ローン控除を使うと、先に所得税から節税され、使い切れなかった部分が住民税に及びます。
以前に住宅ローン控除に関する記事を書いていますので、気になる方はそちらの記事も合せてご覧いただければと思います。
ここまでの記事はサラリーマンの方を中心に書いてきました。では個人事業主の場合ではどうなるのかという点について触れておきます。
個人事業主の方は、確定申告で納税額を申告し、納税する事になります。確定申告は所得税の確定申告となっており、本来住民税を申告するものではありません。
しかし、控除額が違うだけで、計算過程は全く同じになります。よって確定申告を税務署へ提出した際に、所得などのデータが自治体に渡り、6月に住民税の納付書が送られてくる事になります。特別何かをしなければならないという事はありませんので、ご安心下さいね。
今回は住民税と所得税の違いについて解説してきました。計算方法は同じでも控除額の違いや使い道、分類等様々な違いがある事がお分かり頂けたかと思います。
また税額控除を利用する事も大きな節税効果がある事もありますので、今後住宅購入をご検討の方はしっかりと税金とシミュレーションを行って頂ければと思います。