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貯金3000万円で老後は安心?退職後の生活資金を貯める方法をFPが解説!

貯金3000万円で老後は安心?退職後の生活資金を貯める方法をFPが解説!

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大野 翠

大野 翠

芙蓉宅建FPオフィス代表、宅地建物取引士、2級FP技能士(きんざいFPセンター正会員)

芙蓉宅建FPオフィス代表。金融業界歴10年目(2020年現在)。お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを行っています。一般消費者の金融に関する苦手意識を払拭すべく、ライフワークとして「超・初心者向けマネー勉強会」を毎月テーマを変えて開催しています。

この記事のポイント

  • 退職後の生活費では食費が一番の出費である。
  • 住居費は持ち家か賃貸かで老後生活費に差が出る。
  • 個人年金保険で退職後から年金受給開始までの収入の途絶に備えよう。
  • 夫婦世帯の場合は加給年金や振替加算も受給できる。
  • ねんきんネットで年金受給見込み額を確認しよう。

内閣府の最新統計によると、2020年の平均寿命は男性80.93歳・女性87.65歳となっており、更に2050年には女性の平均寿命は90歳を超える見込みであるということです。

この長寿化を控え、私たちは一体いくら老後資金に備えたら良いのでしょうか。本記事では、20代から50代まで段階ごとに対策をアドバイスしていきます。

 

老後生活資金のポイント

老後生活資金のポイント

老後資金とは、具体的にどのようなお金なのでしょうか。老後生活に必要なお金の流れを確認しながら項目別に解説していきます。なお、本文中の数字は総務省「家計調査年報」及び公益財団法人生命保険文化センターを参考にしています。

 

社会保険料や税は全世帯必要な経費

「必要な老後資金」というと、生活費をイメージする方がほとんどです。しかし、社会保険料(介護保険料など)や市県民税、国民健康保険税、固定資産税などの各種税金も、リタイア後の生活で必要な出費です。もちろんこれらを支払う場合も、老齢年金や預貯金から支払わなければいけません。

ちなみに夫婦二人世帯の場合、月平均で約27,952円・年間では約34万円を社会保険料・税として支出する計算となっています。

老後の主な支出=「生活費全般」+「社会保険料・税」

 

リタイア後夫婦世帯の平均生活費

リタイア後夫婦世帯の平均生活費

生活費には主に以下のものが含まれます。以下、生活費の中で占める割合の高いものから順に解説し、各項目ごとにアドバイスしていきます。

  • 食費
  • 交通費、通信費
  • 教養娯楽費
  • 水道光熱費
  • 保険医療費
  • 住居費

 

平均必要額と全体に対する割合

夫婦二人世帯では約24万円、単身世帯だと約14万円が最低限必要な月々の生活費とされています。これには社会保険料及び税は含んでいませんので、更に2万円前後の準備が必要となります。

世帯別の毎月の生活費についてはこちらもご参照ください。

 

食費

夫婦二人世帯の食費として約6.8万円、単身世帯で約3.5万円かかります。いずれの世帯でも、月の老後生活費のうち3割程度を食費が占めており、その他の支出項目の中でトップとなっています。

食事は生活には無くてはならないものですし、特に高齢になると食生活は健康にも直結してきますので、老後生活で節約するとしても食費の節約は後回しが良いのではないでしょうか。

食費も含め、老後生活費全般についてはこちらも合わせてお読みください。

 

交通費・通信費

夫婦世帯で2.8万円、単身世帯で1.3万円が月の平均支出です。交通費には、公共交通機関の運賃や、マイカー移動の際のガソリン代、タクシー代などを含みます。通信費は固定電話料金、インターネット通信費、携帯電話料金が含まれます。

若年層では固定電話を開設しない方も増えてきましたが、シニア層ではまだ重要な通信手段として必要ですので大幅にカットできる項目ではありません。ただし近年スマートフォンの普及により、各社競い合ってオトクな料金プランを発表していますので節約を検討する価値は存分にあると言えます。

 

教養娯楽費

夫婦世帯では約2.4万円、単身世帯では約1.6万円です。近年シニア層における「学びなおしの機会」が話題となっています。放送大学に入学してご自身のペースで好きな科目について学んだり、音楽や絵画などの芸術分野の習い事もシニア層の生徒数が増えているそうです。

退職後は余暇にあてる時間も増えますから、これまで働いてきたご褒美として、時間もお金も安心してゆっくり使いたいですね。

教養娯楽費の節約として、公民館講座や市民講座など公の機関が主催しているものは、無料または格安で受講することもできます。テキスト代の数百円のみ実費で他の料金はかからないものも多くあります。
「初心者向け英会話レッスン」「はじめてのパソコン講座」などは、このような無料講座で多いようです。是非お住まいの地域でどのような内容が開催されているのかチェックしてみてください。

 

水道光熱費

夫婦世帯で2.1万円、単身世帯で1.2万円です。ただし水道光熱費に関しては、お住まいの地域によって料金の差がありますので、あくまで参考程度にされてください。

一人暮らしの方の水道光熱費についてこちらの記事をご参照ください。

 

保険医療費

夫婦世帯では月に約1.4万円、単身世帯では月に約9千円となっています。もちろん健康であれば医療費は抑えることが出来ますから、節約のためにも若い内から健康増進を図るようにしましょう。

また、75歳以上は後期高齢者制度の対象となり現行制度だと自己負担額が1割です。長生きした方の医療費が生活を圧迫しないように国の制度として工夫されています。

医療費と保険については以下の記事もご一読いただけるとより分かりやすいのでオススメです。

 

住居費

夫婦世帯は1.3万円、単身世帯は1.4万円となっており、単身世帯の方が住居費が高くなっています。しかしこれは、持ち家で既にローン完済している方や賃貸の方など全ての方の住居費の平均です。

ご自身のこれからの生活を考えたときに、既にマイホームをお持ちの方は、ローン完済が何歳なのか知っておくと老後資金の貯蓄額の目安がより明確になりますし、賃貸の方は老後にどのような住まいの形態にするのか検討し、住居費にかかる目安の金額を知っておくと良いでしょう。

賃貸の家賃の目安については以下の記事をご参照ください。

 

年代別・退職後の生活資金を貯めるコツ

年代別・退職後の生活資金を貯めるコツ

ここからは「退職後の生活資金を現役世代の内に蓄えること」に着目して、年代別にポイントを紹介していきます。各年代の主なライフイベントも配慮しながら、効率よく貯蓄していきましょう。

全年代にオススメなのは「個人年金保険」です。保険という名称の通り生命保険の一種ですので、加入に当たっては医的診査が必要です。メリットとしては、掛け金が個人年金保険控除として税制優遇されていることと、受け取り時期をご自身で設定できることです。
60歳以降の1年刻みで設定できる場合が多く、勤務先の定年時期と、実際の老齢年金受給開始時期に差がある場合などは特にオススメです。
例えば62歳で定年、老齢年金は65歳からもらう場合、個人年金受け取りを62歳からにしておけば、定年退職後の収入の途絶がなく安心です。

 

 

退職までの目標貯蓄額を定めよう

目標貯蓄額を決めるにあたって必要なものは、現在のご自身の年齢とお勤め先の定年年齢がわかれば、あとは貯めたい金額から逆算するのみです。当然、若ければ若いほど月々の貯蓄額は抑えることが出来ます。一日でも早く貯蓄をスタートさせましょう。

 

【65歳までに3000万円貯めると仮定した場合】

65歳までに3000万円貯めると目標を決めた場合、残りの年数・必要な年間貯蓄額・月間貯蓄額を一覧表にしました。

いずれも預金金利や他の預貯金、ボーナス時の上乗せ貯金などは一切加算しないものとし、小数点以下のあるものは四捨五入した額としています。大学卒業の22歳からスタートして、以降10歳刻みで計算しています。ご自身の年齢に合わせて概算の目安にされてみてはいかがでしょうか。

65歳までの残り年数 年間貯蓄額 月間貯蓄額
22歳 43年 697,674円 58,139円
30歳 35年 857,143円 71,429円
40歳 25年 1,200,000円 100,000円
50歳 15年 2,000,000円 166,667円

 

20代のポイント

老後資金対策として20代の内から取り組むべきことは「iDeCo」と「つみたてNISA」です。20代の内は職場での付き合いなどもあり、お金の流れが毎月変動し、なかなか支出を固定しづらい方がほとんどです。

そこで「先取貯金」としてiDeCoやつみたてNISA制度を利用し、毎月決まった額を決まった日に運用するようにしておけば、たとえ少額であっても定年時までコツコツ継続すれば大きな金額になります。

iDeCoとつみたてNISAに関して以下の記事も是非お読みください。

 

30代のポイント

30代の方は、人生においてのライフイベントが目白押しの時期でもあります。結婚、出産、住宅購入など、各イベントに伴う出費も大きなものとなります。毎月コツコツ何かしらかの貯蓄ができればベストですが、なかなかそうは行かない場合も出てくるでしょう。そのような時は「年2回ボーナス時の貯金上乗せ」をオススメします。

例えば夏のボーナスから10万円、冬のボーナスから10万円、毎月の貯金が1万円ずつだったとしても一年間の貯蓄額は32万円になります。年間32万円の貯蓄を30年続けた場合、960万円も貯まります。是非ボーナスと月々貯金を併用してみませんか。

 

40代のポイント

40代になると仕事上でも任されることが多くなってきますし、お子様のいるご家庭では親が40代〜50代の間に、教育費の出費のピークがやってきます。お子様が複数名いる場合は、毎年または数年おきに高校や大学の入学金などでまとまったお金が必要となります。

40代のポイントとしては、以下の2つを例として「貯金を分ける」ということです。目的と手段をハッキリして確実に老後資金を貯めていく工夫が必要となります。

  1. 流動資金として出金しやすい預貯金
  2. 老後資金として絶対に手を付けない預貯金

 

50代のポイント

50代に差し掛かるとリタイア後の生活も少し具体的にイメージし始める時期です。40代後半から50代は生活習慣病など病気の発症リスクが高い時期でもあります。若い頃に加入した生命保険を見直して無駄を省き、50代のリスクに備えた保障内容に変更しましょう。

またお子様のいらっしゃるご家庭では、そろそろ子どもたちの教育費がかからなくなる頃です。少し余裕資金があるようでしたら、NISAで投資信託を始めても良いでしょう。ただし、NISAとつみたてNISAは同時に行うことは出来ませんのでご注意ください。

初心者向けNISAについての記事はコチラをご参考になさってください。

 

【補足】結婚でパートナーを得る安心感

【補足】結婚でパートナーを得る安心感

上記のうち老後の生活費の平均支出で、住居費に関しては夫婦世帯も単身世帯もほぼ同額でした。一人暮らしでも家族世帯でも、住まいに関する出費は然程変わらないことがお解りいただけたと思います。

夫婦二人なら当然生活費も二人分ですが、入ってくる年金も二人分ですので安心して老後を迎えていただけます。特にご夫婦の場合、年金制度と付随して夫婦世帯のみに支払われる給付もありますので以下ご紹介します。

 

 

条件を満たせば加給年金も受給可能

夫婦の歳の差がある場合、夫の方が年上で退職後老齢年金を先にもらい始める場合、妻が65歳になるまでの間「加給年金」として、夫の老齢年金に加算されて支給されます。実は配偶者だけでなく、生計を維持されている子(18歳になるまで)も該当します。それぞれの年額は以下の通りです。

  • 配偶者… 224,300円
  • 子(第2子まで)… 224,300円
  • 子(第3子~) …74,800円

 

振替加算という制度もある

加給年金に似ている給付として振替加算があります。これは加給年金打ち切り後に、以下の要件に該当すれば振替加算として受給することができます。ただし以下の要件にもありますが、限られた年齢の方のみ振替加算は該当しますので、この制度自体は先々収束する方向となっていますのでご注意ください。

  • 老齢基礎年金の受給権を持っていること
  • 生年月日が1926年4月2日~1966年4月1日の内にあること
  • 厚生年金か共済年金に加入していた期間が20年以上あること

 

夫婦で貯める方法

加給年金のように夫婦二人世帯ならではの制度もあります。この制度を上手に活用しながら、早い時期から老後に向けた貯蓄をスタートさせましょう。

また「ねんきんネット」などで、あらかじめご夫婦それぞれの年金開始年齢や年金受給見込み額も算出して、貯蓄をする際の目安にしましょう。具体的な数字を決める方が貯蓄はうまくいきます。「ただなんとなく」ではなく目標額に向かってコツコツ貯蓄することがベストです。

ねんきんネットとは、日本年金機構が運営している年金に関するウェブサイトです。年金見込額の試算や、未納や統合漏れがないかなどの確認をいつでも行うことが出来ます。年金手帳に記載の基礎年金番号がわかれば登録することができます。是非ご活用ください。

 

貯金3000万円から考える、退職後の生活資金を貯める方法

いかがでしたか。退職後の生活費にスポットをあてて本文を書きましたが、全てにおいて「健康である」前提です。つまり、健康でなければ出費もかさみますし、余暇も楽しめず上記のようなバランスでの出費は適わないでしょう。

退職後の生活を考える上で、節約のためにもとにかく若い内から健康に留意し、医療費の無駄を徹底的に排除していきましょう。そうすることで健やかな退職後生活を過ごすことができ、生活資金も潤滑に回っていくのがベストです。並行して、一日でも早く貯蓄に取り組んでいきましょう。

 

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